【死亡事故】自動車の単独事故で、後部座席に「シートベルトを着用せず」に同乗していた被害者が車外に投げ出されて死亡した事案

【死亡事故事案の概要】

被害者は、友人が運転するワンボックスカーに同乗していたのですが、友人の運転ミスによってワンボックスカーの制御が利かなくなりました。ワンボックスカーは、中央分離帯の縁石などに衝突した後、車体右側面を下にして横転滑走して停止しました。
この事故により、2列目座席に乗車していた被害者は、シートベルトを着用していなかったため車外に投げ出され、重症頭部外傷を負って死亡しました。

この事案の主な争点は、

・ 過失相殺

被害者がシートベルトを着用していなかった事実に基づいて過失相殺を行うべきか

・ 逸失利益の基礎収入

死亡時に高校生だった女性の基礎収入として、男女計・学歴計・全年齢平均の賃金センサスを採用すべきか

・ 死亡慰謝料

搭乗者傷害保険金が支払われる場合の死亡慰謝料の額をいくらに算定すべきか
などでした。

 

【裁判所の認定】

1 過失相殺の否定

保険会社は、被害者が死亡したのは、シートベルトを着用していなかったことが大きな原因であると主張して、20%の過失相殺を行うべきと主張しました。
これに対し、こちらは、
   運転者の安全運転を軽視する態度
   運転の経験や技量の不足
   制限速度超過での運転の継続
   不適切なハンドル操作
などの事実を明らかにし、故意と同視できるほどの重大かつ悪質であるから過失相殺を行うのは相当ではないと主張しました。
裁判所は、こちらの主張が相当であると認め、過失相殺を行わず、加害者に100%の責任を認めました。


2 逸失利益における基礎収入

死亡時に高校生だった女性の基礎収について、保険会社は、女子・学歴計・全年齢平均の賃金センサスである約353万円とすることが相当であると主張しました。
これに対し、こちらは、男女計・学歴計・全年齢平均の賃金センサスである約468万円を用いるべきと主張しました。
裁判所は、こちらの主張を相当と認め、認定を行ってくれました。


3 高額な死亡慰謝料の認定

保険会社は、加害者が契約していた自動車保険から搭乗者傷害保険金501万円が支払われる見込みであることを根拠に、死亡慰謝料の金額を大幅に減額すべきであると主張しました。
これに対し、こちらは、
本件事故態様の悪質性を十分に考慮すべきこと
事故後の被告の謝罪対応などが不十分であること
過去の裁判例
などを根拠として、搭乗者傷害保険金が支払われることを過大に評価すべきではないと主張しました。
裁判所は、死亡慰謝料として2200万円を認定しました。搭乗者傷害保険金501万円が支払われる見込みであったこと、近親者固有の慰謝料として両親に各200万円、姉妹に100万円が認められたことを考慮すれば、高水準の死亡慰謝料が認められたと評価できると思います。


【弁護士のコメント】

この事案では、事故直後の早い段階からご依頼を頂きました。このため、刑事裁判への対応から、損害賠償請求事件の解決まで、交通事故において生じる全ての段階における法的対応に当たらせていただきました。

1 刑事手続

検察庁と裁判所に対し、ご家族が厳罰を望んでられることを明確に伝えました。そして、運転者が起訴された後は、被害者参加制度を利用し、できるかぎり多くの記録(資料)を入手して検討を加え、公判廷で実施された被告人質問において、事故前後の状況、事故態様などについて質問し、事実を明らかにしました。

2 損害賠償請求手続

自賠責保険金の請求をしないで訴訟を提起することを選択しました。
訴訟では、特に過失相殺を否定させることを主眼に置いて、綿密な主張と立証を行いました。この結果、裁判所に過失相殺を否定する判断を示してもらうことができました。また、その他の争点においても、十分な水準の結果を得ることができました。

3 最後に

ご家族は、当初から、被害者に落ち度がなかったことを証明したい(=過失相殺を否定したい)という強い思いを持っておられました。ご依頼を頂いた当初から、その思いに応えられるように最善を尽くそうと考えて対応に当たりました。裁判所に過失相殺を否定してもらうことができ、ご家族にご納得を頂ける結果を得ることができたと考えています。