症状固定時49歳の地方公務員が右下肢大腿部切断(4級5号)など併合3級の後遺障害を負った事案。

福岡地方裁判所 H25.5.31判決
(自動車保険ジャーナルNo.1904号掲載)

ポイント

症状固定時49歳の地方公務員が右下肢大腿部切断(4級5号)など併合3級の後遺障害を負った事案。目立った減収がなかったが、後遺障害逸失利益について、事故前年の年収を基礎収入とた上で、労働能力喪失率79%で67歳まで認めた。

行為障害等級

右大腿部切断(4級5号)、右肘関節機能障害(10級10号)など

併合3級   

内容

事故時47歳の男性地方公務員が、トンネル内を大型自動二輪車で直進中、前車を追い越そうと対向車線から進入してきた普通乗用車に衝突され、右大腿骨開放骨折、右肘開放粉砕骨折、右第4・5指切断等の傷害を負い、右大腿部切断を余儀なくされた。

詳細

  1. 逸失利益事故前と症状固定後で目立った減収がなく、症状固定後8年間勤務を続け、定年まであと3年という事案で、後遺障害逸失利益が争われたが、事故前年の年収を基礎収入として、労働能力喪失率79%(5級相当の喪失率)で67歳まで認められた。60歳の定年後も基礎収入を減額しない理由として、判決は、被害者が1級建築士の資格をもっており、勤務年数や経験に照らせば、60歳の定年後においても、就労可能な67歳までは、同程度の収入を得られる蓋然性があるからとした。
  2. 付添介護。入院期間201日全日について日額7000円、退院後、症状固定までの398日について日額3300円、症状固定日以降、平均余命まで日額1000円の介護費をそれぞれ認めた。
  3. 将来の義足購入費の買い替え費用を認めた。3年毎に100万円
  4. 将来の車いす購入費用自宅では車いすで生活することを前提に1階用と2階用の2台の車いすの必要性を認め、耐用年数は10年で買い換え費用を認めた。
  5. 通勤用三輪バイク購入費用。通勤用三輪バイクの購入費用として1回当たり32万円、平均余命まで3年毎の買い換え費用を認めた。平均余命まで認めたのは、就労可能年年齢以降も日常生活で使用する蓋然性を考慮したとしている。
  6. 四輪車改造費用。通勤用三輪バイクの他に、雨天時の買い物や長距離の移動に備えて、義足での運転に適した四輪車の改造の必要性を認め、平均余命まで6年毎の左足アクセルペダル設置費用を認めた。
  7. 後遺障害慰謝料。後遺障害慰謝料として2388万円を認めた。(標準的な後遺障害慰謝料は3級が1990万円、2級が2370万円、1級が2800万円とされている。)

担当弁護士のコメント

  1. 提訴から判決まで3年を要した長い訴訟でした。
  2. 判決は事故から6年後の年収と事故前年の年収を比較して1割程度の減収にとどまるとしていますが、減収は、当該地方公務員全体の給与が引き下げられたことに起因するものなので、減収のない事案といえること、また、判決時点で、既に症状固定後8年間勤務し、定年まで残り3年であることから、将来的に減収にいたる可能性が高いとはみにくいことからすれば、逸失利益に関する部分は、評価できる内容であると思います。ただし、定年後の再就職の困難性を考えれば、定年後については労働能力喪失率100%で算定して欲しいところでした。
  3. 将来の義足購入費については、被害者が実際に使用している300万円以上する高機能義足の買い替え費用を請求したのですが、100万円の限度でしか認められず、残念でした。
  4. 被害者ご本人は、毎回、私と一緒に裁判期日に出席しただけでなく、詳細な大部の陳述を何通も作成するなど並々ならぬ労力を注がれました。後遺障害慰謝料が標準的な金額より相当増額されているのは、その努力と熱意の成果であろうと思います。