だいち法律事務所

  介護費①(金額)

 

第1.はじめに

ここ1、2年、日額2万5000円を超えるような介護費用を認めた判決を目にすることが少なくなったように感じている。また、現状、近親者介護であるが職業介護人介護を前提に介護費用を積算した判決も余り目にしていないように感じる。
新たな立証方法の創造の必要性を感じている昨今である。

第2.4つの介護料の相互関係 

「赤い本」  入院中の近親者付添費   日額6500円  
       通院付添費        日額3300円
       近親者による将来介護費  日額8000円
       症状固定までの自宅付添費 判決例を挙げるのみ。低廉なものが多い。

「青本」   入院中の近親者付添費   日額5500~7000円
       通院付添費        日額3000~4000円
       近親者による将来介護費  日額8000~9000円
       症状固定までの自宅付添費 重度障害事案では、将来介護費用額以上の日額が認められるとする。

「緑の本」  入院中の近親者付添費   日額6000円
       通院付添費        日額3000円
       近親者による将来介護費  日額8000円(常時介護の場合)                   
         症状固定までの自宅付添費 近親者による入院・通院付添費を参考にして定めるとする。

将来介護費に比べて症状固定までの自宅付添費を低額に認定する判決が多くないか。
赤い本、青本とも、平成13年版までは症状固定前の近親者付添費と近親者による将来介護費を同額としていたが、平成14年版から近親者による将来介護費の日額の方を大きくするようになった。

第2.4つの介護料の相互関係 

「赤い本」
・入院中の近親者付添費
日額6500円  
・通院付添費        
日額3300円
・近親者による将来介護費  
日額8000円
・症状固定までの自宅付添費 
判決例を挙げるのみ。低廉なものが多い。

「青本」   
・入院中の近親者付添費
日額5500~7000円
・通院付添費        
日額3000~4000円
・近親者による将来介護費  
日額8000~9000円
・症状固定までの自宅付添費 
重度障害事案では、将来介護費用額以上の日額
が認められるとする。

「緑の本」
・入院中の近親者付添費
日額6000円
・通院付添費        
日額3000円
・近親者による将来介護費  
日額8000円(常時介護の場合)                       
・症状固定までの自宅付添費
近親者による入院・通院付添費を参考にして定めるとする。

将来介護費に比べて症状固定までの自宅付添費を低額に認定する判決が多くないか。
赤い本、青本とも、平成13年版までは症状固定前の近親者付添費と近親者による将来介護費を同額としていたが、平成14年版から近親者による将来介護費の日額の方を大きくするようになった。

第3.近親者による将来介護費の日額

1.「赤い本」などで8000円とされる根拠
介護労働が家事労働と一定の類似性があり、かつ、家事労働と両立できるから賃金センサスの全女子全年齢平均賃金を下回る控えめな金額として採用されているという(文献1p128)
2.近親者介護を前提に日額1万円を超える将来介護費を認めた判決例
【京都地裁(合議)平成17年7月12日判決】(自保ジャーナル1602号21頁)
症状固定時7歳の女児が遷延性意識障害の後遺障害を残した医療過誤事件につき、母が67歳に達するまでは、近親者介護費用として日額1万7000円(主介護者である母につき1万5000円、補助者である父につき日額2000円)を認めた。
【大阪地裁(合議)平成17年7月25日判決】
高次脳機能障害2級3号の後遺障害を残した事案につき、近親者介護を前提に日額1万3000円を認めた。
【岐阜地裁平成21年9月17日判決】
脊髄損傷で胸腰椎部以下完全対麻痺の後遺障害を残した被害者が、週3回デイサービスを利用しながら、主として高齢の妻による在宅介護を受けている事案で、症状固定日の翌日から口頭弁論終結時までは、妻による近親者介護料として日額1万5000円に、デイサービスと訪問看護に関し被害者の現実の負担額実費を加算した金額を中間利息を控除をせずに認めた。
【名古屋高裁平成22年11月26日判決】
上記判決の控訴審判決であるが、上記判決の上記結論を肯定した。

山田裁判官の裁判例分析は文献2p11参照。

第4.職業介護人介護か近親者介護か

1.蓋然性の問題か?
山田裁判官は、職業介護人介護への移行あるいは、職業介護人介護継続の蓋然性がある場合には、職業介護人介護を前提にし、それ以外は、近親者介護を前提にするようである(文献2p6~11)
[発表者コメント]
事故と相当因果関係がある損害は何かという法的な争いであるのだから、蓋然性以外に公正や正義といった要素も考慮する必要があるはず。
被害者に厳しい判決は、蓋然性の問題ととらえる裁判官によるのではないか。
2.藤村論文
近親者は、本来、職業付添人が介護にあたってしかるべきところ、職業付添人に代替して介護にあたっていると見るべきで、被害者である被介護者が、その障害の程度から、真に、職業付添人による介護を必要とすると認められるなら、現実に職業付添人が介護にあたったか、近親者が介護にあたったかを問わず、すなわち、現実の介護主体が誰であれ、職業付添人を依頼した場合にかかる費用を基本に据えるべきである(文献3p150~151)
近時の裁判例における将来介護費用の算定手法は、一見緻密になってきているようには思われるものの、それが実は、将来介護費を低く抑えることに資するものになっていたのではないかとも思われる。このような姿勢は、早急に改められてよいであろう。(文献3p152)
[発表者コメント]
訴訟では、毎回、藤村論文を引用しながら主張しているが、裁判所の反応は鈍い。
3.評価できる裁判例の分析(発表者による分析整理)
①経済的事情さえ許せば職業介護人による介護を利用したいという近親者の意向を尊重して、職業介護人による介護を前提に将来介護費を算定するのが相当とするもの。あるいは、十分な賠償を受け、経済的に職業介護人に依頼できる条件が整えば、職業介護人を十分に活用する予定であるとして、職業介護人による介護を前提に将来介護費を算定するもの
②事故後、介護のために近親者が退職した事案で、近親者の復職の意向を尊重して職業介護人による介護の必要性を認めているもの
③近親者の就労の必要性を肯定して職業介護人による介護の必要性を認めているもの
④介護にあたる近親者の心身の負担を考慮して職業介護人による介護の必要性を認めているもの
これらに合致する裁判例は、
    個人の自己決定権(憲法13条)
    職業選択の自由(憲法22条)
    苦役からの自由(憲法18条)
といった憲法上の基本的人権を尊重しているとみることもできる。
4.注目すべき裁判例
【大阪高裁平成16年6月10日判決】

[原審は大阪地裁平成15年12月4日判決]
脳外傷及び頚髄損傷による知能低下、両上肢不全麻痺及び両下肢完全麻痺等1級3号の後遺障害を残した事案で、妻の年齢(54歳)、妻ができる限り自らが介護をしようとしているのは経済的負担を考慮しているにすぎず、本来であれば、職業介護人による介護を利用したいと考えていることに照らせば、職業介護人による介護を前提として将来介護費用を算定するのが相当であるとした。
【千葉地裁平成16年3月30日判決】(自保ジャーナル1541号)
高次脳機能障害1級3号の後遺障害を残し、被害者の母が事故当時、出産、育児のために仕事を辞めていた事案で、事故後被害者の介護にあたってきた母が「今後は働きたいとの希望をもっている」としたうえで、裁判所は次のように述べて、職業介護人による介護と近親者介護を割合を平均すると2分の1ずつと認めるのが相当として、それを前提に介護費用を算出した。
被告らが主張するように、原告母が67歳までは、家族介護を前提として将来介護料を算定すると、それは翻って、原告母に外で働く機会を奪い、今後も家族介護を強要することと同じ結果をもたらし、本件事故が前記のとおり、被告の過失によりもたらされたことに鑑みると、衡平の観念上、相当とは到底いえず、同主張を採用することはできない。
【前橋地裁高崎支部平成16年9月17日判決】(自保ジャーナル1562号)
高次脳機能障害等1級3号の後遺障害を残し、被害者の母が事故当時、週2,3回、1回あたり5時間程度の割合で英会話教室の講師をしていたが、被害者の介護のために退職した事案で、①今後も週2,3回程度は自らが身につけている知識、技術を生かして就労し、生徒との触れ合いをとおして自己実現を図りたいと考えていること、②被害者に対する付添介護が母にとり加重な負担となり、同人の心身の健康を損なうおそれがあることを指摘し、年120日間については職業介護人による介護と近親者介護の併用、その余の245日については近親者介護を前提に介護費用を算出した(p4,18,30~32)。
【名古屋地裁(合議)平成17年5月17日判決】(自保ジャーナル1597号3頁)
高位脊髄麻痺・呼吸筋麻痺等1級3号の後遺障害を残した事案について、被害者は本件事故後に婚姻したが、若い妻にとって後遺障害を抱える被害者との生活及び日々の介護は心身ともに多大な負担を強いられることが認められる等として、職業介護人による介護を原則に近親者が可能な範囲で補助することを前提に介護費用を算出した(p5)。
【福岡地裁平成17年7月12日判決】
高次脳機能障害等で別表1第1級1号の後遺障害を残し、小売業を営む自営業者の長男が、仕事をセーブして時間を捻出して被害者の介護にあたっている事案で、長男の介護負担は大きく負担軽減の必要性があること、また、いつまでも仕事をセーブしているわけにもいかないことから、事故につき十分な賠償を受け、経済的に職業介護人に依頼できる条件が整えば、職業介護人を十分に活用する予定であるとする長男の意向を尊重して、平日及び土曜日は職業介護人と近親者介護の併用を、日曜日は近親者介護を前提に介護費用を算出した(p6,22~24)。
【千葉地裁(合議)平成18年4月11日判決】(自保ジャーナル1682号11頁)
高次脳機能障害等2級3号(併合1級)の後遺障害を残し、会社員である被害者の夫が会社を欠勤するなどしながら、被害者の介護を主として行っている事案で、1年のうち240日間については1日8時間の職業介護人による介護と近親者介護の併用を、その余の125日については近親者介護を前提に介護費用を算出した(p14)。
【名古屋高裁平成18年6月8日判決】(自保ジャーナル1681号2頁)   [原審は岐阜地裁平成17年10月14日判決](自保ジャーナル1681号7頁)
遷延性意識障害で別表第1第1級1号の後遺障害を残し、事故時保育士として働いていた被害者の母が介護のために退職した事案で、①高額な職業介護人費用を負担するだけの経済的余裕がないために被害者の母が主体となって被害者の介護にあたっているが、被害者の両親は、適切な将来付添費の賠償が得られれば、直ちに職業人介護に切り替える予定であること、②被害者の母にとって保育士の仕事は長年の夢であり、被害者の介護の一部を職業介護人に任せられれば、復職したいとの強い希望を有していることを認定した上で、1年のうち240日間については1日9時間の職業介護人による介護と近親者介護の併用を、その余の125日については近親者介護を前提に介護費用を算出した(p5~6)。
本判決は、原審が、被害者の母が67歳に達するまでは近親者介護を前提に介護費を算出したのを上記のような理由を述べて変更したものである。
【名古屋地裁平成18年8月29日判決】(自保ジャーナル1681号)
事故時17歳の男子が頸髄損傷等から1級3号後遺障害を残した事案につき、被害者の介護状況からすると介護の負担は重く、被害者の母も肉体的にも精神的にも疲弊していることを考慮すると、一定の割合で母を介護の負担から解放する必要があり、その限度で職業付添を認める必要がある。そして、その割合は、母が満67歳に達するまでは、職業付添人を依頼する日は週3日とするのが相当である。職業付添人を依頼する時間帯は、介護の負担が重いことに照らすと、午前9時から午後5時までの8時間とする。母が満67歳以降は、同人の体力低下のため、年間365日、午前9時から午後5時までの8時間、職業付添人を依頼し、それ以外の時間帯は、母ら近親者が付添看護を行うと認めるのが相当であるとした(p23~24)。
【千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決】(自保ジャーナル1682号17頁)
遷延性意識障害で1級3号の後遺障害を残した事案につき、将来自宅での近親者介護の中心になることが予定されている妹について、「就労して収入を得る道を奪われるべき理由はないから、・・・基本的に職業介護人による介護を前提に介護料を算出すべき」とした(p17~18)。
【名古屋高裁平成19年2月16日判決】
[原審は名古屋地裁岡崎支部平成18年8月17日判決]
高次脳機能障害、左片麻痺などで1級3号の後遺障害を残し、事故時、被害者の母は、その両親の経営する書店を手伝っていたが、現在は、被害者の介護と両立させつつより多い収入が得られるように午後11時から翌日午前3時30分まで、給食会社で夜間勤務をしている事案につき、①夜間被害者を1人にしておくことの不安や、母自身の健康上の不安から、職業介護人を付すなどして日中の勤務に戻りたいと考えていること、②事故後、被害者の母は、うつ病に罹患し通院中であること、③小柄であるために、体格の良い被害者の介護には限界があるが、経済的事情から基本的に被害者の介護には母があたっていること等を認定した上で、「現在の主として控訴人母による介護を長期化させることは控訴人母の健康面から著しい困難を伴う」として、平日日中のうち養護学校に通っていない時間帯については職業介護人による介護、平日の夜間早朝及び休日については、母による介護を前提に介護費用を算出した。(p12~13)。
【徳島地裁美馬支部平成22年3月26日判決】
頚髄損傷による四肢麻痺で、別表一第1級1号の後遺障害を残し、被害者の妻と被害者の高齢の母が自宅で介護にあたっている事案で(p3,5,16)、近親者による介護を前提にした場合、被害者の介護の担い手は、事実上、原告妻に限られるとしたうえで、同人の現在の勤務時間及び通勤に要する時間に相当する職業介護人の費用を損害賠償として認めないことは、実質的に原告妻から就労の機会を奪い、また、原告妻に毎日の長時間にわたる介護を強制することになるから適切とはいい難いとした(p17)。
[発表者コメント]
上記判決のいくつかが指摘するように、職業介護人の費用を認めないことは、長期間にわたり近親者に介護を強制することになるという視点は重要

第4.職業介護人介護か近親者介護か

1.蓋然性の問題か?
山田裁判官は、職業介護人介護への移行あるいは、職業介護人介護継続の蓋然性がある場合には、職業介護人介護を前提にし、それ以外は、近親者介護を前提にするようである(文献2p6~11)
[発表者コメント]
事故と相当因果関係がある損害は何かという法的な争いであるのだから、蓋然性以外に公正や正義といった要素も考慮する必要があるはず。
被害者に厳しい判決は、蓋然性の問題ととらえる裁判官によるのではないか。
2.藤村論文
近親者は、本来、職業付添人が介護にあたってしかるべきところ、職業付添人に代替して介護にあたっていると見るべきで、被害者である被介護者が、その障害の程度から、真に、職業付添人による介護を必要とすると認められるなら、現実に職業付添人が介護にあたったか、近親者が介護にあたったかを問わず、すなわち、現実の介護主体が誰であれ、職業付添人を依頼した場合にかかる費用を基本に据えるべきである(文献3p150~151)
近時の裁判例における将来介護費用の算定手法は、一見緻密になってきているようには思われるものの、それが実は、将来介護費を低く抑えることに資するものになっていたのではないかとも思われる。このような姿勢は、早急に改められてよいであろう。(文献3p152)
[発表者コメント]
訴訟では、毎回、藤村論文を引用しながら主張しているが、裁判所の反応は鈍い。
3.評価できる裁判例の分析(発表者による分析整理)
①経済的事情さえ許せば職業介護人による介護を利用したいという近親者の意向を尊重して、職業介護人による介護を前提に将来介護費を算定するのが相当とするもの。あるいは、十分な賠償を受け、経済的に職業介護人に依頼できる条件が整えば、職業介護人を十分に活用する予定であるとして、職業介護人による介護を前提に将来介護費を算定するもの
②事故後、介護のために近親者が退職した事案で、近親者の復職の意向を尊重して職業介護人による介護の必要性を認めているもの
③近親者の就労の必要性を肯定して職業介護人による介護の必要性を認めているもの
④介護にあたる近親者の心身の負担を考慮して職業介護人による介護の必要性を認めているもの
これらに合致する裁判例は、
個人の自己決定権(憲法13条)
職業選択の自由(憲法22条)
苦役からの自由(憲法18条)
といった憲法上の基本的人権を尊重しているとみることもできる。
4.注目すべき裁判例
【大阪高裁平成16年6月10日判決】

[原審は大阪地裁平成15年12月4日判決]
脳外傷及び頚髄損傷による知能低下、両上肢不全麻痺及び両下肢完全麻痺等1級3号の後遺障害を残した事案で、妻の年齢(54歳)、妻ができる限り自らが介護をしようとしているのは経済的負担を考慮しているにすぎず、本来であれば、職業介護人による介護を利用したいと考えていることに照らせば、職業介護人による介護を前提として将来介護費用を算定するのが相当であるとした。
【千葉地裁平成16年3月30日判決】(自保ジャーナル1541号)
高次脳機能障害1級3号の後遺障害を残し、被害者の母が事故当時、出産、育児のために仕事を辞めていた事案で、事故後被害者の介護にあたってきた母が「今後は働きたいとの希望をもっている」としたうえで、裁判所は次のように述べて、職業介護人による介護と近親者介護を割合を平均すると2分の1ずつと認めるのが相当として、それを前提に介護費用を算出した。
被告らが主張するように、原告母が67歳までは、家族介護を前提として将来介護料を算定すると、それは翻って、原告母に外で働く機会を奪い、今後も家族介護を強要することと同じ結果をもたらし、本件事故が前記のとおり、被告の過失によりもたらされたことに鑑みると、衡平の観念上、相当とは到底いえず、同主張を採用することはできない。
【前橋地裁高崎支部平成16年9月17日判決】(自保ジャーナル1562号)
高次脳機能障害等1級3号の後遺障害を残し、被害者の母が事故当時、週2,3回、1回あたり5時間程度の割合で英会話教室の講師をしていたが、被害者の介護のために退職した事案で、①今後も週2,3回程度は自らが身につけている知識、技術を生かして就労し、生徒との触れ合いをとおして自己実現を図りたいと考えていること、②被害者に対する付添介護が母にとり加重な負担となり、同人の心身の健康を損なうおそれがあることを指摘し、年120日間については職業介護人による介護と近親者介護の併用、その余の245日については近親者介護を前提に介護費用を算出した(p4,18,30~32)。
【名古屋地裁(合議)平成17年5月17日判決】(自保ジャーナル1597号3頁)
高位脊髄麻痺・呼吸筋麻痺等1級3号の後遺障害を残した事案について、被害者は本件事故後に婚姻したが、若い妻にとって後遺障害を抱える被害者との生活及び日々の介護は心身ともに多大な負担を強いられることが認められる等として、職業介護人による介護を原則に近親者が可能な範囲で補助することを前提に介護費用を算出した(p5)。
【福岡地裁平成17年7月12日判決】
高次脳機能障害等で別表1第1級1号の後遺障害を残し、小売業を営む自営業者の長男が、仕事をセーブして時間を捻出して被害者の介護にあたっている事案で、長男の介護負担は大きく負担軽減の必要性があること、また、いつまでも仕事をセーブしているわけにもいかないことから、事故につき十分な賠償を受け、経済的に職業介護人に依頼できる条件が整えば、職業介護人を十分に活用する予定であるとする長男の意向を尊重して、平日及び土曜日は職業介護人と近親者介護の併用を、日曜日は近親者介護を前提に介護費用を算出した(p6,22~24)。
【千葉地裁(合議)平成18年4月11日判決】(自保ジャーナル1682号11頁)
高次脳機能障害等2級3号(併合1級)の後遺障害を残し、会社員である被害者の夫が会社を欠勤するなどしながら、被害者の介護を主として行っている事案で、1年のうち240日間については1日8時間の職業介護人による介護と近親者介護の併用を、その余の125日については近親者介護を前提に介護費用を算出した(p14)。
【名古屋高裁平成18年6月8日判決】(自保ジャーナル1681号2頁)   [原審は岐阜地裁平成17年10月14日判決](自保ジャーナル1681号7頁)
遷延性意識障害で別表第1第1級1号の後遺障害を残し、事故時保育士として働いていた被害者の母が介護のために退職した事案で、①高額な職業介護人費用を負担するだけの経済的余裕がないために被害者の母が主体となって被害者の介護にあたっているが、被害者の両親は、適切な将来付添費の賠償が得られれば、直ちに職業人介護に切り替える予定であること、②被害者の母にとって保育士の仕事は長年の夢であり、被害者の介護の一部を職業介護人に任せられれば、復職したいとの強い希望を有していることを認定した上で、1年のうち240日間については1日9時間の職業介護人による介護と近親者介護の併用を、その余の125日については近親者介護を前提に介護費用を算出した(p5~6)。
本判決は、原審が、被害者の母が67歳に達するまでは近親者介護を前提に介護費を算出したのを上記のような理由を述べて変更したものである。
【名古屋地裁平成18年8月29日判決】(自保ジャーナル1681号)
事故時17歳の男子が頸髄損傷等から1級3号後遺障害を残した事案につき、被害者の介護状況からすると介護の負担は重く、被害者の母も肉体的にも精神的にも疲弊していることを考慮すると、一定の割合で母を介護の負担から解放する必要があり、その限度で職業付添を認める必要がある。そして、その割合は、母が満67歳に達するまでは、職業付添人を依頼する日は週3日とするのが相当である。職業付添人を依頼する時間帯は、介護の負担が重いことに照らすと、午前9時から午後5時までの8時間とする。母が満67歳以降は、同人の体力低下のため、年間365日、午前9時から午後5時までの8時間、職業付添人を依頼し、それ以外の時間帯は、母ら近親者が付添看護を行うと認めるのが相当であるとした(p23~24)。
【千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決】(自保ジャーナル1682号17頁)
遷延性意識障害で1級3号の後遺障害を残した事案につき、将来自宅での近親者介護の中心になることが予定されている妹について、「就労して収入を得る道を奪われるべき理由はないから、・・・基本的に職業介護人による介護を前提に介護料を算出すべき」とした(p17~18)。
【名古屋高裁平成19年2月16日判決】
[原審は名古屋地裁岡崎支部平成18年8月17日判決]
高次脳機能障害、左片麻痺などで1級3号の後遺障害を残し、事故時、被害者の母は、その両親の経営する書店を手伝っていたが、現在は、被害者の介護と両立させつつより多い収入が得られるように午後11時から翌日午前3時30分まで、給食会社で夜間勤務をしている事案につき、①夜間被害者を1人にしておくことの不安や、母自身の健康上の不安から、職業介護人を付すなどして日中の勤務に戻りたいと考えていること、②事故後、被害者の母は、うつ病に罹患し通院中であること、③小柄であるために、体格の良い被害者の介護には限界があるが、経済的事情から基本的に被害者の介護には母があたっていること等を認定した上で、「現在の主として控訴人母による介護を長期化させることは控訴人母の健康面から著しい困難を伴う」として、平日日中のうち養護学校に通っていない時間帯については職業介護人による介護、平日の夜間早朝及び休日については、母による介護を前提に介護費用を算出した。(p12~13)。
【徳島地裁美馬支部平成22年3月26日判決】
頚髄損傷による四肢麻痺で、別表一第1級1号の後遺障害を残し、被害者の妻と被害者の高齢の母が自宅で介護にあたっている事案で(p3,5,16)、近親者による介護を前提にした場合、被害者の介護の担い手は、事実上、原告妻に限られるとしたうえで、同人の現在の勤務時間及び通勤に要する時間に相当する職業介護人の費用を損害賠償として認めないことは、実質的に原告妻から就労の機会を奪い、また、原告妻に毎日の長時間にわたる介護を強制することになるから適切とはいい難いとした(p17)。
[発表者コメント]
上記判決のいくつかが指摘するように、職業介護人の費用を認めないことは、長期間にわたり近親者に介護を強制することになるという視点は重要

第5.職業介護人による介護費用単価

1.介護サービスの種類
家政婦、訪問介護、デイサービス、訪問看護、訪問リハビリ、訪問マッサージ
2.公的負担の制度による違い
医療保険か介護保険、それとも障害者総合支援法の介護サービスか。
 訪問看護、訪問リハビリ
介護保険か障害者総合支援法の介護サービスか。
 訪問介護、デイサービス
自費か医療保険か
 訪問マッサージ
3.単価はどのように立証するか
 

4.介護費用単価の計算方法
医療保険基準で計算するか。
介護保険基準か。
障害者総合支援法の介護サービス基準か。
*従来は、医療保険基準という選択肢はなかったと思われるが、大阪地裁平成23年4月25日判決が、将来の治療費について、自己負担額ではなく、全額が賠償の対象となると判示したことから、主張余地が生じた。
5.蓋然性の立証は必要か
将来の費用に係わる問題ですから、介護保険制度開始後の職業介護費の変動を含めた不確定要素を考慮して、それでもなおかつ相当程度の蓋然性が認められる金額という観点から、いわゆる控え目な認定がなされることは否定できないと思います。(山田裁判官・文献2p13)
将来費用が発生する蓋然性は、本来、損害賠償を請求する側で証明すべき事項であるから、将来費用であることによる不確定要素を考慮してもなお、発生の蓋然性が認められる範囲が裁判所によって認定されている。(松居弁護士・文献1p132)
ただし、松居弁護士は次のようにも述べている。
近親者が介護を担当する場合には、その負担が近親者の一生を左右する過酷なものとなることが少なくないから、将来どのような介護の体制になるかも適正に判断して損害額が認定されることが強く求められる。逸失利益の計算のように将来のことだから「控え目」に認定すればよいと、簡単に割り切ることはできない。(文献1p125)
[発表者コメント]
逸失利益の算定の際に、将来も同じような賃金水準が続くのかは全く問題にされていない。また、介護用具の将来的な価格変動なども大して問題とされていない。介護費用について特有の問題ではない。
「遠い将来については予測ができないので、現状が続くというフィクションのもとで損害計算を行うことが、原告・被告双方にとって公平である」という価値判断が、交通事故賠償の損害計算の根底にあると考えるべきではないか。
6.介護保険制度の職業介護費への影響 
将来予測の問題に関して、保険会社側から職業介護人介護が将来的に下落する可能性が高いと指摘されることがある。その際に、平成16年、17年までの判決や法律論文引用されている場合には注意が必要である。
  [介護保険の施行と介護報酬改定の経過]
     平成12年4月   介護保険法施行
     平成15年4月   介護報酬改定
     平成18年4月   介護報酬改定
     平成21年4月   介護報酬改定
     平成24年4月   介護報酬改定
平成18年までの改定では、介護報酬を下げる方向での改定が行われたが、平成21年4月及び平成24年4月では、介護従事者の人材確保のため、介護従事者の処遇改善の必要があるとして、介護報酬を引き上げる方向で改定が行われている。このことは、社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告書の記載から明らかである。
平成14年発行の文献4には、次のような記述がある。
東京23区における介護保険による訪問介護の報酬は、1時間以上1時間半未満で、身体介護中心の場合が約6260円、家事援助が中心の場合が約2379円で、夜間はこれの25%増し、深夜は50%増しとなります。(文献4p7)
現在は、標準的な地域で、それぞれ身体介護中心5840円、生活援助中心2910円である(資料1)。
なお、障害者総合支援法の重度訪問介護サービスだと標準的な地域で2710円と格段に安い(資料3)。
7.注目すべき裁判例
職業介護人の介護費用単価について、日額2万5000円以上を認めた裁判例として次のものがある。
【広島地裁福山支部(合議)平成16年5月26日判決】(自保ジャーナル1550号12頁)
遷延性意識障害で1級3号の後遺障害を残した事案につき、配偶者が67歳に達するまでは、近親者介護費として日額1万円、職業介護人費として月20万円(日額合計1万6575円)を、配偶者が67歳以降は、余命期間を通じて、職業介護人による介護になるとして日額2万6666円を認めた。
【福岡地裁平成17年7月12日判決】
高次脳機能障害で1級の後遺障害を残した事案につき、近親者介護の日は日額8000円、職業介護人による介護と近親者介護併用の日は日額2万9392円(職業介護人分2万5392円、近親者介護分4000円)を認めた。
【千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決】(自保ジャーナル1682号17頁)
遷延性意識障害等で1級3号の後遺障害を残した事案で、原告母が67歳に達するまでは家族介護料として日額1万円を、原告母が67歳に達して以降は職業介護人及び家族による介護料として日額2万7000円を認めた。
【さいたま地裁平成18年10月18日判決】(自保ジャーナル1675号2頁)
四肢麻痺等1級1号後遺障害を残した事案で、1年のうち平日240日は職業付添人の介護として日額2万7875円及び交通費実費分週2000円を、公休日125日は近親者付添人の介護として日額8000円を認めた。
【長野地裁平成18年11月15日判決】(自保ジャーナル1675号9頁)
寝たきりの1級1号後遺障害を残した事案で、年間100日間の近親者介護料としては日額8000円、残りの265日は職業付添人を付するほかないとし、介護料は日額3万1450円を要すると認めた上で、相当因果関係のある職業付添人による介護料としては8割に相当する日額2万5160円を相当とした。
【名古屋高裁平成19年2月16日判決】
高次脳機能障害、左片麻痺などで1級3号の後遺障害を残した事案で、日中で養護学校に通学してない時間帯については職業介護人を付し、夜間早朝や休日は母が介護することを前提に、在学期間中の介護費用として年間をとおして日額1万5000円(職業介護人1万円+近親者介護5000円)、養護学校高等部卒業から母67歳に達するまでの介護費用として年間をとおして日額2万円(職業介護人1万5000円+近親者介護5000円)、母67歳に達して以降の介護費用として職業介護人による将来介護費用として日額3万円を認めた。
【大阪地裁平成19年4月10日判決】(自保ジャーナル1688号13頁)
頚髄損傷により、体幹・四肢麻痺、呼吸筋麻痺等で1級1号の後遺障害を残した事案で、妻60歳に達するまでは日額2万9000円(職業介護人2万1000円+近親者介護8000円)、妻が60歳に達して以降は、職業介護人による介護費用として日額2万8000円を認めた。
【横浜地裁平成21年5月14日判決】(自保ジャーナル1802号3頁)
口頭弁論終結時には療護施設に入所中の遷延性意識障害の被害者の事案で、自宅に戻った後の将来介護費用として、妻が67歳に達するまでは、年240日は近親者介護を前提に日額1万円、年125日は職業介護人介護を前提に日額3万2354円、妻が67歳に達して以降は、年間を通して職業介護人介護を前提に日額3万2354円の将来介護費用をそれぞれ認めた。
本判決が、原告らが依頼することを前提に調べた金額に依拠して日額3万2354円の将来介護費用を認定したこと、今後の高齢化社会の発展により、より安い介護が受けられるという被告の意見を、介護の担い手不足は深刻な事態になっており、その原因が介護報酬の低額なことにあるとの指摘もされていることからすると、将来どのようになるかは流動的と言わざるを得ないとして退けていることは(p6)、それぞれ重要である。
【岐阜地裁平成21年9月17日判決】
脊髄損傷で胸腰椎部以下完全対麻痺後遺障害を残した被害者が、週3回デイサービスを利用しながら、主として高齢の妻による在宅介護を受けている事案で、症状固定日から口頭弁論終結時までは、妻による近親者介護料として日額1万5000円に、デイサービスと訪問看護に関し被害者の現実の負担額実費を加算した金額を、口頭弁論終結時以降は、職業介護人による介護を前提に日額4万5000円の将来介護費用を認めた。
日額4万5000円という介護費用単価は、午前7時30分から午後11時まで15時間30分の介護を依頼した場合の介護保険基準で算出した費用見積もりが4万8720円であることに依拠して認められたものである。
*ただし、本判決は控訴審判決である名古屋高裁平成22年11月26日判決によって、日額1万7000円に変更されている。
【徳島地裁美馬支部平成22年3月26日判決】
頚髄損傷による四肢麻痺で、別表一第1級1号の後遺障害を残し、被害者の妻と被害者の高齢の母が自宅で介護にあたっている事案で(p3,5,16)、妻が67歳に達するまでは、平日については日額2万4780円(職業介護人2万0780円+近親者4000円)、土日については日額1万円、妻が67歳になって以降は、日額3万1570円の将来介護費用を認めた(p16~20)。
【東京地裁平成22年3月26日判決】(交民集第43巻2号455頁)
遷延性意識障害で別表一第1級1号の後遺障害を残した入院中の事案で、将来の在宅介護は、専ら職業介護人によって行われる可能性が高いとしたうえで、職業介護人による介護費用の日額として2万5000円を認めた(p485)。
【名古屋地裁平成23年2月18日判決】(自保ジャーナル1851号1頁)
遷延性意識障害等で別表一第1級1号の後遺障害を残した事案で、近親者(母親)が67歳になるまでの20年間について、年間300日について、近親者と職業介護人併用の介護になるとし、その場合、職業介護人の介護料として2万円、近親者分として5000円の日額合計2万5000円(残りの65日については近親者のみの介護として日額1万円)、母親が67歳になって以降は、年間を通じて職業介護人主体の介護になるとし、その場合の介護料として日額2万5000円を認めた。判決は、母親が67歳になって以降の日額2万5000円という原告の請求を「控えめな請求であると認められる」としている。


文献1 松居 英二 「将来介護費-将来介護の日額」(『交通賠償論の新次元』平成19年)
文献2 山田 智子 「重度後遺障害の将来介護費の算定に関する諸問題」(『赤い本』平成23年版)
文献3 藤村 和夫 「将来の介護費について」(『交通賠償論の新次元』平成19年)
文献4 河邉 義典 『新しい交通賠償論の胎動』(7~9頁、24~31頁)

第5.職業介護人による介護費用単価

1.介護サービスの種類
家政婦、訪問介護、デイサービス、訪問看護、訪問リハビリ、訪問マッサージ
2.公的負担の制度による違い
医療保険か介護保険、それとも障害者総合支援法の介護サービスか。
訪問看護、訪問リハビリ
介護保険か障害者総合支援法の介護サービスか。
訪問介護、デイサービス
自費か医療保険か
訪問マッサージ
3.単価はどのように立証するか
 

4.介護費用単価の計算方法
医療保険基準で計算するか。
介護保険基準か。
障害者総合支援法の介護サービス基準か。
*従来は、医療保険基準という選択肢はなかったと思われるが、大阪地裁平成23年4月25日判決が、将来の治療費について、自己負担額ではなく、全額が賠償の対象となると判示したことから、主張余地が生じた。
5.蓋然性の立証は必要か
将来の費用に係わる問題ですから、介護保険制度開始後の職業介護費の変動を含めた不確定要素を考慮して、それでもなおかつ相当程度の蓋然性が認められる金額という観点から、いわゆる控え目な認定がなされることは否定できないと思います。(山田裁判官・文献2p13)
将来費用が発生する蓋然性は、本来、損害賠償を請求する側で証明すべき事項であるから、将来費用であることによる不確定要素を考慮してもなお、発生の蓋然性が認められる範囲が裁判所によって認定されている。(松居弁護士・文献1p132)
ただし、松居弁護士は次のようにも述べている。
近親者が介護を担当する場合には、その負担が近親者の一生を左右する過酷なものとなることが少なくないから、将来どのような介護の体制になるかも適正に判断して損害額が認定されることが強く求められる。逸失利益の計算のように将来のことだから「控え目」に認定すればよいと、簡単に割り切ることはできない。(文献1p125)
[発表者コメント]
逸失利益の算定の際に、将来も同じような賃金水準が続くのかは全く問題にされていない。また、介護用具の将来的な価格変動なども大して問題とされていない。介護費用について特有の問題ではない。
「遠い将来については予測ができないので、現状が続くというフィクションのもとで損害計算を行うことが、原告・被告双方にとって公平である」という価値判断が、交通事故賠償の損害計算の根底にあると考えるべきではないか。
6.介護保険制度の職業介護費への影響 
将来予測の問題に関して、保険会社側から職業介護人介護が将来的に下落する可能性が高いと指摘されることがある。その際に、平成16年、17年までの判決や法律論文引用されている場合には注意が必要である。
[介護保険の施行と介護報酬改定の経過]
平成12年4月   介護保険法施行
平成15年4月   介護報酬改定
平成18年4月   介護報酬改定
平成21年4月   介護報酬改定
平成24年4月   介護報酬改定
平成18年までの改定では、介護報酬を下げる方向での改定が行われたが、平成21年4月及び平成24年4月では、介護従事者の人材確保のため、介護従事者の処遇改善の必要があるとして、介護報酬を引き上げる方向で改定が行われている。このことは、社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告書の記載から明らかである。
平成14年発行の文献4には、次のような記述がある。
東京23区における介護保険による訪問介護の報酬は、1時間以上1時間半未満で、身体介護中心の場合が約6260円、家事援助が中心の場合が約2379円で、夜間はこれの25%増し、深夜は50%増しとなります。(文献4p7)
現在は、標準的な地域で、それぞれ身体介護中心5840円、生活援助中心2910円である(資料1)。
なお、障害者総合支援法の重度訪問介護サービスだと標準的な地域で2710円と格段に安い(資料3)。
7.注目すべき裁判例
職業介護人の介護費用単価について、日額2万5000円以上を認めた裁判例として次のものがある。
【広島地裁福山支部(合議)平成16年5月26日判決】(自保ジャーナル1550号12頁)
遷延性意識障害で1級3号の後遺障害を残した事案につき、配偶者が67歳に達するまでは、近親者介護費として日額1万円、職業介護人費として月20万円(日額合計1万6575円)を、配偶者が67歳以降は、余命期間を通じて、職業介護人による介護になるとして日額2万6666円を認めた。
【福岡地裁平成17年7月12日判決】
高次脳機能障害で1級の後遺障害を残した事案につき、近親者介護の日は日額8000円、職業介護人による介護と近親者介護併用の日は日額2万9392円(職業介護人分2万5392円、近親者介護分4000円)を認めた。
【千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決】(自保ジャーナル1682号17頁)
遷延性意識障害等で1級3号の後遺障害を残した事案で、原告母が67歳に達するまでは家族介護料として日額1万円を、原告母が67歳に達して以降は職業介護人及び家族による介護料として日額2万7000円を認めた。
【さいたま地裁平成18年10月18日判決】(自保ジャーナル1675号2頁)
四肢麻痺等1級1号後遺障害を残した事案で、1年のうち平日240日は職業付添人の介護として日額2万7875円及び交通費実費分週2000円を、公休日125日は近親者付添人の介護として日額8000円を認めた。
【長野地裁平成18年11月15日判決】(自保ジャーナル1675号9頁)
寝たきりの1級1号後遺障害を残した事案で、年間100日間の近親者介護料としては日額8000円、残りの265日は職業付添人を付するほかないとし、介護料は日額3万1450円を要すると認めた上で、相当因果関係のある職業付添人による介護料としては8割に相当する日額2万5160円を相当とした。
【名古屋高裁平成19年2月16日判決】
高次脳機能障害、左片麻痺などで1級3号の後遺障害を残した事案で、日中で養護学校に通学してない時間帯については職業介護人を付し、夜間早朝や休日は母が介護することを前提に、在学期間中の介護費用として年間をとおして日額1万5000円(職業介護人1万円+近親者介護5000円)、養護学校高等部卒業から母67歳に達するまでの介護費用として年間をとおして日額2万円(職業介護人1万5000円+近親者介護5000円)、母67歳に達して以降の介護費用として職業介護人による将来介護費用として日額3万円を認めた。
【大阪地裁平成19年4月10日判決】(自保ジャーナル1688号13頁)
頚髄損傷により、体幹・四肢麻痺、呼吸筋麻痺等で1級1号の後遺障害を残した事案で、妻60歳に達するまでは日額2万9000円(職業介護人2万1000円+近親者介護8000円)、妻が60歳に達して以降は、職業介護人による介護費用として日額2万8000円を認めた。
【横浜地裁平成21年5月14日判決】(自保ジャーナル1802号3頁)
口頭弁論終結時には療護施設に入所中の遷延性意識障害の被害者の事案で、自宅に戻った後の将来介護費用として、妻が67歳に達するまでは、年240日は近親者介護を前提に日額1万円、年125日は職業介護人介護を前提に日額3万2354円、妻が67歳に達して以降は、年間を通して職業介護人介護を前提に日額3万2354円の将来介護費用をそれぞれ認めた。
本判決が、原告らが依頼することを前提に調べた金額に依拠して日額3万2354円の将来介護費用を認定したこと、今後の高齢化社会の発展により、より安い介護が受けられるという被告の意見を、介護の担い手不足は深刻な事態になっており、その原因が介護報酬の低額なことにあるとの指摘もされていることからすると、将来どのようになるかは流動的と言わざるを得ないとして退けていることは(p6)、それぞれ重要である。
【岐阜地裁平成21年9月17日判決】
脊髄損傷で胸腰椎部以下完全対麻痺後遺障害を残した被害者が、週3回デイサービスを利用しながら、主として高齢の妻による在宅介護を受けている事案で、症状固定日から口頭弁論終結時までは、妻による近親者介護料として日額1万5000円に、デイサービスと訪問看護に関し被害者の現実の負担額実費を加算した金額を、口頭弁論終結時以降は、職業介護人による介護を前提に日額4万5000円の将来介護費用を認めた。
日額4万5000円という介護費用単価は、午前7時30分から午後11時まで15時間30分の介護を依頼した場合の介護保険基準で算出した費用見積もりが4万8720円であることに依拠して認められたものである。
*ただし、本判決は控訴審判決である名古屋高裁平成22年11月26日判決によって、日額1万7000円に変更されている。
【徳島地裁美馬支部平成22年3月26日判決】
頚髄損傷による四肢麻痺で、別表一第1級1号の後遺障害を残し、被害者の妻と被害者の高齢の母が自宅で介護にあたっている事案で(p3,5,16)、妻が67歳に達するまでは、平日については日額2万4780円(職業介護人2万0780円+近親者4000円)、土日については日額1万円、妻が67歳になって以降は、日額3万1570円の将来介護費用を認めた(p16~20)。
【東京地裁平成22年3月26日判決】(交民集第43巻2号455頁)
遷延性意識障害で別表一第1級1号の後遺障害を残した入院中の事案で、将来の在宅介護は、専ら職業介護人によって行われる可能性が高いとしたうえで、職業介護人による介護費用の日額として2万5000円を認めた(p485)。
【名古屋地裁平成23年2月18日判決】(自保ジャーナル1851号1頁)
遷延性意識障害等で別表一第1級1号の後遺障害を残した事案で、近親者(母親)が67歳になるまでの20年間について、年間300日について、近親者と職業介護人併用の介護になるとし、その場合、職業介護人の介護料として2万円、近親者分として5000円の日額合計2万5000円(残りの65日については近親者のみの介護として日額1万円)、母親が67歳になって以降は、年間を通じて職業介護人主体の介護になるとし、その場合の介護料として日額2万5000円を認めた。判決は、母親が67歳になって以降の日額2万5000円という原告の請求を「控えめな請求であると認められる」としている。


【文献1】
松居英二
「将来介護費-将来介護の日額」
(『交通賠償論の新次元』平成19年)
【文献2】
山田智子
「重度後遺障害の将来介護費の算定に関する諸問題」
(『赤い本』平成23年版)
【文献3】
藤村和夫
「将来の介護費について」
(『交通賠償論の新次元』平成19年)
【文献4】
河邉義典
『新しい交通賠償論の胎動』
(7~9頁、24~31頁)