解決事例

その他の事案 Cases5

2024.11.13

その他の事案 1下肢の1関節の機能障害・醜状障害・PTSD
後遺障害等級:11級
解決:令和6年5月10日和解
裁判所:静岡地方裁判所 富士支部

【事案の概要】
右下腿デコルマン損傷による右足関節の機能障害(別表第二第12級7号)、右下腿の醜状障害(同12級相当)・PTSD(同14級9号)が併合11級に認定された被害者につき、提訴した結果、既払金を除いて2900万円を受領した事案

提訴までの経過 1 労災保険
本件事故は、出勤途中に発生したため、労災保険を適用する手続をとりました。
通勤災害・業務災害を問わず、労災保険が適用できるのであれば、必ず適用すべきです。
労災保険が適用されれば、休業補償に20%の上乗せ金(特別支給金)が支給されたり、後遺障害が残った場合に障害年金や一時金などの支給を受けられるなどのメリットがあるからです。死亡事故の場合でも、遺族年金や葬祭料の支給を受けられます。
本件でも、労災保険の適用が認められたため、治療費の支払、休業給付の支給などを受けることができ、依頼者の療養生活を支える基盤を確保できました。
2 自賠責保険
被害者は、右下腿デコルマン損傷により、多様な後遺障害を残していました。
自賠責保険に対して被害者請求の手続を行った結果、被害者の後遺障害は、
①右足関節の機能障害(別表第二第12級7号)
②右下腿の醜状障害(別表第二第12級相当)
③PTSD(別表第二第14級9号)
と認定され、これらを併合して、別表第二併合11級に認定されました。
11級に認定された結果、被害者は、自賠責保険金として331万円を受領しました。
3 示談交渉
当初、示談交渉を行い、保険会社の見解・対応を見極める方針を立てました。
そこで、こちらで損害額を計算し、請求金額をまとめて、保険会社に提示しました。
それに対する保険会社の回答は、
・ 労働能力喪失率を12級相当とする
・ 過失割合を50:50とする
などの内容となっており、「支払える金額はない」という結論でした。
私は、提訴すれば相当程度の賠償金を受け取れると見込んでいました。また、本件に適用される人身傷害保険があったため、訴訟によって解決すれば、ご本人の過失割合を補填することが可能になります。このため、このような回答を受け入れるつもりはなかったので、ご本人と協議した上で、提訴する方針を決めました。
裁判の争点 本件で主な争点となったのは、
過失割合
労働能力喪失率
でした。
裁判所の認定 1 過失割合
被告(保険会社)は、過失割合について加害者20:被害者80と主張していました。
しかし、この主張は、あまりにも被害者の過失を大きいと主張していると感じました。
交差点の形状、事故に至るまでの自転車の動き、トラックからの見通しの状況などについて詳しく主張した上で、本件事故の過失割合について加害者90:被害者10と主張しました。
その結果、裁判所は、本件事故の過失割合について、加害者85:被害者15と判断してくれました。
2 労働能力喪失率
被告(保険会社)は、被害者の労働能力喪失率について、
・ 醜状障害については労働能力の喪失を認めるべきではないこと
を理由として、労働能力喪失率は、右足関節の機能障害(別表第二第12級7号)のみを前提とした14%と認定すべきと主張しました。
この点について、醜状障害についても労働能力の喪失を認めるべきことを主張しましたが、右下腿という位置も考慮された結果、労働能力の喪失は認めてもらえませんでした。
しかし、醜状障害による労働能力の喪失が認められなかった反面、最終的な和解金額の算定において、考慮されることが明示されました。
3 総額
裁判所は、15%の過失相殺によって約850万円を減額しましたが、最終的に約700万円の調整金を加算した上で2900万円の和解金を提示しました。
人身傷害保険の請求 和解が成立した後、人身傷害保険の請求を行いました。
弁護士のコメント 1 裁判所の認定
裁判所が作成した和解案は、過失割合、労働能力喪失率などの認定は、こちらの主張を十分に考慮したものになっており、概ね納得できるものでした。
示談交渉において、保険会社は、被害者の過失割合を過大に捉え、追加支払を拒んできました。
訴訟をしたことによって、十分な金額の賠償金を受け取ることができたので、結論として訴訟を提起して解決することになってよかったと思います。
2 人身傷害保険
本件事故に適用できる人身傷害保険があったため、過失相殺によって減額された部分を穴埋めできました。
この点も訴訟をしたことの効果であり、訴訟を選択した意味があったことになります。
3 最後に
解決までに時間はかかりましたが、最終的に、十分な額の賠償金を受け取ることができました。
いくつかの局面において、適切な対応したことの成果だと考えています。
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