死亡事故における損害賠償請求権と近親者の慰謝料請求権

1 損害賠償請求権の発生と相続


交通事故で被害者が亡くなった場合、相続人は、被害者本人に発生した損害賠償請求権を相続によって取得します。相続人は、その損害賠償請求権を行使して、加害者に対して損害賠償を請求することになります。
法的には、交通事故による死亡は、傷害の極限状態であるとされ、たとえ即死であっても、死亡する直前に時間的な間隔があると捉えています。このため、死亡寸前の被害者本人が、加害者に対する損害賠償請求権を取得し、被害者本人が死亡することによって相続が発生し、相続人が損害賠償請求権を取得することになるのです。

 

2 近親者の固有の慰謝料請求権


被害者が死亡した場合、一定範囲の近親者は、加害者に対し、固有の慰謝料を請求できます。ご家族が死亡した場合、一定範囲内の近親者であれば、多大な精神的苦痛を被ることは当然だと考えられ、その精神的苦痛を慰謝するため、損害賠償請求が可能になるのです。
ここでいう一定範囲の親族とは、民法710条に挙げられている父母・配偶者・子のことを言います。裁判例には、兄弟姉妹であっても固有の慰謝料の請求が認められている例も存在しています。

 

3 相続人と近親者の範囲が一致しない場合があること


ここでのポイントは、
・ 被害者本人に生じた損害賠償請求権を相続する「相続人」
・ 固有の慰謝料を取得する「近親者」
の範囲が必ずしも一致しない場合があることです。
例えば、Aさんが交通事故で死亡し、Aさんにはご家族として配偶者・子供・両親がいた場合を考えてみたいと思います。
この場合の相続人は、配偶者と子供だけで、両親は相続人ではありません(民法887~890条)。ですので、Aさん本人に生じた損害賠償請求権を相続によって取得するのは、相続人である配偶者と子供だけです。
これに対し、近親者の固有の慰謝料は、一定範囲の近親者には認められることになります。Aさんのケースでは、配偶者・子供だけでなく、両親にも固有の慰謝料請求権がが認められるのです。

 

4 刑事手続に関われる近親者


損害賠償請求の場面とは異なりますが、刑事手続についても触れておきます。
死亡事故においては、加害者は、被疑者として捜査を受け、起訴されて裁判を受けることもあり得ます。
この場合、被害者の親族は、被害者参加制度(刑訴法316条の33~)を利用して手続に関与することができます。
手続に関与できるのは、死亡した被害者の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹とされています。ですから、刑事手続に関与する場面では、近親者の範囲がかなり広げられています。

 

5 多くの関係者からご依頼を頂くこと

 相続によって取得した損害賠償請求権を行使する場合は、できるだけ相続人全員からご依頼を頂くようにしています。
一つの事故によって生じた損害賠償請求権ですので、一括して対応できた方がスムーズに対応が進むためです。
また、相続人ではないけれど、近親者の慰謝料を請求できる方がいる場合には、その方からもご依頼を頂く場合があります。
刑事手続の段階で、被害者参加制度を利用する場合には、制度を利用したいと考えている方からご依頼を頂きます。
この様に死亡事故では、相続人・近親者が複数いれば、当事者が多くなることがあります。

 

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