後遺障害による逸失利益の算定について

交通事故で負った怪我が治りきらず、後遺症が残ってしまった場合、その後の生活に大きな影響が生じることは避けられません。特に問題なのは、後遺症が残ることで、日々の仕事や家事に悪影響が生じてしまい、後遺症がなければ得られたはずの収入を失ってしまうことです。この、後遺症がなければ得られたはずの収入(利益)を逸失利益(得べかりし利益)といいます。後遺症が、後遺障害として認定されれば、事故の加害者に対して、この逸失利益についても、損害賠償請求を行うことが可能になります。

ここでは、その逸失利益の算定方法について説明します。

 

1.後遺障害による逸失利益の算定式

 後遺障害による逸失利益は、被害者の年収(基礎収入)に、その後遺障害によって労働能力が失われた割合(労働能力喪失率)をかけた金額に、被害者が将来的に働くことが可能な年数(労働能力喪失期間)をかけて算出し、そこから中間利息を控除するという方法で行われます。

 具体的には、後遺障害による逸失利益は、下記の式によって算定されます。

 【基礎収入】 × 【労働喪失率】 × 【労働能力喪失期間】 - 【中間利息】

 実務上は、ライプニッツ係数を使って中間利息控除後の数値を計算するため、下記の式になります。計算結果は上記の式と同じです。

【基礎収入】 × 【労働喪失率】 × 【ライプニッツ係数】

 

2.基礎収入とは

 基礎収入は、原則として、事故前の被害者の現実の収入額を用います。

 しかし、現実の収入額を用いると、年齢が若い時期に事故に遭ってしまった場合、その時点の少ない収入を前提に、将来の逸失利益が計算されてしまって、不当に低い額の賠償しかなされないことになります。そこで、30歳未満の若年者の場合は、将来の収入の増加を考慮して、全年齢の労働者の平均賃金をベースに算定することも可能とされています。

 なお、事故当時に失業していた場合であっても、労働能力と労働意欲があって、就労の可能性がある場合には、失業前の収入や平均賃金をベースに基礎収入を算定できる場合があります。また、実際には収入がない専業主婦であっても、家事労働を金銭的に評価して、女性の平均賃金をベースに基礎収入が算定されます。

 

3.労働能力喪失率とは

 労働能力喪失率とは、後遺障害によって失われる労働能力の大きさをパーセントで表したものです。これは、後遺障害の等級によって一律に決まっており、例えば1級の場合は100%、7級の場合56%、14級の場合は5%などと定められています。

 

4.労働能力喪失期間とは

労働能力喪失期間とは、後遺障害が労働能力に影響する期間のことをいい、通常、症状固定時から67歳までの期間とされています。

なお、高齢者の場合は、67歳までの期間と平均余命までの年数の2分の1の長い方の期間を採用します。

また、ムチウチのような軽度の後遺障害の場合、67歳までの期間ではなく、症状固定時から5年間とか10年間などとして計算される場合もあります。

 

5.中間利息控除とは

逸失利益は、被害者が将来に受け取るはずの収入が失われたことを補填するための損害項目です。この場合に、将来の失われた収入の全額を受け取れるとすると、本来その収入を受け取るべき時点までの利息相当額について、被害者が2重の利益を得ることになってしまいます。中間利息控除とは、将来に発生する利息分を予め差し引いておき、被害者が2重の利得を得ることを回避するための計算です。

そして、この中間利息を控除するため、実務上は、ライプニッツ係数という係数が使用されています。

なお、現在、中間利息を控除する際の利率は、法定利率である年5%を基準として計算されています。しかし、民法改正においては、3%で中間利息控除がなされることになっています。中間利息控除の計算結果に変化が出てくるため、非常に重要な改正となっています。

 

6.逸失利益の算定で損をしないために

逸失利益の算定は、算定式に従って行われていますが、常に計算結果が同じとは限りません。

例えば、将来、平均賃金よりも高い収入を得られる蓋然性が高いことを裏付ける事情があるときは、基礎収入の算定において、平均賃金ではなく別の基準を採用するように主張する必要があります。自営業者のように収入が大きく変動する場合には、数年間の平均値を採用するように主張する必要があります。自営業者では、税負担を軽減するため、所得金額を少なく申告している場合も多いため、基礎収入の主張を工夫する必要があります。

また、労働能力喪失率は、後遺障害の等級で決まりますから、その等級認定が正しく行われていないと逸失利益の計算に大きな不利益を与えます。

逸失利益は、金額的に、後遺障害に関する損害の大部分を占めることが少なくありません。、計算式に従って算定されるからといって、相手方保険会社の言い分を丸呑みすると思わぬ不利益を被ることがあります。専門家である弁護士に相談して、相手方保険会社による算定が正しいのかどうか、被害者側に立ってきちんと検証してもらうことが大切です。

 

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