【死亡事故】徹夜で飲酒をした後、飲酒運転をしている最中に眠ってしまい、道路上で車両誘導をしていた被害者に衝突して死亡させた事案

【死亡事故事案の概要】

被害者は、工事現場の警備員をしており、工事現場から道路に進出するトラックを誘導するため、道路上に出ていました。

加害者は、事故前夜から徹夜で飲酒した後、仕事に行くため、自動車を運転していました。車を50㎞/hで進行させている最中、事故現場にさしかかる150m以上も手前で、眠ってしまい、自車を被害者に衝突させた後、歩道上の街灯に衝突して初めて事故の発生を認識しました。

この事故により、被害者は、事故から24日後、多発外傷を原因とする多臓器不全により死亡しました。


この事案の主な争点は、

・ 被害者が道路上にいたことを根拠に過失相殺を行うべきか

・ 死亡慰謝料の金額をどの程度に算定すべきか

などでした。


【裁判所の認定】

1 過失相殺

保険会社は、被害者が道路上にいたことが事故の一因であるとして、過失相殺を行うべきだと主張しました。

こちらは、
   加害者は飲酒後に車両を運転していたこと
   事故から約1時間半後に実施された飲酒検知では、呼気1ℓあたり0.35㎎と高濃度のアルコールが検出されたこと
   加害者は、50㎞/hで進行中、事故現場にさしかかる150m以上も手前で眠ってしまったこと
   被害者は、運転者から認識してもらうための十分な対処をしていたこと
などの事実を明らかにし、加害者の運転が悪質であったのに対し、被害者には落ち度がないから、過失相殺はすべきでないと主張しました。
裁判所は、こちらの主張が相当と認め、過失相殺を行わず、加害者に100%の責任を認めました。

 

2 死亡慰謝料の額

こちらは、
   事故態様の悪質性・重大性を十分に考慮すべきこと
   事故後の被告の謝罪対応や反省が不十分であること
   過去の裁判例
などを根拠として、死亡慰謝料の額を増額すべきことを主張しました。
裁判所は、死亡慰謝料として2300万円を認定しました。
本件では、被害者が高齢であったこと、近親者固有の慰謝料として妻に300万円、子2人に各200万円が認められました。これらの合計が3000万円となることを考えれば、高水準の死亡慰謝料が認められたと評価できると思います。


【弁護士のコメント】

1 依頼を受けた時期

この事案では、事故後の早い段階からご依頼を頂きました。このため、刑事裁判への対応から、損害賠償請求事件の解決まで、交通事故において生じる全ての法的対応に当たることができました。

2 刑事手続

加害者は、危険運転致死罪で起訴されたため、裁判員裁判によって審理されました。ご家族と対応を協議した結果、被害者参加制度を利用して、裁判に関与することになりました。
裁判員裁判では、短期間で集中的に審理が行われるため、進行の段取りと主張立証について、担当の検察官と緊密に情報交換をする必要がありました。また、限られた日数と時間で、事案の詳細を把握し、ご家族に概要を説明し、裁判での方針を決めるなど、迅速な対応も求められました。
裁判では、被告人質問において、被害者の立場から、
    飲酒した上で車を運転した経緯
    事故発生時の状況
    事故後の対応
    反省の状況と程度
について質問し、加害者は厳罰に処すべきことを明らかにしました。そして、ご家族に意見陳述をしてもらい、加害者に対して厳罰を求める意思であることを述べてもらいました。
この結果、加害者は、実刑判決を受けることになりました。

3 損害賠償請求(民事)

この事案では、自賠責保険金の請求をしないで訴訟(裁判)を提起することを選択しました。
訴訟の手続では、過失相殺を否定してもらうこと、本人の無念さやご家族の気持ちを考慮して慰謝料を算定してもらうことに主眼を置いて、綿密な主張と立証を行いました。この結果、裁判所に過失相殺を否定する判断を示してもらうことができました。また、死亡慰謝料の金額についても、十分な水準の結果を得ることができました。

4 まとめ

ご家族は、加害者に対して、厳罰を求めるという強い考えを持っておられました。刑事事件の段階からご依頼を頂けたため、当初からご家族の意思に沿った対応ができました。その結果、加害者に実刑判決を下してもらうことができました。
また、損害賠償請求においても、十分な主張・立証を行った結果、ご家族にご納得を頂ける結果を得ることができたと考えています。