高次脳機能障害
後遺障害等級:2級1号
解決:平成31年4月16日和解
裁判所:名古屋地方裁判所管内
【事案の概要】
被害者は、徒歩で道路を横断しようとしていたところ、直進してきた自動車に衝突されました。
この事故によって、被害者は、脳挫傷、びまん性脳損傷、びまん性軸索損傷などの重大な傷害を負いました。そして、『高次脳機能障害』、『四肢・体幹の運動障害』などの重篤な後遺障害が残ったため、日常生活において、「見守り」と「声かけ」が欠かせない状態になってしまいました。
後遺障害等級 | この事案では、被害者が『高次脳機能障害』、『四肢・体幹の運動障害』などの重篤な後遺障害を負っていたため、 別表第一第2級1号 と認定されました。 |
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裁判の争点 | 別表第一第2級1号という重篤な後遺障害等級が認定されたため、できる限り、裁判で解決を図りたいと考えました。 また、被害者にも過失があると認定されることが見込まれた上、ご家族の自動車保険に本件事故に適用できる人身傷害保険がありました。訴訟を提起すれば、人身傷害保険から「訴訟基準差額」による支払を受けられ、過失相殺による減額分を全て穴埋めできます。 このため、ご家族にも了承を得て、訴訟による解決を選択しました。 訴訟における争点は、多岐にわたりましたが、主な争点は、 ・後遺障害等級 ・将来介護費の額 ・逸失利益における基礎収入の額(男女計の平均賃金を採用できるか) ・近親者固有の慰謝料(妹に慰謝料が認められるか) ・過失割合 でした。 |
裁判所の認定 | 1 後遺障害等級 自賠責保険は、被害者の後遺障害等級を「別表第一第2級1号」と認定していました。 これに対し、被告(保険会社)は、被害者の症状が改善しているとして、別表第二第3級3号と評価するのが相当であると主張してきました。裁判所を通じて取り寄せた病院のカルテなどに、被害者の状態について前向きな記載があったことを根拠にしたのです。 原告は、自賠責保険が認定した後遺障害等級が妥当だと反論するため、家族からの説明だけでなく、被害者が通っていた施設の職員の説明も詳細にまとめ、被害者の生活状況、能力の程度、必要な介護の内容などを明らかにしました。それに基づいて、被害者は、日常生活における動作はできるが、多種多様な障害があるため、日常生活のあらゆることに見守り・声かけが必要な状態であると主張しました。 この結果、裁判所に、自賠責保険の認定と同様、別表第一第2級1号と認定してもらうことができました。 2 将来介護費 3 逸失利益における基礎収入の額 4 近親者固有の慰謝料 5 過失割合 |
人身傷害保険の請求 | 裁判は、和解によって終了しました。 その後、人身傷害保険を請求することによって、過失相殺によって減額された損害額の全額(約2700万円)を補填してもらうことができました。 |
弁護士のコメント | この事案では、被害者に過失が認められると見込まれました。このため、人身傷害保険によって過失相殺による減額分を穴埋めするため、訴訟を提起することを選択しました。 訴訟後に人身傷害保険の請求を行ったところ、訴訟において減額された額の全てを支払ってもらいました。この点では、当初の目論見どおりに進んだことになります。 但し、訴訟を提起することにはリスクも伴います。本件でも、後遺障害等級という根本的な部分が争点になり、自賠責保険の認定を維持するために多くの労力を費やすことになりました。 それでも、自賠責保険が認定した後遺障害等級が維持された上、別表第一第2級1号という後遺障害等級としては比較的高額な将来介護費を認定してもらうことができました。過失相殺による減額分が穴埋めできたことも含め、十分な解決を勝ち取ることができました。 |