解決:令和6年11月12日和解
裁判所:大阪地方裁判所
【事案の概要】
被害者は、自動車に乗って道路の左端を走行していましたが、道路を横断するため、右に進路を変更しました。そこに、後方から進行してきていた自動車が衝突しました。
この事故によって、被害者は、頭部と全身に強い衝撃を受け、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫、胸部・腰部の多発骨折などの怪我を負った結果、死亡しました。
刑事手続の対応 | 1 検察官への対応 事件が検察庁に送致された後、担当する検察官と連絡を取り、捜査状況や加害者を処分する方針などを確認しました。 最終的に、検察官は、加害者を起訴するのではなく、不起訴処分とする方針になりました。この方針について、ご遺族は、納得できないとのご意向を示されました。そこで、検察官に対し、処分方針とその理由を説明する機会を設けるように依頼し、実際に説明を受けました。 検察官に対しては、繰り返し、ご遺族が納得していないことを伝えましたが、検察官の方針は変わらず、加害者は不起訴処分となりました。 2 検察審査会への申立 ご遺族は、加害者が不起訴処分とされたことが納得できず、強い不満を持っていました。このため、検察審査会に対し、不起訴不当の議決をしてもらうため、検察審査の申立を行うことにしました。 まず、加害者が不起訴処分になった後、すぐに不起訴記録を入手しました。この不起訴記録から得られた情報に、検察官から説明を受けた情報を加え、検察審査会に検討してもらうべき事項を審査申立書に記載していきました。 不起訴相当という結論になってしまいましたが、できる限りの対応をしたことで、ご遺族に納得して頂くことができたと思います。 |
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自賠責保険金の請求 | 1 自賠責保険金の請求について 死亡事故では、「被害者の死亡」という事実が明確です。死亡診断書(死体検案書)によって、「被害者が死亡した事実」と「交通事故が死亡の原因であること」が証明できれば、自賠責保険金の請求が可能になります。 この事情から、多くの法律事務所では、死亡事故の依頼を受けた場合、早い段階で自賠責保険金を請求するという対応をしていると思います。 これに対し、だいち法律事務所では、死亡事故において自賠責保険金を請求するか否かは、十分に事案を検討してから決めるようにしています。 自賠責保険金の請求が可能であることと、すぐに自賠責保険金を請求すべきか否かは、全く別の問題であり、案件ごとの事情を考慮して決めるべきだからです。この点について、コラム(死亡事故①自賠責保険の請求)で詳しく説明していますので、ご覧ください。 2 本件での対応 本件では、幾つかの事情を事情を検討した結果、まず自賠責保険金の請求手続を行うこととしました。 このような対応を選択したのは、以下の事情によって、訴訟における認定額が自賠責保険金の支払額を下回る可能性があり、事前に自賠責保険金を確保しておく必要があったためです。 ① 被害者にも過失が認められると想定された この事故では、被害者が乗っていた自転車が進路を変更していたことが分かっていました。このため、被害者にも過失が認められることが十分に想定されました。 被害者に認定される過失の割合によっては、自賠責保険金を超える賠償金を確保できなくなる可能性がありました。 ② 被害者が高齢だった 被害者は、死亡時に88歳でした。 この年齢のため、認定される逸失利益の額が少なくなると見込まれまていました。 この点からも、自賠責保険金を超える賠償金を確保できなくなる可能性がありました。 |
損害賠償請求の手続 | 1 裁判の争点 この裁判における主な争点は、以下のとおりでした。 ① 生活費控除率 被害者の収入は、老齢年金のみでした。 この老齢年金について、どの程度の生活費控除率を認定するかが争いになりました。 ② 慰謝料 死亡慰謝料と遺族固有の慰謝料の金額が争いになりました。 ③ 事故態様(過失割合) この事故では、被害者が乗っていた自転車が進路を変更していたことが分かっていました。このため、被害者に認められる過失の割合が争いになりました。 2 裁判所の和解案 ① 生活費控除率 裁判所は、老齢年金の生活費控除率を50%とする和解案を提示しました。 ② 慰謝料 裁判所は、死亡慰謝料を2000万円、遺族固有の慰謝料を600万円、合計で2600万円の慰謝料を提示してくれました。 ③ 過失割合 本件事故の過失割合について、事故類型を前提として、裁判所は、被害者の過失が25%と評価してくれました。 3 和解案に対する対応 当事者双方が裁判所の和解案を受け入れたため、和解が成立しました。 |
弁護士のコメント | 1 ご遺族の思い 被害者に過失が認められる場合であっても、身内の方を失ったご遺族は、加害者が処罰を受けないことに納得できない気持ちを持つのが通常だと思います。本件では、このお気持ちを受け止めた上で、検察官との折衝、不起訴処分とする理由の説明を受ける機会の設定、検察審査会への申立などを行いました。 結果として、ご遺族が望むように、加賀者を起訴してもらうことはできませんでしたが、できる限りの対応は行いました。 この対応によって、ご遺族に納得して頂くことができたのではないかと思います。 2 解決の内容 損害賠償請求訴訟を提起した結果、既に受領していた自賠責保険金に加え、約800万円の賠償金を追加で受け取ることができました。 被害者の年齢などを考慮すれば、十分な賠償金の額になったと考えています。 3 最後に だいち法律事務所は、ご依頼を頂いた当初から、ご遺族のお気持ちに寄り添った対応を心がけました。そして、取り得る対応を尽くしました。 ご遺族に納得して頂ける結果を得ることができ、喜んで頂くことができました。こちらも十分な成果を得られたことを嬉しく思っています。 |