飲酒運転における死亡事故の慰謝料

当事務所にお寄せいただいたご質問にお答えいたします。

 

ニュースで飲酒運転による死亡事故を耳にするたび、憤りを覚えます。もし飲酒運転の被害者が死亡してしまった場合、加害者が支払う慰謝料は通常よりも高額になるのですか?

 

飲酒運転は近年、法改正に伴い厳罰化されています。飲酒事故は平成12年の約26000件を境に平成26年には約4100件にまで減少しました。厳罰化と警察による取り締まりの強化が功を奏しているのでしょう。

しかし、飲酒運転による事故がなくなっていないのも事実です。

では、飲酒運転で被害者が死亡した場合、慰謝料は通常の事故より増額されるのでしょうか。過去の裁判例をもとに説明していきます。

 

ベースとなる慰謝料は変わらない

裁判所がこれまでの判例で認めてきた死亡事故における慰謝料の相場は以下の通りとなります。

 

    一家の支柱 2800万円

    一家の支柱に準ずる者 2500万円

    その他 20002500万円

 

「一家の支柱」とは、主に被害者の収入によって世帯の生計が維持されていることをいいます。「一家の支柱に準ずる者」とは、家事をする主婦や養育が必要な子を持つ母親、高齢な父母や兄弟を扶養または仕送りをしている独身者などがこれに該当します。

 

この基準は、飲酒運転による死亡事故に限らず、一般的な死亡事故における死亡慰謝料の額を示したものです。

しかし、飲酒運転においては、厳罰化や取締強化の傾向があること、にもかかわらず敢えて飲酒運転をしていること、遺族の被害感情が峻烈になることなど、その悪質性や被害感情を考慮し、裁判所においては通常の基準より高額な慰謝料を認める傾向にあります。

 

 

実際に慰謝料の増額を認めた判例

①忘年会の帰り、酩酊状態で高速道路を逆走し、衝突事故を起こして61歳会社役員男性を死亡させた事案では、死亡慰謝料3600万円が認められました。

死亡当時の年齢や役職から被害者は一家の支柱と考えられ、相場の2800万円より増額されていることがわかります。

 

②加害者が飲酒によって仮眠状態のまま乗用車を運転し、43歳女性が衝突され死亡した事案では、死亡慰謝料3200万円が認められました。

被害者は3人の子どもを持つ主婦でした。何の落ち度もないのに事故によって突然命を奪われ、子どもたちの成長を見守ることができなかった無念さと、呼気1リットルあたり約0.55mgという高濃度のアルコールが検出された悪質性を鑑み、通常の慰謝料相場2500万円より増額された慰謝料が認められたことになります。

 

 

飲酒運転で加害者が失うものは大きい

飲酒運転による事故が起きた場合、保険会社は、被害者に対する損害賠償については支払を行います。

これに対し、保険会社は、加害者自身に対する支払は行いません。飲酒運転は、加害者が敢えて法令に反して自動車を運転したために生じたものだからです。

例えば、事故で加害者が負傷した場合の入通院費はもちろんのこと、加害者が仕事を休んだ場合の休業補償や加害者死亡の際の保険金も支払われません。車両保険が下りないので自動車の買い替え費用や修理代もすべて自己負担です。

 

このように、厳罰化され、社会的な不利益が非常に大きいにもかかわらず、今も悪質な飲酒運転は後を絶たないのが現実です。もし飲酒運転の事故の被害にあった場合は、すぐに弁護士に相談して慰謝料を増額して請求できるかどうか確認してみましょう。