交通医療研究会

福祉住環境(住宅改修と福祉用具)

2023.05.18

第1.福祉住環境コーディネーター(参考文献3・254頁)

高齢者や障害者に対して住みやすい住環境を提案するアドバイザーである。医療・福祉・建築について体系的で幅広い知識を身につけ、各種の専門職と連携を取りながらクライアントに適切な住宅改修プランを提示する役割を担う。

第2.住環境整備の問題点と課題

1.日本の木造住宅の問題点(参考文献1・6頁)
最近建設される住宅は、バリアフリー対応が以前より増加してきたが、全住宅に占める割合はまだまだ少ない。それは、以前に建設された木造の住宅がバリアフリー化されていないことが大きな理由である。
今後は木造、非木造住宅にかかわらずライフ・スタイルの多様化にあわせた、だれもが快適に暮らせる住宅環境の整備が課題である。そうした改善の目安となる住宅の問題点とは以下の6点である。
①木構造を基本としてきた我が国の従来の住宅が持つ問題
床面に段差ができやすい。
②尺貫法の影響
尺貫法による寸法(3尺法-廊下、階段、開口部等の幅員は通常柱芯-芯の間隔を910mm(3尺)とする)が、介助や車いすなどの福祉用具を必要とする高齢者・障害者の室内移動には幅が狭く適していない。
③住宅構造上の制約による室内移動の困難
住宅面積が小さく、一室当たりの面積も狭いため、大きな空間をとりにくい。生活の様式化により家具類が増え、生活用品が多様化したことなどにより、ますます床面積を多く占めるようになっている。
そのため、福祉用具を使用する高齢者や障害者の室内移動を困難にしている。
④介助・福祉用具活用スペースの確保困難
介助を試みようとしても、あるいは福祉用具を活用しようとしても、通行幅やスペースがとれないことが多い。
⑤床座による生活様式
生活動作に床座と立ち座りが要求され、高齢者や障害者には不向きである
⑥夏にあわせた住宅構造
日本の気候は高温多湿であり、日本の住宅は夏に合わせて造られてきた。したがって、冬季の寒さには向いていない住宅であり、高齢者や障害者、特に循環器系に疾患をもつ高齢者には、室内の温度差が不適切な環境となる。

2.家庭内事故の種類(参考文献1・9頁)
⑴落下型
墜落、転落、転倒、落下物による打撲
⑵接触型
つぶされ、ぶつかり、はさまれ、こすり、鋭利物による傷害
⑶危険物型
火傷・熱傷、感電、ガス中毒・酸欠、溺水
※2005年(平成17年)に家庭内の事故で亡くなった人12,781人のうち、65歳以上の人は9,728人であり、溺死が全体の33.1%となっている。交通事故死は4,380人で、家庭内に起こる事故死は交通事故死の倍以上に達することがわかる。

第3.住宅介護での自立支援の在り方~さまざまな職種との協働(参考文献1・99頁)

高度医療の専門分化が進むなかで、訪問診療や訪問介護、訪問リハビリテーションなどの在宅介護を支援する専門職との連携の機会も増えている。福祉住環境整備の基本方針を立てる際には、心身機能の現在の状況や将来の見通し、また、ADL場面での具体的な介護の内容や安全な動作方法を確認する必要がある。
また、福祉住環境整備後の使用状況の評価を行う際にも、各分野の専門職は互いに協力することになる。経過観察の結果、福祉住環境整備後の環境をうまく活動できていない場合、その要因を検討することが必要となる。
さまざまな情報を多角的に入手するため、本人や家族を中心としてこれらの専門職との連絡調整の方法と手段の確保は重要である。

第4.介護保険制度と住宅改修(参考文献2・108頁)

1.支給額
支給限度額20万円(消費税込み)、自己負担1割
①改修費用が20万円以下
自己負担は1割負担
②改修費用が20万円を超える
18万円+20万円超過額が自己負担となる。

2.支給対象となる改造費
①手すりの取り付け
②段差の解消
③床材の変更
④扉の取り替え
⑤便器の取り替え
⑥①~⑤に附帯して必要な工事

第5.福祉住環境整備の共通基本技術

1.段差の解消(参考文献1・264頁)
転倒防止のために必要である。
また、車いす等車輪がついている福祉用具を使用する際、乗り心地が悪くなったり、移動困難や使用不能となったりすることがあるため、必要である。
⑴屋外
ア.地面~居室の床
スロープの設置
段差解消機の設置
床を下げて段差解消
⑵屋内
ア.和室~洋室
新築
床束の長さで調整
根太(ねだ)の大きさで調整
改造
すりつけ板の設置
合板等による洋室部のかさ上げ
イ.洋室~洋室(廊下)
建具敷居段差の解消
・床面レベルまで敷居を埋め込む
・への字プレートの設置
・V溝レールの設置
ウ.浴室~脱衣室
すのこの設置
浴室洗い場のうえに新たに床仕上げを設置
2.床材の選択(参考文献1・270頁)
床材に問題があると、歩行移動や車いすでの移動がスムーズに行えず、特に、下肢機能が低下している場合にはからだのバランスを保ちにくく、足を滑らす原因にもなる。
3.手すりの取り付け(参考文献1・271頁)
手すりは、動作を補助し、安全な歩行や移動を助けるといった役割があり、上肢を使って体位を安定させることができる。
○ハンドレール(hand rail)
からだの位置を移動させるときに手を滑らせながら移動する
例)階段、廊下
○グラブバー(glab bar)
からだの位置はそれほど移動させないが、移乗動作や立ち座り動作のときに、しっかりとつかまって使用する
例)トイレ、浴室

4.建具への配慮(参考文献1・274頁)
高齢者や障害者が住宅内で介助歩行や杖歩行をする場合には、通常の戸の幅員では使いにくい状態となる。特に、車いすやリフトなどの福祉用具を使用しての移動では、廊下の幅員が狭いことも相まって、多くの困難を伴うか、あるいは移動できない状態に陥る。
また、建具下部のわずかな敷居段差であっても、高齢者や障害者の移動の妨げとなりやすい。
その他、建具の開閉方向や把手の形状なども移動のしやすさに関連している。

5.スペースの配慮(参考文献1・278頁)
介助を受けながら廊下を移動するとき、介助者は高齢者や障害者の少なくとも半身分は体を横にずらして移動するため、廊下の有効幅員は1.5人分の幅が必要となり、通常の廊下幅では十分な広さとはいえない。
また、トイレや浴室で介助を行おうとするときには、十分な介助スペースが確保できない。
さらに、車いすや床走行式リフトなどを使用して生活動作を行う場合、これらの福祉用具の動きや移動に必要な面積を考えると、これまでの在来木造住宅では対応するのが難しい。
○壁・柱を取り外す方法
○モジュールをずらす方法

6.家具・収納への配慮(参考文献1・280頁
7.色彩・照明計画、インテリアへの配慮(参考文献1・282頁)
8.冷暖房への配慮(参考文献1・284頁)
9.非常時の対応(緊急通報装置の考え方(参考文献1・285頁)
10. 経費、維持管理(メンテナンス)への配慮(参考文献1・288頁)

第6.生活行為別福祉住環境整備の手法

1.外出(参考文献1・291頁)
2.屋内移動(参考文献1・301頁
3.排泄(参考文献1・309頁)
4.入浴(参考文献1・319頁)
5.更衣(着脱衣)・洗面・整容(参考文献1・328頁)
6.調理と食事、団らん(参考文献1・332頁)
7.就寝(参考文献1・337頁)

第7.疾患別にみた福祉住環境設備の考え方

1.脳血管障害(脳卒中)(参考文献1・107頁)
2.肢体不自由(参考文献1・154頁)
3.視覚障害(視力障害/視野障害)(参考文献1・185頁)
4.認知・行動障害(参考文献1・203頁)

第8.福祉用具

1.福祉用具の意味(参考文献1・368頁)
福祉用具とは、心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう(福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律(福祉用具法)2条)

2.生活行為別にみた福祉用具の活用
⑴起居・就寝(参考文献1・373頁)
⑵移動(参考文献1・380頁)
⑶排泄(参考文献1・409頁)
⑷入浴(参考文献1・415頁)
⑸生活動作補助用具(参考文献1・424頁)

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