コラム

高次脳機能障害⑦(損害項目)

2020.09.23
  • 高次脳機能障害⑦(損害項目)

前回までの説明で、「脳外傷による高次脳機能障害」が後遺障害として認定されるための基準、そして、後遺障害等級の認定基準について説明しました。
では、「脳外傷による高次脳機能障害」が後遺障害として認定された場合、どのような項目について損害賠償請求が可能になるのか、解説していきます。

Ⅰ.怪我を負ったことに関する損害項目
以下の項目は、高次脳機能障害が後遺障害として認定されたか否かにかかわらず認められます。
 
1.治療費
交通事故で怪我を負った場合、その怪我を治療するために必要かつ相当な治療費が賠償の対象となります。
治療費の支払には、労災保険が適用できる場合は労災保険を適用し、それ以外の場合は健康保険を適用するようにしましょう。
 
1.治療費
 
2.入院雑費
入院した場合に支出する細々とした費用のことです。例えば、ガーゼ、タオル、ウェットティッシュ、テレビカードなどの購入費です。
入院雑費を請求するとき、領収証などの資料を提出しなくても、1日あたり一定額を認めることになっています。相場は、1日あたり1500円です。
 
2.入院雑費
 
3.付添看護費
被害者の怪我が重篤だったり、被害者が幼児・児童という事案など、被害者だけでは、入院生活が難しかったり、病院との意思疎通ができない時に、近親者などが付添看護を行ったことに対して認められる損害項目です。
1日あたり6000円~6500円で認められることが多いです。
 
4.休業損害
就労して収入を得ていた方が、交通事故で怪我を負ったため、就労できなくなり、収入が減少した場合に認められる損害です。
なお、給与収入を得ていた方に限らず、家事従事者、事業所得者なども休業損害の支払を受けられる可能性があります。
 
5.入通院慰謝料
交通事故で怪我を負えば、被害者は、必然的に精神的苦痛を被ります。この精神的苦痛に対して、慰謝料の請求が認められています。
この慰謝料は、入通院した期間を基礎として算定されるため、入通院慰謝料と呼ばれています。
 
Ⅱ.後遺障害を負ったことに関する損害項目
以下の項目は、高次脳機能障害が後遺障害として認定された場合に限って認められます。
 
1.逸失利益
高次脳機能障害が後遺障害と認められた場合、その症状の重症度に応じて、労働能力の全部または一部を失い、将来的に得られるはずの収入の全部または一部を失ってしまいます。逸失利益は、この将来の減収を補うために請求が認められる損害項目です。
逸失利益の額を計算するためには、以下の項目を検討する必要があります。
⑴基礎収入
事故がなければ、被害者が将来的に得られたと見込まれる収入額のことです。
事故前年度の年収(所得)を基礎収入とすることが原則であり、会社員などの給与収入を得ている方は「源泉徴収票」、自営業主などの営業収入を得ている方は「確定申告書」などによって収入額を把握します。
主婦や30歳未満の若年者は、平均賃金(賃金センサス)を基礎収入とすることが可能です。
⑵労働能力喪失率
後遺障害の等級に応じて、標準となる労働能力喪失率が定められています。具体的には、以下の表の通りです。
⑵労働能力喪失率
⑶労働能力喪失期間
後遺障害が残った場合に、どれだけの期間、就労への影響が続くのかが問題となります。一般的には、「67歳に達するまで」就労できることを前提として、症状固定時の年齢から67歳までの期間が労働能力喪失期間とされます。
なお、既にある程度の年齢に達している方の場合、「症状固定時の年齢から67歳までの期間」「症状固定時の平均余命の1/2の期間」の長い方の期間を採用することとされています。
 
2.後遺障害慰謝料
後遺障害が認定されれば、その等級に応じて、後遺障害慰謝料の請求が可能になります。
交通事故の賠償金額の算定において、広く参考にされている損害賠償額算定基準(通称:「赤い本」)では、以下の表の通りの基準となっています。
裁判所ごとに標準化されている場合があるので、必ずしも以下の表の金額が認められるわけではありません。
 
2.後遺障害慰謝料
 
3.将来介護費
重篤な高次脳機能障害を負った場合、将来にわたって、日常生活を送るために「見守り」「声掛け」などの介護が必要となることがあります。この場合、介護に要する費用が損害として認められます。
⑴将来介護費が認められる後遺障害等級
高次脳機能障害が1級や2級に認定された場合、これらの後遺障害等級は介護が必要であることが前提になっているため、将来介護費が認められることになります。
これに加えて、高次脳機能障害の場合は、被害者の症状や必要な介護の内容によって、3級や5級でも介護の必要性が肯定され、将来介護費が認められる場合があります。ですから、3級や5級であっても、被害者の症状、近親者が行っている見守りや声掛けの内容などを詳細に把握し、将来介護費の請求が可能か否かを慎重に検討すべきことになります。
 
⑴将来介護費が認められる後遺障害等級
 
⑵認められる介護費の額
将来介護費は、将来にわたって介護に必要とされる費用を算定するため、多くの事情を考慮して算定することになります。例えば、後遺障害等級、具体的な症状の内容、現実に実施している介護の内容、職業介護人(ヘルパーなど)を利用しているか、介護者にかかる負担の程度などです。
症状が重く、介護をすべき時間が長く、介護の負担も重いほど、認められる介護費の額も多くなります。例えば、後遺障害等級が1級であれば、1日あたり1万数千円の将来介護費が認められる可能性があります。これに対し、3級や5級の場合は、1日あたり2000円~5000円が認められる程度です。
 
4.家屋改造費、装具・器具購入費
高次脳機能障害が重篤な場合には、身体機能にも麻痺などの障害が生じている場合があります。この場合、移動のために車いす・杖・装具が必要であれば、それらの購入費が損害として認められることになります。
また、身体の障害が重篤であれば、自宅内のバリアフリー化工事の費用も損害として認められることになります。
 
5.成年後見手続費用
高次脳機能障害が重篤である場合、十分な判断能力が失われるなどして財産の管理が困難になっていることがあります。この場合、例えば、
①弁護士に委任するか
②示談で解決するか、訴訟を提起するか
③示された賠償額を受け入れて解決するか
④受け取った賠償金をどうやって管理するか
などを判断できないため、損害賠償の問題を解決できません。
この場合、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、被害者に代わって成年後見人に対応してもらう必要があります。
成年後見の手続には、申立費用、精神鑑定の費用(5万円~10万円)などの支出が必要になります。また、弁護士などの専門職が後見人になった場合には、後見人に対する報酬の支払いが必要になります。これらの費用が損害賠償の対象となります。
 
Ⅲ.まとめ
交通事故によって脳外傷による高次脳機能障害を発症し、後遺障害として認定された場合に問題となる損害項目について説明しました。
ここに記載されている損害項目は、主なものを記載したに過ぎません。個々の被害者がおかれている状況に応じて、これ以外の損害項目が認められる可能性がありますので、ご注意ください。

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