遷延性意識障害からの回復
遷延性意識障害からの回復
被害者が遷延性意識障害になってしまった場合、家族は、被害者が回復して欲しいと考え、多種多様な努力をすることになると思います。
意識障害を改善するための主な方策として、下記の対応を取ることが多いです。
五感の刺激を中心としたナーシング
⑴ 理念
患者を独立した一個の人格として認め、いかにその人らしく生きてもらうかを考え、その援助をすることを重視するナーシングのことを指します。
この様なナーシングを行うためには、受傷前の性格、生活、嗜好などを十分に考慮して患者に対応することが必要です。また、患者の僅かな変化や患者が送ってよこす僅かなサインを見逃さないようにすることが必要とされています。
⑵ 基本方針
⒜ 睡眠覚醒のリズムの確立
⒝ 朝~夜までの1日の変化を感じさせる
⒞ 四季の変化を感じさせる
⒟ 経口摂取を試みる
⒠ 自排尿・排便を促す
⒡ 患者の反応・変化を見逃さない
⑶ 家族による働きかけの重要性
⒜ 脳神経系の再生ないし再建のためには、バイタルが安定し次第、できるだけ早期にリハビリを開始することが重要とされています。
⒝ 患者家族が、希望を失うことなく、昼夜を問わず、五感や足裏のツボなどを刺激するなどの働きかけを行うことが、患者の改善にとても重要とされています。
電気刺激治療
⑴ 意義
遷延性意識障害の回復に効果が認められる唯一の治療法とされています。
ただし、全ての遷延性意識障害患者に効果があるわけではないようです。
⑵ 電気刺激治療の効果
この治療の効果に関しては、以下の様な報告がなされています。
⒜ 若年者に有効例が多い。
⒝ 有効例は、圧倒的に頭部外傷が多い。
⒞ できるだけ早く電気刺激治療を行った症例に有効例が多い。
⒟ 有効例のCT所見の特徴は、脳全体の萎縮が著明ではないこと、障害が視床を巻き込んでいないこと、障害領域が広範囲でないことが挙げられる。
⒠ 有効例は、電気刺激治療を行う前の局所脳血流が20ml/100g/min以上であることが多い。
⑷ 効果が現れる機序
⒜ 脊髄後索電気刺激は、局所脳血流を増加させる。
⒝ 脳のカテコールアミン代謝を活性化させる。
⒞ アセチルコリン系の代謝も促進される。
⒟ 脳波のα波の増加、θ波の減少効果がある。
以上のような事実が重なって、いまだ機能的に可逆性を持っている遷延性意識障害患者の一部に効果が現れると考えられているようです。
⑸ 問題点
⒜ 高額な治療費(自由診療)
電気刺激治療は保険適用の対象外です。このため、電気刺激治療を行うための全ての治療費が自由診療となります。
治療費が高額となるため、その費用をどうやって用立てるかが問題となります。
⒝ 家族の過剰な期待
家族が、「電気刺激治療をすれば改善が得られるはず」という過剰な期待を持っている場合があります。
遷延性意識障害について一覧はこちら