薬物で交通事故を起こした場合の責任

はじめに

薬物乱用による交通事故がたびたび報道されています。平成26年に東京・池袋で薬物を摂取した加害者が死亡事故を起こしたことが記憶に新しいでしょう。

では、薬物摂取によって死傷事故を起こした場合、加害者はどのような責任に問われるのでしょうか。

 

 

「危険運転致死傷罪」で逮捕、懲役刑を受ける

禁止薬物のほとんどは幻覚、幻聴、妄想といった作用を引き起こします。

薬物の乱用がきっかけで殺人や放火などの重大な犯罪が起こることもあるため、取締は年々強化されています。

交通事故も例外ではなく、薬物摂取後に意識が朦朧とし、運転に支障をきたした結果、事故を起こすこともあるのです。

 

平成26年に、刑法に規定されていた「危険運転致死傷罪」が削除された代わりに、

「自動車運転死傷行為処罰法」が成立しました。これによって規定された新たな「危険運転致死傷罪」は、罰則の強化などが図られています。

 

というのも、刑法上に規定されていた「危険運転致死傷罪」は、「自動車を正常に制御できない状態」での運転に適用さていました。

しかし、飲酒や薬物による運転でも、ある程度は正常な状態で運転ができていれば、

「自動車運転過失致死傷罪」が適用され、7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金という、比較的軽い量刑が科されていました。

 

ところが、飲酒や薬物などの悪質な運転であっても、自動車運転過失致死傷罪が適用され、加害者に科される刑罰が軽微になってしまうことが問題視されました。

また、危険運転の認定があいまいで、裁判官によって判断が分かれる可能性もあったため、新たに自動車運転死傷行為処罰法が成立しました。

 

自動車運転死傷行為処罰法の「危険運転致死傷罪」は、アルコールや薬物、一定の病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態であれば危険運転と認定されます。

飲酒運転や薬物乱用などの悪質な運転にも厳罰を科すことができるようになりました。

刑法の「危険運転致死傷罪」とは異なり「おそれがある」状態だけでもこの罰則が適用されます。

量刑は、人を負傷させた場合は12年以下の懲役、死亡させた場合は15年以下の懲役と、厳罰化されました。

 

 

薬物での交通事故は社会的制裁が大きい

薬物を摂取した後に運転し、大きな事故を起こすと、全国的にニュースになり、加害者の顔写真と名前が報道されます。

そして加害者の住所がインターネットで特定されたり、家族にも脅迫などの危険が及んだりと、社会的制裁を受けることがあります。

事故によって加害者自身が負傷したり、車両が損壊したりしても、医療保険や任意保険から保険金は支払われません。

加害者が受けた損害は、すべて加害者が負担することになります。

 

なぜなら薬物乱用による交通事故は、飲酒運転と同様に運転手の心がけ次第で防ぐことができるからです。

世の中の交通事故を完全に撲滅することは難しくても、薬物乱用後および飲酒後に運転さえしなければ、こうした悪質な事故は撲滅させることができます。

薬物摂取後により運転し、事故を起こしたときの代償は極めて大きいと言えます。