労働能力喪失率について

はじめに

交通事故で後遺障害が残った結果、それまでできていた仕事ができなくなり、配置転換されたり、

場合によっては退職を余儀なくされたりなど、仕事に影響が出てしまうケースは珍しくありません。

 

交通事故の被害者が後遺障害の認定を受けられれば、「労働能力喪失率」をもとに、慰謝料の金額が算出されます。

その労働能力喪失率はどのようにして決まるのでしょうか?

 

労働能力喪失率とは

労働能力喪失率は、後遺障害によって失われた労働能力を5~100%の範囲で数値化したものです。

1~14級に分けられている後遺障害等級のいずれに認定された後に、それぞれの等級に割り振られている労働能力喪失率を算出します。

例えば、14級では5%、12級では14%と、一応の目安がありますが、実務では被害者の後遺障害の程度だけでなく、性別、年齢、職業などその他の事情を考慮して算定します。

 

 

労働能力喪失率は変動することがある

自賠責保険では、業務を迅速に進めるため、明確化された基準を設けていますが、裁判所ではこうした基準を参考にする程度で、必ずしも記載通りの喪失率が認定されるわけではありません。被害者の個別の事情を考慮して労働能力喪失率を変動させることがあります。

 

例えば、指を喪失したピアニスト、外貌醜状を残したモデルなど、

後遺障害によって仕事を失うほどの影響が生じているケースでは、通常の労働能力喪失率より高い喪失率が認められる可能性があります。

実際に、後遺障害14級の認定を受けた職人が、頭痛、頸部痛などの自覚症状により、

それまでの仕事に支障が出てしまった事案で、通常5%の労働能力喪失率が10%の認定を受けた判例もあります。

 

 

後遺障害があるにもかかわらず労働能力喪失率がゼロの場合

後遺障害等級とそれぞれの労働能力喪失率は、実務や裁判においても重要視され、

これに該当しなければ裁判でも後遺障害等級が認められないことがあります。

 

例えば、片眼に3分の1盲症に満たない程度の後遺障害が残った場合、13級2号の半盲症に該当しないため、

後遺障害等級の認定を受けられない可能性があります。もしも被害者がトラック運転手など、運転に従事する仕事をしているなら、

この状態で運転することは危険を伴ううえに、これで労働能力喪失率がゼロになるのは不合理と言わざるを得ません。

 

実際の裁判では、後遺障害等級表に該当しない程度の障害でも、入通院期間及び後遺障害の程度、

被害者の年齢など、個別の事情を総合的に見て、加害者に対し慰謝料の支払いを命じた判例があります。

 

 

後遺障害が認められても減収がない場合

労働能力の低下によって、減収が発生するケースもありますが、反対に減収がないケースも考えられます。

 

例えば、両下肢機能全廃の場合、後遺障害等級1級で労働能力喪失率は100%ですが、被害者がデスクワーカーで、

車いすを利用するなどしてそれまで通りに職務を遂行できている場合、減収が生じていないというケースも見られます。

 

では減収がなかった人は労働能力喪失率が算出されないのかというと、必ずしもそうとは限りません。

この点について裁判所は「特段の事情があれば財産上の損害を認めるべき」という見解を示しています。

 

ここでいう「特段の事情」①本人の努力によって収入を維持できている場合と、②勤務先が被害者に配慮している場合があります。

事故によって、被害者や職場が何らかの努力や配慮が必要になった場合に、慰謝料を請求できる可能性があります。

 

 

このように、労働能力喪失率については、後遺障害の症状や被害者の職業、職場環境によって左右されることがあり、

後遺障害等級表に掲載されている喪失率に決められるとは一概には言えないのが難しいところです。

後遺障害の認定を受けるときや、自身の労働能力喪失率に疑問が残る場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。