1.アルコールが分解されるプロセス ・アルコールは、肝臓で、アルコール脱水酵素(ADH)、ミクロゾームエタノール酸化酵素(MEOS)によって、アセトアルデヒドに分解される。 ADHとMEOSがアルコールを分解する比率は8:2。 ・アセトアルデヒド脱水酵素(ALDH)によって酢酸に分解される。 ALDHをつくる能力が高い人ほど、アセトアルデヒドをどんどん酢酸へと分解できるため、酒に強い。ALDHをつくる能力が低いと、分解するのに時間がかかってしまうため、いつまでも顔が赤かったり、気分が悪くなってしまう。 酒を飲める体質かどうかは、ALDHをつくる遺伝子を持っているか否かによって決まっている。「訓練すれば飲めるようになる」というのは間違い。 ・科学警察研究所交通安全研究室による実験の結果、酒に強い人は、酒に弱い人と比べて、酔いの程度を低く評価することが明らかになっている。 酒に強い人は、アセトアルデヒドを分解できるので、自分は酔っていないと認識するが、アルコールの血中濃度が一定の濃度に達したとき、人に現れる症状は、酒に強いか否かとは関係がなく、反応時間に影響が表れる。 2.分解能力 アセトアルデヒド脱水酵素(ALDH)には、アセトアルデヒトが低濃度の時に働く「ALDH2」と、高濃度にならないと働かない「ALDH2」がある。日本人の約半数は、生まれつき「ALDH2」の活性が弱いか欠けている。 ⑴DD型 ALDH2の活性が完全に失落した「不活性型」 「アルコールに全く弱い人」と言われている。 アルコールは飲めない。 パッチテスト 赤 ⑵ND型 NN型の1/16の活性しかない「低活性型」 「アルコールに弱い人」「ほどほどに飲める人」と言われている。 強くなろうと無理せず、適量を守りましょう パッチテスト ほんのりピンク ⑶NN型 安定で正常な活性を有する「活性型」 「アルコールに強い人」と言われている。 アルコール依存症にならないよう要注意 パッチテスト 変化なし 飲める≒危ない 3.アルコールの1単位(分解される時間) アルコールの1単位(分解される時間) 体内のアルコール濃度を下げることを促進する方法はない。自然に体外に排出されるのを待つしかない。 果物を摂る、コーヒーを飲む、サウナで汗を流すなどは、効果はない。 4.アルコールの作用 ⑴酔いの程度 ⅰ.爽快期 血中濃度 0.02%~0.04% 飲酒量の目安 ビール(大) ~1本 日本酒 ~1合 ウイスキー(シングル) ~2杯 様子 さわやかな気分になる。 皮膚が赤くなる。 陽気になる。 判断力が少しにぶる。 ⅱ.ほろ酔い期 血中濃度 0.05%~0.10% 飲酒量の目安 ビール(大) 1~2本 日本 1~2合 ウイスキー(シングル) 3杯 様子 ほろ酔い気分になる。 手の動きが活発になる。 抑制がとれる(理性が失われる)。 体温が上がる。 脈が速くなる。 科学警察研究所交通安全研究室による実験結果によれば、低濃度のアルコールであっても反応時間に影響が出ることが分かっている。自動車の運転に際しては、安全か危険かの判断を素早く適切に行うことが重要であるから、判断力が低下することは、大きな問題である。また、反応時間以外にも、視野の狭窄や視力の低下など、アルコールは、運転者の認知・判断過程に影響を及ぼす。認知・判断過程以外にも、居眠り運転の原因となる、速度超過などの危険な運転行動をしやすいことなどが指摘されており、これらのことは、実験データが示すよりも、アルコールが自動車の運転に及ぼす危険性は大きいことを示唆している。 ⅲ.酩酊初期 血中濃度 0.11%~0.15% 飲酒量の目安 ビール(大) 3本 日本酒 3合 ウイスキー(ダブル) 3杯 様子 気が大きくなる。 大声でがなり立てる。 怒りっぽくなる。 立てばふらつく。 ⅳ.酩酊期 血中濃度 0.16%~0.30% 飲酒量の目安 ビール(大) 4~6本 日本酒 4~6合 ウイスキー(シングル) 5杯 様子 千鳥足になる。 何度も同じことを喋る。 呼吸が速くなる。 吐き気・嘔吐が起こる。 ⅴ.泥酔期 血中濃度 0.31%~0.40% 飲酒量の目安 ビール(大) 7~10本 日本酒 7合~1升 ウイスキー(ボトル) 1本 様子 まともに立てない。 意識がはっきりしない。 言語がめちゃくちゃになる。 ⅵ.昏睡期 血中濃度 0.41%~0.50% 飲酒量の目安 ビール(大) 10本以上 日本酒 1升以上 ウイスキー(ボトル) 1本以上 様子 揺り動かしても起きない。 大小便は垂れ流し。 呼吸はゆっくりと深い。 死亡。 ⅶ.急性アルコール中毒 あまりにも急速にアルコールを摂取したため、アルコールを分解する能力を超えてしまった時に起こる。 血中アルコール濃度が0.4%を超えると症状が現れ始め、意識が朦朧とし、呼吸困難になる。 急性アルコール中毒に特別な治療方法はなく、点滴で血中のアルコールを薄めるだけ。後は、肝臓がアルコールを分解するのをひたすら待つしかない。 5.寝酒(参考) 寝酒の落とし穴① 本来の眠りのパターンをこわす ・アルコールによる眠りは、レム睡眠を減少させる ・ノンレム睡眠の中の「深い眠り」が減り、浅い眠りが増える 寝酒の落とし穴② 体に大きな負担がかかる ・肝臓はアルコールの分解のために、睡眠中ずっと働き続けている 寝酒の落とし穴③ アルコール依存症への直線コース ・量を増やしたり、強いお酒に切り替えたりする悪循環を繰り返し、アルコール依存症が進行する 6.アルコール依存症(参考)
依存症になりやすい飲み方 ・10代の頃から飲み始める ・毎日飲む(習慣的に飲む) ・眠るために飲む ・酔いを求めて飲む ・いやなことを忘れるために飲む(ストレス解消) ・1人で飲む ・長時間ずるずる飲む ・朝から飲む。昼から飲む ・急ピッチで飲む ・食べないで飲む ・二日酔いの時、迎え酒をする ・睡眠薬や鎮痛剤と一緒に飲む 7.悪酔いを防ぐ酒の肴(参考) ⑴タウリン(タコ) タウリンは、胆汁の分泌を促し、肝機能を高める。解毒や利尿作用もあるため、分解し終わったアルコール分を早く排出できる。 ⑵良質のタンパク質(豆腐・納豆・焼き鳥・刺身・卵焼き) ⑶ビタミンB1(豚肉・大豆) アルコールに含まれる当分を分解し、エネルギーに変える。糖分が分解されないと、血液中に乳酸などの疲労物質が蓄積されやすくなってしまう。 ⑷ビタミンB6(イワシなどの青魚・マグロ・レバー・バナナ) タンパク質や脂肪の代謝を促す。
8.二日酔いになったら フルーツをジュースにして飲む。 フルーツに含まれる果糖がアルコールの分解を手助けする。 中でも柿は、果糖が豊富な上に、利尿作用のあるカリウムを含み、ビタミンC・タンニンがアルコールの排泄に貢献する。 |