交通事故で労災保険は使用できますか?

1 はじめに

 業務中や通勤中に交通事故にあった場合には,自賠責保険からの給付や保険会社からの給付のみならず,労災保険からの給付を受けることができます。そこで,労災保険制度について確認するとともに,他の保険給付との関係も解説していきます。

 

2 労災保険の申請手続

 最寄りの労働基準監督署または厚生労働省のウェブサイトから申請用紙をダウンロードして入手し,必要書類をそろえた上,第三者行為災害届を添付して各提出先に提出します。

 申請書類は,①給付内容,②業務災害・通勤災害の別に応じて申請用紙が用意されているため,請求にあたっては,労災の給付内容や事故状況を確認しておきましょう。

 申請書類には,原則として事業主の証明印をもらう必要がありますが,事業主が労災請求に協力的でない等の理由により証明印を得られない場合には,証明印のないままでも労災保険の請求は受理されますので,諦めずに手続を進めてください。

 

3 給付される費目

 労災保険によって給付される項目には、①療養給付,②休業給付,③傷病給付,④障害給付,⑤介護給付,⑥遺族給付,⑦葬祭料・葬祭給付があります。このうち,被害者が被った損害項目に該当する保険給付がなされます。物的損害や慰謝料に関する給付はありません。注意すべきことは、休業給付が6割しかなされないこと,労災に限って休業4日目から支給開始となることです。

 

4 自賠責保険との関係

 自賠責保険と労災保険の優劣関係を定めた法律の規定はありませんが,厚生労働省の通達によって,自賠責を先行する運用が採られています。もっとも,この通達に拘束力はないため,被害者に有利になるのであれば、労災保険給付を先行させてもかまいません。

 自賠責保険は,休業補償や慰謝料の面で補償範囲が広い点で有利ですが,労災保険には過失相殺がなく,制度趣旨・認定主体の違いや医師面談が必ず実施されるため認定資料が豊富である等の事情から,一般的に自賠責保険よりも後遺障害等級が認定されやすい傾向にあると言われています。また,労災保険には,自賠責保険にはない年金給付も認められています。

 したがって,いずれの手続を先行させるかは事案によって異なりますので,弁護士と相談して,有利なものを選びましょう。

 

5 健康保険との関係

 労働災害事案では,健康保険等(健康保険,国民健康保険及び公務員共済)は使用できません。そのため,当初は健康保険等を使って通院していたところ,後になって労働災害事案であることが判明した場合には,健康保険等から労災保険への変更手続が必要となります。

 

6 示談と労災保険の保険給付

 被害者が加害者から賠償金を受領すると,最大で7年間,労災保険の保険給付が停止されてしまいます。損害賠償と労災保険給付の2重取りを防ぐため,給付を調整する必要があるからです。

 このため,被害者の過失割合が大きくて,損害賠償としての受領額が少ない場合には,支給停止の期間が短くなることがあります。また,支給停止期間が経過すれば,労災保険の給付は再開されます。