事故時34歳の女性会社員が、横断歩道を徒歩で横断中、右折進行してきた普通貨物自動車に接触され、右肩にかけていたバッグを引っかけられて転倒しそうになった。その結果、頚部・腰部挫傷及び頚椎椎間板ヘルニア(当事者間に争い)の傷害を負い、第5第6頚椎前方固定術を受けるに至ったとして損害賠償請求をした事案。

東京高等裁判所 H25.5.16判決(原審 静岡地裁富士支部 H24.11.29判決)【自動車保険ジャーナル No.1901号 掲載】 

ポイント

  1. 自賠責保険が後遺障害等級14級、地方裁判所も後遺障害等級14級とした事案で、高等裁判所は後遺障害等級11級に該当するとした。

  2. 症状固定前に復職し、減収がない期間があったが、この期間についても、特別の努力による加算をするのが相当であるとして「特別の努力分」の休業損害を認めた。

後遺障害等級

別表第二第14級10号
    ↓ 
4度の異議申立(1度目は12級主張、2度目以降は11級主張)
    ↓  
別表第二第14級10号のまま
    ↓ 
自賠責保険・共済紛争処理機構へ紛争処理申請
    ↓  
別表第二第14級10号のまま
    ↓ 
地裁判決 別表第二第14級10号と認定
    ↓ 
高裁判決 別表第二第11級7号に該当すると認定
   

内容

事故時34歳の女性会社員が、横断歩道を徒歩で横断中、右折進行してきた普通貨物自動車に接触され、右肩にかけていたバッグを引っかけられて転倒しそうになった。その結果、頚部・腰部挫傷及び頚椎椎間板ヘルニア(当事者間に争い)の傷害を負い、第5第6頚椎前方固定術を受けるに至ったとして損害賠償請求をした事案。

詳細

① 後遺障害等級
 ⅰ 事故から約1年5か月後に症状固定の診断を受け、自賠責保険で後遺障害等級14級10号の認定を受けた
  が、その後、事故からおよそ4年7か月後に第5第6頚椎前方固定術を受けたことから、事故と第5第6
  頚椎前方固定術との間に相当因果関係があるといえるのかが主要な争点
となった。
 ⅱ 自賠責保険及び自賠責保険・共済紛争処理機構は、

  1. 明確な画像所見がないこと、
  2. 1年4か月以上治療を受けていない期間があること、
  3. 事故から4年7か月以上後の手術であることなどを理由として、事故と第5第6頚椎前方固定術との相当因果関係を否定し、いずれも、被害者の後遺障害等級は14級10号を超えるものではないとした。

 ⅲ 一審判決は、自賠責保険や自賠責保険・共済紛争処理機構と同様、事故と第5第6頚椎前方固定術との相当
  因果関係を否定
した。
 ⅳ これに対して、東京高裁は、次のような根拠を述べて、事故と第5第6頚椎前方固定術との
  相当因果関係を肯定した。

  1. (画像上ヘルニアが認められないとする反論に対して)同一のMRI画像であっても医師によってはヘルニアと読影しない医師も存在しうるが、神経症状等を総合した担当医師の判断が不合理であるとはいえないから、異常が発見されているMRI検査及びそれに基づく担当医師らの判断に信用性がないとはいえない。
  2. (治療の中断期間について)その間に病状が軽快又は寛解したとは認められないし、その間に自賠責保険の後遺障害等級認定手続を行っていたのだから、費用面からも治療の中断は特段異とするに足らない。
  3. (事故から4年7か月以上後に手術を受けていることについて)治療中断後にたまたま紹介で本件手術を行う医師に出会ったのであり、事故から4年7か月以上後の手術であることも異とするに足らない。

② 「特別の努力分」の休業損害
東京高裁は、症状固定前の出勤し減収がない期間についても、特別の努力による加算をするのが相当であるとして「特別の努力分」の休業損害を認めた。

担当弁護士のコメント
 

  1. 明確な画像所見がないために、12級の神経症状を認定してもらえない被害者は少なくないと思います。本件でも、明確な画像所見がないことがネックになっていました。また、事故から頚椎前方固定術を受けるまでに4年7か月以上の期間が空いていることも事故との相当因果関係を否定する根拠とされました。
  2. 医学文献や医学論文を探し回り、医学書や専門家の論文による医学的知見と、カルテに残されている被害者の経過記録から、立証を重ねたのが奏功したと思っています。
  3. 一審段階で裁判上の鑑定もしましたが、その鑑定結果は、事故と前方固定術との相当因果関係を否定するものでした。けれども、鑑定医に対する書面尋問を実施し、鑑定医が示した根拠に対して被害者サイドからの疑問を投げかけたところ、むしろ、被害者サイドの主張立証に役立つような回答が得られました。鑑定結果がでても、そこで諦めないことの重要性を実感しました。
  4. 逸失利益ではなく、「特別の努力分」の休業損害を正面から認めた判決例は、公刊されているものとしては初めてではないかと思います。
  5. 4回の異議申立、紛争処理機構への紛争処理申請、地裁判決と合計6回、後遺障害に対する私達の主張は排斥されましたが、最後の最後に、逆転勝訴しました。否定され続けた被害者の悔しさは、並大抵のものではなかったと思いますが、あきらめずに闘い続けたことに敬意を表します。傷害によって奪われた時間は戻ってきませんし、後遺障害の苦しみも残りますが、被害者も私も笑顔で一つの区切りを付けることができました。