人身事故と物損事故の違い

当事務所にお寄せいただいたご質問にお答えいたします。

 

自動車事故で人には被害がなく、建物や車にだけ損害があった物損事故の場合、人身事故とは何か手続きが違うのでしょうか?

 

交通事故における物損事故とは、文字通り、物に対して損害が生じた事故のことをいいます。保険会社から受けられる補償の内容が人身事故と異なっており、示談交渉では注意が必要な場面もあります。ここでは、人身事故と物損事故の手続き上の違いについて、詳しくご紹介します。

 

 

そもそも物損事故とは?

物損事故は、人に死傷という損害が生じておらず、自動車や建物などの物にだけ損害が生じた事故のことです。

人身事故とは違い、物損事故には自賠責保険が適用されません。加害者が任意保険で対物賠償保険に加入していれば保険会社から補償を受けられます。物損事故の損害として被害車両のレッカー代、代車使用料、事故当時着用していた被服代などがありますが、実務上は車に関するものが大半を占めます。

 

なお、物損事故では物に対する慰謝料は認められないのが一般的です。「思い入れのある車だった」という理由で、車が損傷したことに対する慰謝料を請求するのは難しいと考えた方が良いでしょう。

 

 

人身事故との違い

人身に関する損害は、休業せざるを得なくなったことを原因とする収入の減少や、後遺障害の発生を伴うため、過失割合も被害者に配慮した割合で決める傾向にあります。

これに対し、保険会社によっては、人身事故と物損事故で異なる過失割合を提示するケースも見られます。例えば、同一の事故であるのに、人身に関する過失割合が80:20で、自動車の破損に対しては70:30など、物損事故には厳しい査定を出すこともあるのです。

 

もしこのような査定結果に納得できないのであれば、示談を断っても問題ありません。弁護士に相談して裁判の準備をすすめればいいのです。なお、裁判では人身事故と物損事故で異なる過失割合を出すことは原則としてありません。

 

 

物損事故で気をつけるポイント

物損事故では、被害車両の時価評価額が修理代を超えている場合には、修理代が補償されます。これに対し、被害車両の時価評価額が修理代よりも低い場合には、時価評価額のみが補償されます。車を修理に出す際には、修理の依頼先、修理費用の見積もり額などをあらかじめ保険会社に報告しておきましょう。

 

また、示談の際、保険会社が提示する賠償金額で示談を成立させた方がいいのでは、と考える被害者の方も少なくありません。損害額が人身事故よりも少額で、弁護士に示談を依頼しても、弁護士費用を保険会社から受け取った示談金では賄えない可能性があると判断してしまうからです。

 

しかし、近年、任意保険のオプションである弁護士費用特約を付けることが多くなっています。これを利用して、物損事故でも、弁護士に依頼して訴訟を起こす人が増えています。たとえ物損事故で人身事故ほどの損害がなかったとしても、保険会社の提示する金額に納得がいかなければ弁護士に相談してみましょう。