胸腹部臓器の後遺障害について

1.胸腹部臓器とは

胸腹部臓器とは、いわゆる「内臓」を指します。内臓を臓器ごとに分類すると、肺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、大腸、小腸、胃、胆のう、膀胱、三焦となります。「胸腹部」のうち、「胸部」に肺と心臓が、「腹部」にそれ以外の臓器がおさめられています。

 

2.胸腹部臓器の後遺障害について

交通事故で胸腹部臓器に後遺症が残った場合の後遺障害の等級認定では、器官ごとに「呼吸器」、「循環器」、「腹部臓器」、「泌尿器」、「生殖器」の5つに分類して、認定基準が定められています。

認定に際しては、

・臓器の機能についての障害の有無及び程度

・介護の必要性の有無及び程度

・労務に関する支障の有無及び程度

といった観点から、下記の等級表に従って、等級が認定されます。

 

<胸腹部臓器の後遺障害>

第1級2号

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

第2級2号

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

第3級4号

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

第5級3号

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

第7級5号

胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

第7級13号

両側の睾丸を失ったもの

第9級11号

胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

第9級17号

生殖器に著しい障害を残すもの

第11級10号

胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

第13級11号

胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

 

3.器官ごとの後遺障害

(1)呼吸器系の後遺障害

呼吸器系の臓器の後遺障害については、

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果

②スパイロメトリー(呼吸器量の計測検査)の結果及び呼吸困難の程度

➂運動負荷試験の結果

によって後遺障害の有無や程度を判断するのが一般的です。呼吸器の後遺障害は、その程度によって1~11級の範囲で認定されます。

 

(2)循環期系の後遺障害

循環器系の後遺障害については、下記の症状がみられる場合は、7~11級の範囲で後遺障害として認定されます。

①心臓外傷等による心機能の低下

②除細動器またはペースメーカーの植え込み

➂心臓の房室弁又は大動脈弁の置換

④大動脈に解離を残す場合

 

(3)腹部臓器の後遺障害

腹部臓器の後遺障害には、食道・胃・小腸・大腸・肝臓・胆のう・膵臓・脾臓に障害がある場合及び腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠径ヘルニア・内ヘルニアが残る場合に、その程度によって5~13級の範囲で後遺障害として認定されます。

腹部臓器の障害は、症状固定後に悪化する可能性もあることから、将来の再発も念頭に置いた検査や示談内容が求められます。

 

(4)泌尿器の後遺障害

泌尿器の後遺障害には、腎臓・尿管・膀胱・尿道に障害がある場合に、その程度によって5~13級の範囲で後遺障害として認定されます。

 

(5)生殖器の後遺障害

生殖器の後遺障害は、男性と女性で基準が異なりますが、生殖機能にどの程度障害があるかどうかという観点から後遺障害の有無が判断され、7~13級の範囲で認定を受けます。

 

4 まとめ

胸腹部臓器の後遺障害は、臓器等の損傷の程度について正確な検査を受けることが大切ですが、他の後遺障害に比べると一般の病院では難しい場合が多く、臓器ごとの専門病院で検査を受けることが重要になってきます。

また、胸腹部臓器に後遺障害が残る場合は、単一の臓器だけでなく他の臓器も一緒に損傷している場合が多いことから、併合の方法による等級認定が必要な場合も少なくありません。

交通事故によって胸腹部臓器に障害を負った場合は、単なる外傷と異なり、治療だけでもかなりの負担になることから、後遺障害等級の認定や損害賠償に関する交渉は専門家である弁護士に任せて治療に専念されるのがよいと思います。