遷延性意識障害
後遺障害等級:1級1号
解決:平成30年11月27日判決
裁判所:神戸地方裁判所伊丹支部
【事案の概要】
被害者は、自転車に乗り、青信号に従って、自転車横断帯が併設されている横断歩道上を走行し、道路を横断しようとしていました。この時、青信号に従って左折してきた自動車に衝突されました。
この事故によって、被害者は、左急性硬膜下血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折などの重大な傷害を負いました。そして、遷延性意識障害などの重篤な後遺障害が残り、常に介護が必要な状態になってしまいました。
後遺障害等級 | この事案では、被害者が『遷延性意識障害』という重篤な後遺障害を負ったため、 別表第一第1級1号 と認定されました |
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裁判の争点 | 別表第一第1級1号という重篤な後遺障害等級が認定されたこと、ご家族も裁判による解決を望んでいたことから、訴訟を提起しました。 訴訟における争点は、多岐にわたりましたが、主な争点は、 ・過失割合 ・付添看護費の額 ・将来介護費の額 ・逸失利益における基礎収入の額 ・近親者固有の慰謝料。中でも兄姉に慰謝料が認められるか。 でした。 これらの争点について、双方が詳細な主張を出し合った結果、訴訟の期間は、約3年にも及びました。 |
提訴前に 人身傷害保険を 請求しなかった理由 |
本件では、過失割合が主要な争点になると見込まれました。そして、ご家族が契約していた自動車保険に、本件で利用可能な人身傷害保険が付帯されていたため、提訴前に人身傷害保険の請求しておくことも可能でした。 しかし、被害者の過失は軽微で、0%となることも見込まれました。この場合に、人身傷害保険の請求を先行させてしまうと、裁判で認定される賠償金の額が少なくなって、被害者に不利益が生じる可能性が高いと考えられました。 そこで、提訴前には人身傷害保険を請求しないことにしました。 結果的に、被害者の過失は0%と認定されたため、人身傷害保険を請求する必要はありませんでした。 |
裁判所の認定 | 1 過失割合
被告は、被害者にも10%の過失があると主張してきました。 2 付添介護費の額 事故によって重篤な怪我を負ったため、被害者は、2年以上もの期間、入院治療を受けました。 3 将来介護費 被害者は、遷延性意識障害などの重篤な後遺障害を負ったため、日常生活において自分でできることはなく、日常生活のあらゆることに、24時間態勢の介護が必要な状態になりました。 4 逸失利益における基礎収入の額 事故当時、被害者は、14歳で、中学校に在学中でした。このため、いわゆる『年少女子』に該当するとして基礎収入を男女を併せた全労働者の平均賃金とすべきであると主張しました。 5 近親者固有の慰謝料 民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と定めています。 |
弁護士のコメント | 本判決の特徴の1つは、かなり高額な付添看護費・将来介護費が認められている点だと思います。高額な付添看護費・将来介護費を認定をしてもらうため、 ご家族から、事故後の経過、被害者の現状などを詳細に聴き取る カルテの内容の精査 主治医から、被害者の状態、介護で注意すべきポイントを聞き取る などの準備をして、 日常生活の全般について介護が必要であること 24時間態勢の介護が必要であること 介護の負担がとても重いこと 介護サービスを利用する必要があること などについて、詳細な主張立証を行いました。 介護に関する医学文献、将来的な介護費の変動に関する論文や資料などを数多く提出し、介護内容や態勢が、この被害者に特別なのではなく、重篤な後遺障害であれば一般的に必要とされていること立証しました。また、兄姉の慰謝料については、「条文に記載されていないから認められない」という流れがあることに疑問を感じていました。 そこで、最終的には、ご兄弟にも尋問に応じていただき、直接、気持ちや将来の介護に関する考えを述べてもらいました。これらの対応の結果、裁判所は、高い水準の判決を出してくれました。解決に至るまでに長い期間がかかりましたが、十分に納得できる解決が得られました。 近親者は、大変な思いで介護を続けながら、裁判のために資料の収集や状況の説明に協力していただくなど、多大な努力を続けてこられました。被害者に対する愛情を持ち続け、努力を続けた結果、よい解決を勝ち取ることができたのだと思います。なお、本件では、被害者が事故後に成人になったため、ご家族からの依頼を受け、成年後見の手続も行いました。 交通事故に関連するあらゆる手続をサポートすることで、被害者やそのご家族の負担を軽くできたと思います。 |