75歳の母が交通事故で死亡

 

当事務所に寄せられたご質問にお答えいたします。

 

当方40代男性です。先日、75歳の母が信号無視したトラックにはねられ、病院に搬送された後に死亡しました。相手の保険会社との示談交渉を行いましたが、提示された示談金額は予想よりも少なかったです。理由を聞いたら「75歳で年金暮らしなので」と説明を受けました。高齢者で年金暮らしだと損害賠償金がほかの人より低くなるものなのでしょうか?

 

お母様を事故で亡くされたとのこと、お悔やみ申し上げます。

高齢者の方がほかの年代よりも損害賠償額が低くなる傾向がありますが、これには明確な理由があります。

 

 

死亡慰謝料の相場と高齢者の相場

交通事故で被害者が死亡したときの慰謝料の金額は定額化されており、社会的地位や家庭環境、収入など、さまざまな事情を考慮して具体的な金額を決定します。弁護士や裁判所が損害賠償額を決める際に参考にする「交通事故損害額算定基準」によると、

 

①一家の支柱 2800万円

②一家の支柱に準ずる者 2500万円

③その他(子ども、学生など)2000~2500万円

とされています。

 

今回ご質問をいただいたような高齢者の場合、家事労働をしているかどうか分かりませんが、少なくとも「一家の支柱」には当たらないので、②か③の慰謝料が適用されることになります。そして、高齢者の方は2000万円に近い金額が相場となっています。

 

 

年金も逸失利益に含まれる?

会社員が交通事故で死亡した場合、過去の収入額をもとにして、死亡せずに働き続けた場合に得られたであろう収入の総額を算出するなどして「逸失利益」を割り出します。しかし、すでに退職して年金で暮らしている高齢者の場合はどうなるでしょうか。

 

高齢者の場合、受け取っていた年金が逸失利益の計算に含まれるかどうかは事案によって異なります。被害者が受け取っていた年金が

 

①受給者本人の生計の維持のために使われていたか 

②当該年金が確実かつ、継続的に給付されるものか

③年金と受給権者の保険料拠出との間に牽連関係があるかどうか

 

などを考慮して判断されます。老齢基礎年金、老齢厚生年金、公務員の退職年金など、原則として受給権者本人による拠出性のある年金については逸失利益として計算されると認めています。

 

なお、遺族年金や福祉年金などは社会保障的性格が強く、受給者自身が資金を拠出していないことから逸失利益として認められていません。

 

 

生活費控除率がほかの世代と異なる

逸失利益を算出するとき、被害者が生存していれば支出していたはずの生活費の部分(生活費控除率)について、逸失利益から控除しなければなりません。

 

一家の支柱が30~40%、女性が30~45%程度が一般的な基準です。

ただし、高齢者が受給している年金については、その大部分が生活費として使われることが多いことから、生活費控除率が40~60%程度とやや高く設定されています。

控除率が高いほど受け取れる損害賠償額が少なくなるため、高齢者の逸失利益の額が少なくなることが多いのです。

 

 

年金生活者の逸出利益の算出方法

年金生活者の逸失利益は、

年金収入(年収)×(1-生活費控除率)×平均余命年数

で計算します。

年齢が上がっていくにつれ、平均余命年数が少なくなり、その分逸失利益も少なくなります。

 

 

まとめ

現役世代よりも高齢者の損害賠償額が低くなるのは、このような計算方法を用いるためです。

しかし、保険会社から提示された損害賠償額が妥当かどうかは、簡単に判断できることではありません。ひとりで判断せず弁護士に相談しましょう。弁護士なら保険会社よりも高い水準をもとに増額できるかどうか交渉を進めることができます。まずはお気軽にご相談ください。