コラム

脊髄損傷⑩(後遺障害等級)

2022.09.16
  • 脊髄損傷⑩(後遺障害等級)

今回は、脊髄損傷において認定される可能性がある後遺障害等級について種類・認定基準を解説します。かなり複雑な内容ですので、できる限り簡潔に説明しますが、それでも分かりにくいことをご了承ください。

第1.【1級】
脊髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
A.高度の四肢麻痺が認められるもの
⑴『高度の麻痺』とは、障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が「ほとんど」失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作(下肢=歩行・立位、上肢=物を持ち上げて移動させること)が「できない」状態をいいます。
この程度の麻痺が四肢つまり両上肢および両下肢に生じている必要があります。
⑵高度の四肢麻痺は、頚髄が完全損傷することによって生じます。
⑶両上肢および両下肢のみならず、体幹にも高度の麻痺が生じています。ですから、ほぼ「寝たきり」の状態になっています。
A.高度の四肢麻痺が認められるもの
B.高度の対麻痺が認められるもの
⑴高度の対麻痺は、両上肢もしくは両下肢のどちらかに『高度の麻痺』がある状態をいいます。
一般的には、胸髄を完全損傷することによって、両下肢に高度の対麻痺が生じる場合が多いといえます。
⑵両下肢に高度の対麻痺が生じている場合、立位や歩行ができなくなっているため、生活には車いすの利用が必須となります。
B.高度の対麻痺が認められるもの
C.中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
⑴『中等度の麻痺』とは、障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が「相当程度」失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作に「かなりの制限がある」状態をいいます。
この程度の麻痺が四肢に生じている必要があるので、以下の状態が併存している必要があります。
・上肢
障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができない状態、または、障害を残した一上肢では文字を書くことができない状態
・下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難である状態
⑵中等度の四肢麻痺は、頚髄の不完全損傷が原因となって生じます。
⑶「食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する」ことが前提とされているため、完全に寝たきりという状態ではなくても、ベッド上での生活が大半となっていることが多いです。
C.中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
D.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について、常時介護を要するもの
⑴中等度の対麻痺は、両上肢もしくは両下肢のどちらかに『中等度の麻痺』、つまり以下の状態が生じている状態をいいます。
・上肢
障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができない状態、または、障害を残した一上肢では文字を書くことができない状態
・下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難である状態
⑵一般的には、胸髄を不完全損傷することによって、両下肢に中等度の対麻痺が生じている状態が多いです。
そして、杖もしくは硬性装具を使えば歩行ができる状態ですが、現実の生活では、車いすを利用する場面も多いと考えられます。
⑶「食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する」ことが前提とされています。胸髄を不完全損傷することによって、両下肢に中等度の対麻痺が生じている状態を前提とすると、常時介護を要するほどの状態になっている例は少ないと思います。
 D.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について、常時介護を要するもの 

第2.【2級】
脊髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの
A.中等度の四肢麻痺が認められるもの
⑴『中等度の麻痺』とは、障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が「相当程度」失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作に「かなりの制限がある」状態をいいます。
この程度の麻痺が四肢に生じている必要があるので、以下の状態が『併存』している必要があります。
・上肢
障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができない状態、または、障害を残した一上肢では文字を書くことができない状態
・下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難である状態
⑵中等度の四肢麻痺は、頚髄の不完全損傷が原因となって生じます。
A.中等度の四肢麻痺が認められるもの 
B.軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
⑴『軽度の麻痺』とは、障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が「多少」失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の「巧緻性および速度が相当程度損なわれている」状態をいいます。
この程度の麻痺が四肢に生じている必要があるので、以下の状態が『併存』している必要があります。
①上肢
障害を残した一上肢では、文字を書くことに困難を伴う状態
②下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができない状態
⑵軽度の四肢麻痺は、頚髄の不完全損傷が原因となって生じます。
⑶食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要している必要があります。
B.軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
C.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
⑴中等度の対麻痺は、両上肢もしくは両下肢のどちらかに『中等度の麻痺』、つまり以下の状態が生じている状態をいいます。
・上肢
障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができない状態、または、障害を残した一上肢では文字を書くことができない状態
・下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難である状態
⑵一般的には、胸髄を不完全損傷したことにより、両下肢に中等度の対麻痺が生じている状態が多いです。
そして、杖もしくは硬性装具を使えば歩行ができなる状態ですが、車いすを利用する場面もあると考えられます。
⑶食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要している必要があります。
C.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの  
第3.【3級】
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、脊髄症状のために、労務に服することができないもの 
A.軽度の四肢麻痺が認められるもの(2級Bに該当するものを除く)
⑴『軽度の麻痺』とは、障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が「多少」失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の「巧緻性および速度が相当程度損なわれている」状態をいいます。
この程度の麻痺が四肢に生じている必要があるので、以下の状態が『併存』している必要があります。
①上肢
障害を残した一上肢では、文字を書くことに困難を伴う状態
②下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができない状態
⑵軽度の四肢麻痺は、頚髄の不完全損傷が原因となって生じます。
A.軽度の四肢麻痺が認められるもの(2級Bに該当するものを除く
B.中等度の対麻痺が認められるもの(1級D・2級Cに該当するものを除く)
⑴中等度の対麻痺は、両上肢もしくは両下肢のどちらかに『中等度の麻痺』、つまり以下の状態が生じている状態をいいます。
・上肢
障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができない状態、または、障害を残した一上肢では文字を書くことができない状態
・下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難である状態
⑵一般的には、胸髄を不完全損傷したことにより、両下肢に中等度の対麻痺が生じている状態が多いです。
そして、杖もしくは硬性装具を使えば歩行ができなる状態ですが、車いすを利用する場面もあると考えられます。
B.中等度の対麻痺が認められるもの(1級D・2級Cに該当するものを除く)
 
第4.【5級】
脊髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの 
A.軽度の対麻痺が認められるもの
⑴『軽度の麻痺』とは、障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が「多少」失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の「巧緻性および速度が相当程度損なわれている」状態をいいます。
軽度の対麻痺は、両上肢もしくは両下肢のどちらかに『軽度の麻痺』、つまり以下の状態が生じている状態をいいます。
①上肢
障害を残した一上肢では、文字を書くことに困難を伴う状態
②下肢
障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができない状態
⑵一般的には、胸髄を不完全損傷したことにより、両下肢に軽度の対麻痺が生じている状態が多いです。
A.軽度の対麻痺が認められるもの 
B.一下肢の高度の単麻痺が認められるもの
 ⑴『高度の麻痺』とは、障害のある下肢の運動性・支持性が「ほとんど」失われ、障害のある下肢の基本動作(下肢=歩行・立位)が「できない」状態をいいます。
この程度の麻痺が一下肢に生じている必要があります。
⑵一下肢に単麻痺が生じるためには、胸髄において脊髄の半側のみに損傷を受けている必要があります。しかし、脊髄の半側のみを損傷する症例は考えにくく、現実には、他の下肢にも何らかの麻痺が生じていると考えられます。
B.一下肢の高度の単麻痺が認められるもの  
第5.【7級】
脊髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの 
A.一下肢の中等度の単麻痺が認められるもの
⑴中等度の麻痺は、障害のある下肢の運動性・支持性が「相当程度」失われ、障害のある下肢の基本動作に「かなりの制限がある」状態をいいます。
具体的には、障害を残した一下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができない状態が該当します。
⑵一下肢に単麻痺が生じるためには、胸髄において脊髄の半側のみに損傷を受けている必要があります。しかし、脊髄の半側のみを損傷する症例は考えにくく、現実には、他の下肢にも何らかの麻痺が生じていると考えられます。
A.一下肢の中等度の単麻痺が認められるもの
 
第6.【9級】
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの 
A.一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの
⑴軽度の麻痺とは、障害のある下肢の運動性・支持性が「多少」失われており、障害のある下肢の基本動作を行う際の「巧緻性および速度が相当程度損なわれている」状態をいいます。
具体的には、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため、不安定で転倒しやすく、速度も遅い状態が該当します。
⑵一下肢に単麻痺が生じるためには、胸髄において脊髄の半側のみに損傷を受けている必要があります。しかし、脊髄の半側のみを損傷する症例は考えにくく、現実には、他の下肢にも何らかの麻痺が生じていると考えられます。
A.一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの
  
第7.【12級】
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため、多少の障害を残すもの 
①運動性、支持性、巧級性、速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
例:軽微な筋緊張の亢進が認められるもの
②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの
例:運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢にわたって認められる場合
 
第8.まとめ
脊髄損傷では、麻痺の程度、麻痺の範囲、介護の要否などを基準にして後遺障害等級が判定されます。
かなり複雑な基準ですが、反面、認定される後遺障害等級を予測しやすいといえます。

daichi library
youtube
instagram
facebook
弁護士ドットコム

お電話

お問い合わせ

アクセス