解決事例

高次脳機能障害 Cases20

2023.12.04

後遺障害等級:3級
解決:令和5年3月24日和解
裁判所:大阪地方裁判所

【事案の概要】
被害者は、青信号に従って、徒歩で横断歩道上を横断していました。
加害者は、自動車を運転し、青信号に従って右折しようとしましたが、進行方向の安全確認を怠った結果、自動車を被害者に衝突させてしまいました。
この衝突によって、被害者は、急性硬膜下血腫・外傷性くも膜下出血・脳挫傷などの怪我を負った結果、注意障害・記憶障害・遂行機能障害・失語症などの高次脳機能障害が残ってしまいました。

後遺障害等級 1 相談までの経過
被害者は、当初、他の法律事務所に依頼していました。しかし、高次脳機能障害についての理解が十分でなく、症状固定の診断に対する対応なども十分でないと感じていました。
このため、被害者とご家族は、高次脳機能障害に関する事案の取扱経験・実績が豊富である「だいち法律事務所」にご相談がありました。
2 だいち法律事務所の対応
被害者が診療を受けていた医療機関は、高次脳機能障害に関する対応が不十分でした。
そこで、だいち法律事務所は、被害者に対し、高次脳機能障害の診療に詳しい医療機関を紹介した上、神経心理学的検査を受け、後遺障害に関する診断をしてもらうことをアドバイスしました。
また、診療に立ち会うなどして、主治医に対して今後の手続の流れなどを説明し、協力を求めました。
3 自賠責保険の認定
主治医に後遺障害診断書・神経系統の障害に関する医学的意見を作成してもらった上、自賠責保険の請求手続を行いました。
その結果、高次脳機能障害について3級の認定を得ることができました。
裁判の争点 本件で争点となったのは、主に、
・ 後遺障害等級
・ 労働能力喪失率
・ 将来介護費の要否・金額
でした。
裁判所の認定 1 後遺障害等級
⑴ 後遺障害等級の重要性
保険会社(被告)は、高次脳機能障害について認定されていた後遺障害等級を争ってきました。
この事案において、自賠責保険は、高次脳機能障害の後遺障害等級を3級と認定していました。
後遺障害等級は、労働能力喪失率(逸失利益の金額に影響)、将来介護費、後遺障害慰謝料などに影響します。このため、後遺障害等級が下がってしまうと、受け取れる賠償金の額に大きく影響することになります。
このため、後遺障害等級は、とても重要な争点でした。
⑵ 被告の主張・立証
保険会社(被告)は、裁判所を通じて、被害者が治療を受けた各病院の診療記録(カルテ)を取り寄せました。そして、これらの診療記録から、被害者の高次脳機能障害がそれほど重度ではないことを裏付けられる記載を抜粋するとともに、顧問医の意見書も提出して、被害者の高次脳機能障害について主張してきました。
保険会社(被告)の主張は、当初、「7級に該当する」というものでした。但し、だいち法律事務所が反論したところ、「5級に該当する」という主張に変更してきました。
⑶ だいち法律事務所の対応
診療記録を検討したところ、保険会社(被告)は、診療記録から自らに有利な記載だけを抜粋し、主張の根拠にしていることが分かりました。
しかし、診療記録には、被害者の高次脳機能障害が重篤であることを裏付ける記載も多くありました。そのような記載を引用した上で、被害者の高次脳機能障害の症状を明らかにした上で、後遺障害等級の認定基準に基づいて主張を構成しました。
保険会社(被告)が顧問医の意見書を提出していたので、効果的に反論するため、こちらも医師の意見書を入手すべきか検討しました。ですが、最終的に、医師の意見書がなくても十分に反論できるとの結論に達したため、医師の意見書は入手しませんでした。
⑷ 結果
裁判所は、双方の主張と立証を考慮して、後遺障害等級は、自賠責保険が認定した通り、3級が妥当だと判断してくれました。
2 将来介護費
被告は、被害者に対して将来介護費を認めるべきではないと主張していました。
これに対して、だいち法律事務所では、
・ 高次脳機能障害が重度である
・ 日常生活において見守り・声かけが必要な状態である
・ 保険会社(被告)の主張によっても、日常生活での援助が全く必要ではないことにはならない
ことを根拠として、将来介護費を認めるべきことを主張しました。
この結果、将来介護費として日額2000円を認めてもらうことができました。
3 労働能力喪失率
事故後、被害者は、一旦は就労を再開しました。しかし、高次脳機能障害のため、就労を継続することができず、短期間で退職するに至りました。
わずかな期間でも復職した点をどのように評価すべきかが争いになりました。
保険会社(被告)は、わずかな期間でも復職できたことを重視し、労働能力喪失率を100%とすべきではないと主張してきました。
これに対し、だいち法律事務所は、
・ 復職したといっても、事故前と同程度のスケジュールでは働けなかった
・ 退職後は全く就労できていない
・ 事故後の症状をみても、就労に支障があることは明らか
などと主張しました。
この結果、裁判所は、将来的に就労することを見込むことはできないと評価し、労働能力喪失率を100%と認定してくれました。
弁護士のコメント 1 後遺障害等級
⑴ 自賠責保険の認定
だいち法律事務所は、適切な後遺障害等級の認定を受けるため、自賠責保険の請求手続を行う前から、アドバイスしました。
後々、後遺障害等級が争われることになっても、自賠責保険に適切な後遺障害等級を認定してもらっておくことが重要です。
本件では、高次脳機能障害が3級に該当するとの認定を受けることができました。このことが大きい意味を持ったと思います。
⑵ 裁判の結果
裁判において、保険会社(被告)は、高次脳機能障害の後遺障害等級を争ってきました。
保険会社(被告)は、当初は「7級」と主張していましたが、後に「5級」という主張に変更しており、適切な反論ができているという印象はありました。
諸般の事情から、和解によって解決しましたが、高次脳機能障害の後遺障害等級は、自賠責保険で認定されていた3級を維持することができました。また、重い後遺障害等級を維持できたため、将来介護費も日額2000円という額を認めてもらうことができました。
2 逸失利益
事故後、被害者は、一旦は就労を再開しました。高次脳機能障害のため、就労を継続することができず、退職するに至っていましたが、このことが労働能力喪失率の認定にどのように影響するのかが問題でした。
ですが、被害者は、退職した後、全く就労できていませんでした。このため、被害者やその家族は、労働能力があると認定されることに強い違和感を感じていました。
適切に反論した結果、裁判所は、将来的に就労できる見込みはないと評価し、労働能力喪失率を100%と認定してくれたので、よかったと思います。
3 まとめ
交通事故において損害賠償請求の問題を有利に解決するためには、適切な後遺障害等級を認定してもらっておくことが重要です。だいち法律事務所では、この点は妥協することなく、徹底して対応しています。
また、訴訟を選択すれば、解決までに時間がかかりますし、手間も増えます。しかし、被害者やご家族が、将来的に経済的な不安を感じずに生活できる状況をつくるためには、安易に妥協して示談で終わらせず、裁判によって解決を図ることを選択する必要もあると思います。
結果として、本件では、十分な成果が得られ、被害者やご家族にご満足頂くことができました。担当した弁護士として、とても嬉しかったです。
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