コラム

刑事手続②(捜査段階の対応)

2023.02.10
  • 刑事手続②(捜査段階の対応)

交通事故の後に実施される「捜査」とは、どのようなものでしょうか。また、この「捜査」の段階において、被害者は、どう対応すればよいでしょうか。これらを解説していきます。

第1.捜査とは
捜査とは、
・加害者を処罰できるか
・加害者にどのような処罰を科すか
を適切に判断することを最終的な目的として、必要な証拠を収集し、事故の発生状況などを明らかにするために実施される一連の手続のことです。第2.捜査の内容
捜査では、以下のようなものが実施されます。
交通事故の状況によっては、実施しない項目があったり、他にも追加して実施するものもあります。
1.実況見分
警察は、事故現場において、以下のような対応をします。
①事故現場の形状や事故現場に残された痕跡を写真撮影したり、位置関係を計測する。
②交通事故の当事者(加害者・被害者)や目撃者から、交通事故が発生した当時の状況について説明を受ける。
これらの事故現場において実施される捜査を『実況見分』といい、内容を記録した書面を『実況見分調書』といいます。
この実況見分調書は、加害者に対して損害賠償請求を行うとき、過失割合を決める基本的な資料として用いられる重要書類です。
1.実況見分
2.映像データの入手
現代社会では、多くの車にドライブレコーダーが搭載されています。このドライブレコーダーで撮影された映像は、事故の発生状況を客観的に明らかにする重要な証拠です。
これ以外にも、大規模な交差点、商業施設(ショッピングセンター・コンビニなど)、金融機関などには防犯カメラが設置されていることが多く、事故の発生状況が映っていることがあります。
警察は、これらの映像を入手して、正確な事故状況を解明しようとします。
2.映像データの入手
3.速度の解析
事故現場や車両に残された痕跡、映像データなどを解析して、車両の走行速度を明らかにします。
3.速度の解析
4.事情聴取
交通事故の当事者(加害者・被害者)や目撃者から、事故の発生状況などを聴取します。聴取された内容は、供述調書にまとめられます。
4.事情聴取

第3.検察官による捜査・処分
最初に捜査を行うのは警察です。そして、一通りの捜査を終えると、警察は、事件を検察官に引き継ぎます。これを「送致」といいます。
検察官は、加害者の事情聴取などの追加の捜査を行います。警察の捜査が不十分だと判断すれば、警察に追加捜査を指示することもあります。
第3.検察官による捜査・処分
 
第4.被害者の対応
では、捜査の段階で、被害者はどのように対応すべきなのでしょうか。
これから詳しく解説します。
1.捜査への協力
警察・検察が実施する捜査に、できる限り協力することが重要です。
被害者やその家族に対し、
・診断書の提出
・事情聴取への対応
などが求められるので、しっかり対応してください。
事情聴取では、被害者の状態を詳しく伝えるとともに、交通事故の被害によって、被害者や家族の生活にどんな影響が生じたのかを詳しく伝えてください。
1.捜査への協力
2.積極的な情報の提供
事故後の早い段階で、被害者やその家族が提出する診断書には、
①傷病名
②治療期間の見込み
が記載されています。
しかし、受傷直後に作成された診断書ですから、多くの場合、治療期間について「加療2か月を要する見込み」などと大まかな期間しか記載されていません。
捜査が進んでから、あらためて治療期間や後遺障害が残存する見込みの有無などについて医療機関への照会が行われる場合もありますが、照会がなされずに手続が進むこともあります。
被害者の状態を詳しく説明するとともに、新たな診断書を提出するなどして、実際の治療期間・後遺障害を考慮して処分を決めてもらえるように対応することが重要です。
2.積極的な情報の提供
3.処罰感情の説明
⑴処分の決定に際して考慮される要素
検察官は、加害者を起訴するか、不起訴処分とするかを判断するにあたって、いろいろな事情を考慮します。主に考慮される要素は以下の通りです。
・事故態様が悪質か
・被害結果が重大か
・加害者に前科前歴があるか
・加害者が十分に反省しているか
これらの事情に加えて、考慮されるのが、
・被害者やその家族の処罰感情
なのです。
⑵処罰感情とは
処罰感情とは、被害者やその家族が、「加害者にどの程度の処罰を科すことを望んでいるのか」というお気持ちのことです。
この処罰感情には、以下の3種類があります。
①厳重な処罰を望む
重く処罰して欲しいという気持ちのことです。
②法律に則った処罰を望む
他の同等の事案と同じように処罰してもらえればよいという気持ちのことです。
③寛大な処分を望む
軽く処罰してもらってよいという気持ちのことです。
⑶処罰感情の重要性
交通事故のなかには、多くの事情を考慮しても、起訴すべきか、不起訴処分にすべきかが微妙な事案もあります。このような事案では、被害者の処罰感情によって、検察官の判断が変わる可能性があります。
要するに、被害者が「厳重な処罰」を望んでいれば、加害者を「起訴する」という結論になる可能性が高くなります。これに対し、「法律に則った処分」や「寛大な処分」を望んでいれば、「不起訴処分」になる可能性が高まります。
被害者やその家族の事情聴取において、処罰感情について尋ねられるはずですから、事前に十分に検討しておいてください。そして、「加害者を起訴して欲しい」と考えているのであれば、『厳重な処罰を望みます』と伝えるべきです。
⑶処罰感情の重要性

第5.まとめ
捜査段階の手続と対応について解説しました。
捜査は、事故直後から始まります。被害に遭った直後という状況において、冷静に判断することは難しいと思います。正しい方針を決めるため、積極的に弁護士に相談されることをお勧めします。

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