高次脳機能障害
後遺障害等級:1級1号
解決:平成25年12月4日判決
裁判所:広島地方裁判所
【事案の概要】
被害者は、原動機付自転車に乗って、国道の左端を走行していましたが、先行していた自動車が進入禁止の道路に入ろうとして左折したため、衝突しました。
この衝突によって、被害者は、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、脳挫傷などの傷害を負ってしまい、四肢運動障害・言語障害・高次脳機能障害などの後遺障害が残り、常に介護が必要な状態になってしまいました。
後遺障害等級 | この事案では、当初、別表第一第2級1号が認定されていました。 この後、当事務所が依頼を受けたのですが、診断書やご家族からの聴き取りを検討した結果、適正な後遺障害等級が認定されていないと判断しました。 このため、主治医の意見をあらためて確認した後、異議申立の手続をとりました。 この結果、見込みどおり、 別表第一第1級1号 と認定されました。 |
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裁判の争点 | 本件で争点となったのは、主に、 ・後遺障害等級 ・将来介護費の額 ・自宅改造費の額 ・慰謝料の額 ・過失割合 でした。 自宅改造費の額については、建築士の意見書を提出し、 また、過失割合について、保険会社は、工学鑑定の専門家の意見書を提出し、被害者の過失が70%もあると主張してきましたので、こちらも工学鑑定の専門家に事故状況の検討を依頼し、被害者の過失割が小さいことを主張しました。 |
裁判所の認定 | 1 後遺障害等級・将来介護費 この点について綿密な立証を行うため、 ・ご家族が作成した陳述書 ・被害者が入所していた身体障害者支援施設の職員の陳述書 ・主治医の意見書 ・介護に関する文献 を提出し、被害者の障害の程度が重篤であること、必要な介護の内容が広範にわたっていること、介護の負担が大きいことについて詳しく主張・立証を行いました。 この結果、後遺障害等級は、自賠責保険の最終的な認定のとおり、『別表第一第1級1号』と認定してもらうことができました。 また、将来介護費については、身体障害者支援施設への入所が続くことを前提とされましたが、入所費として月額約43万円、近親者の介護費として週2万5000円が将来介護費として認定されました。2 自宅改造費 本件では、自宅での介護に移行する可能性があったこと、家族と触れ合う機会を確保する必要があることから、中古物件を購入し、障害者が生活できるように改造工事を実施しました。 裁判所は、自宅購入費の約3割に相当する666万円、改造費として約720万円、合計約1380万円を認定してくれました。3 慰謝料の額 本件では、 入通院慰謝料 400万円 後遺障害慰謝料 2800万円 合計 3200万円 が認定されました。 なお、これに加えて、近親者の慰謝料として、 夫 500万円 子 300万円 が認められています。4 過失割合 本件事故について、被告(加害者)は、被害者にも10%の過失があると主張しました。 しかし、被害者側は、 ・進入禁止の規制違反 ・進路変更の合図の遅れ ・徐行義務違反 などを主張した結果、裁判所は、被害者が本件事故を避けることは不可能だったと認め、被害者の過失はないと認定してくれました。 |
弁護士のコメント | 1 後遺障害等級 当初、別表第一第2級1号が認定されていました。 ご依頼を受けた後、診断書などの資料の検討、ご家族からの聴き取りを行った結果、被害者の後遺障害等級はもっと重度と認定されるべきと判断しました。 速やかに異議申立の手続をとり、提訴前の段階で、別表第一第1級1号の認定を得いてたことが、その後の訴訟においても大きな意義がありました。 その後の裁判でも、後遺障害等級が争点になりましたが、 ・ご家族が作成した陳述書 ・被害者が入所していた身体障害者支援施設の職員の陳述書 ・主治医の意見書 などに基づいて、被害者の障害の程度が重篤であること、必要な介護の内容が広範にわたっていること、介護の負担が大きいことについて綿密な主張・立証を行いました。 この結果、後遺障害等級は、自賠責保険の最終的な認定のとおり、『別表第一第1級1号』と認定してもらうことができました。 徹底的な主張・立証を行ったことが奏功した事案でした。 2 将来介護費 高額な将来介護費を認定してもらうためには、裁判所に、介護の内容や大変さを正しく把握してもらうことが重要です。このため、この事案では、以下の工夫をしました。 ・近親者に、介護の内容やの大変さを詳細にまとめた陳述書を作成してもらう。 ・身体障害者支援施設の職員にも、介護の内容やの大変さを詳細にまとめた陳述書を作成してもらう。 ・主治医に、被害者の症状や介護内容の妥当性について意見書を作成してもらう。 ・医学文献などを用いて、一般的な介護の手順、注意点を明らかにする。 また、近親者の尋問も実施し、直接、裁判所に介護の実態を訴えました。 この様な努力が実った結果、裁判所は、施設入所費として月額約43万円、近親者の介護費として週2万5000円を認定してくれました。施設入所を前提としたケースとしてはかなり高額な将来介護費を認定してもらうことができたと考えています。 3 過失割合 保険会社は、被害者にも10%の過失があると主張してきました。 重篤な後遺障害を残した事案では、過失割合が10%違うだけで、受領できる賠償金が1000万円単位で変わってしまいます。受け取る金額が大きく減ると、被害者の将来の生活・介護に影響してしまいます。 そのため、弁護士には、事故状況を正確に把握した上で、適確に主張をする力量が求められます。 この事案では、事故現場を見に行って周囲の状況を確認しました。また、刑事記録を入手し、記載されている事情を詳細に検討しました。 この様な対応をした結果、裁判所は、被害者には過失が認められないと判断してくれました。 4 まとめ 裁判を選択すれば、解決までに時間がかかりますし、手間も増えます。 しかし、被害者や家族が、将来にわたって経済的な不安を持たずに生活できるようにするためには、安易に妥協して示談で終わらせず、裁判によって解決を図ることを選択することも必要だと思います。 そして、本件では、しつこいくらいに主張・立証を尽くした結果、十分な成果が得られました。 |