高次脳機能障害が5級と認定された被害者について、就職した事実があっても後遺障害等級が維持され、将来介護費も認定された事案

鹿児島地方裁判所 H23.10.6判決 【自動車保険ジャーナルNo.1863 掲載】

1 事案の概要

症状固定時29歳の男性が、普通自動二輪車を運転して交差点を直進しようとしたところ、同交差点で右折しようとした貨物自動車と衝突し、急性硬膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷、複視・眼球運動障害、下顎骨折、歯牙欠損などの傷害を負った事案です。
高次脳機能障害などの後遺障害について下記の通りの認定がなされ、別表第二併合第4級に該当すると認定されました。
【認定された後遺障害の種類と等級】
高次脳機能障害 別表第二第5級2号
複視 別表第二第10級2号
咀嚼障害 別表第二第12級相当
歯牙障害 別表第二第12級3号

2 裁判における争点

この裁判では、
高次脳機能障害の後遺障害等級
介護の必要性と将来介護費の額
過失割合
などが争点となりました。
特に、高次脳機能障害の後遺障害等級が重要な争点となりました。
保険会社は、被害者が就労していることを根拠として、被害者の後遺障害は自賠責保険の認定よりも軽いと主張しました。
これに対し、こちらは、自賠責保険が認定した後遺障害等級を維持するため、勤務や日常生活の状況を詳細に主張・立証する必要がありました。まず、被害者が勤務先していた会社の上司に協力を求め、被害者の勤務状況や勤務先の配慮の内容などについて詳細な陳述書を作成しました。また、近親者にも、日常生活の状況や介護の内容などについて詳細な陳述書を作成してもらいました。加えて、近親者の尋問も実施し、直接、裁判所に実態を訴えました。

3 裁判所の認定

本件について、裁判所は、以下のように判断しました。
① 後遺障害等級は、自賠責保険が認定した通りとしました。
② 介護の必要性を認め、将来介護費として、平均余命である50年間にわたり、日額2500円を認定しました。
③ 入通院慰謝料286万円、後遺障害慰謝料1700万円、合計1986万円を認定しました。
④ 被害者の過失割合は15%と認定しました。

4 担当弁護士のコメント

高次脳機能障害の後遺障害等級が争われた場合、脳に生じた損傷状況をふまえつつ、日常生活や勤務の状況について、詳細に主張・立証を行うことが必要になります。保険会社が医師の意見書を提出してくれば、主治医に協力を求めるなどして反論の意見書を提出すべき場合が多いと思います。また、日常生活や勤務の状況は、それぞれの場面で被害者の状況を最も把握している人物に説明を求める必要があります。
本件では、勤務先の上司、同居している近親者が作成した詳細な陳述書などを用いて、被害者の高次脳機能障害の実情や介護の実態を立証しました。また、近親者の尋問も実施し、裁判所に実態を訴えました。
  この様な努力が実った結果、後遺障害等級が維持され、将来介護費を認定してもらうことができたと考えています。