解決事例

高次脳機能障害 Cases24

2025.11.20

後遺障害等級:2級
解決:令和7年4月22日和解
裁判所:鹿児島地方裁判所

【事案の概要】
被害者は、事故時10歳(小学校4年生)でしたが、自転車を運転して歩道上を走行していましたが、歩道から道路に出て、反対側に横断しようとしました。
加害者は、自動車を運転していましたが、進行方向の安全確認を怠った結果、自動車を被害者に衝突させてしまいました。
この衝突によって、被害者は、外傷性くも膜下出血・びまん性脳損傷・広汎性軸索損傷などの怪我を負い、注意障害・記憶障害・遂行機能障害・脱抑制などの高次脳機能障害、振戦・歩行失調などの身体障害などが後遺障害として残存しました。このため、被害者は、日常生活において、介助・見守り・声かけが欠かせない状態になってしまいました。

後遺障害等級 1 当初の法律事務所の対応
当初、地元の法律事務所に依頼していましたが、認定される後遺障害等級について、「せいぜい5級が限度」との説明を受けていたようです。
2 だいち法律事務所への相談
ご両親がその法律事務所の対応に不満を持ったため、だいち法律事務所に相談がありました。
ご両親から被害者の症状を詳細に聴取するとともに、被害者本人にも面会して状態を確認したところ、被害者の症状は重篤であり、日常生活において介助・見守り・声かけが必要な状態だと判断しました。つまり、後遺障害等級として「別表第一第2級1号」が認定される見込みだと考えました。
3 だいち法律事務所の対応
依頼を受けた後、だいち法律事務所は、自賠責保険の被害者請求を行う準備を開始しました。
準備の内容は、主に次の通りです。
①初診病院に「頭部外傷後の意識障害についての所見」を作成してもらいました。
②主治医に「後遺障害診断書」「神経系統の障害に関する医学的意見」を作成してもらいました。
③ご両親に「日常生活状況報告」を作成してもらった上で、被害者の状態を詳しく説明するため、30ページ以上にわたる詳細な陳述書を作成しました。
④養護学校(特別支援学校)の担任にも学校での生活状況を詳細にまとめてもらいました。
これらの準備をした上で、被害者請求(17条請求)の手続を行った結果、被害者が重篤な後遺障害を負っていることが認められ、
別表第一第2級1号
と認定してもらうことができました。
訴訟を選択した事情 自賠責保険により「別表第一第2級1号」と認定された後、ご両親と協議した上で、損害賠償請求訴訟を提起することにしました。
訴訟を選択した理由は、以下のとおりです。
①後遺障害等級が「別表第一第2級1号」という重度の認定になったため、訴訟によって解決した方が多くの損害項目について、高額な認定を得られる可能性が高いと考えられた。
②交通事故の発生から長い期間が経過していたため、提訴すれば、遅延損害金だけでも相当の金額か支払われることが見込まれた。
③被害者にも過失があることが否定できない事案であることに加え、ご両親の自動車保険に本件事故に適用できる人身傷害保険があったため、訴訟を提起すれば、人身傷害保険から「訴訟基準差額」による支払を受けられ、過失相殺による減額分を穴埋めできると見込まれた。
訴訟における争点 本件において争点となったのは、以下の点です。
中でも主たる争点となったのは、★のある項目でした。
★後遺障害等級
将来介護費の額
逸失利益の金額
慰謝料の金額
★過失割合
裁判所の認定 1 後遺障害等級
⑴ 高次脳機能障害の後遺障害等級の重要性
被告(加害者)は、高次脳機能障害の後遺障害等級を争ってきました。
この事案では、高次脳機能障害が2級と認定されました。
これに対して、被告は、被害者の高次脳機能障害について、「7級が相当である」と主張してきました。
被告が主張するように後遺障害等級が下がってしまうと、以下のような影響が生じてしまいます。このため、後遺障害等級は、とても重要な争点になりました。
①労働能力喪失率が100%から56%となり、被害者に労働能力が残存すると認定され、受け取れる賠償金の額に大きく影響することになる。
②介護が不要と評価されるため、将来介護費が認められなくなる。
③後遺障害慰謝料が低額となる。
⑵ 被告の主張・立証
被告は、裁判所を通じて、被害者が治療を受けた各病院の診療記録(カルテ)を取り寄せました。そして、これらの診療記録を証拠として提出した上で、保険会社の顧問医が作成した意見書を提出してきました。
本訴訟では、2名の顧問医が、3通の意見書を作成しました。診療記録(カルテ)の細かな記述などを問題にしていたため、この意見書の分量は、それぞれ42ページ・39ページ・19ページと膨大な分量になっていました。
⑶ だいち法律事務所の対応
まず、顧問医の意見書は、診療記録(カルテ)の記述を引用して作成されていました。つまり「○○ができる」と記述されていれば、問題なく○○ができるのだから後遺障害の程度は軽いと主張していました。
しかし、診療記録(カルテ)の記述は、被害者の後遺障害が重篤で、介護が行われていることを前提として記述されていました。この前提を考慮せずに、記述だけで評価しても正しい評価ができるわけがありません。この点などを主治医の意見書にまとめてもらって、反論しました。
また、診療記録(カルテ)の記述だけで実態を理解してもらうためには、顧問医の意見書に対して詳細な反論をする必要がありましたが、あまりにも膨大な作業になるため、現実的ではありませんでした。そこで、被害者の生活状況を撮影したビデオ映像を証拠として提出し、効果的に反論することにしました。そこで、ご両親に協力してもらって被害者の日常生活の様子を撮影してもらうとともに、カメラマンにも撮影を依頼して問題行動などを撮影しました。このビデオ映像を提出し、ビデオ映像に基づいた反論を行いました。
⑷ 結果
裁判所は、双方の主張と立証を考慮して、後遺障害等級は、自賠責保険が認定した通り、「別表第一第2級1号」が妥当と判断してくれました。
ビデオ映像によって、被害者の後遺障害が重篤であると認識してもらうことができました。また、カルテの記述は被害者の障害が重篤であることを前提としていることを理解してもらうことができたと考えています。
2 将来介護費
被告は、被害者に対して将来介護費を認めるべきではないと主張していました。
これに対して、だいち法律事務所では、
・ 高次脳機能障害が重度である
・ 日常生活において介助・見守り・声かけが必要である
ことを根拠として、将来介護費を認めるべきことを主張しました。
この結果、裁判所は、将来介護費として、以下のとおりの金額を認めてくれました。後遺障害等級が「別表第一第2級1号」に該当する事案としては、かなり高額な金額を認定してもらうことができました。ビデオ映像などによって、被害者の後遺障害の内容、必要な介護の内容、介護の大変さなどを効果的に立証ができたことが、このような高額な認定のに繋がったと考えています。
①特別支援学校に在学中
1日8000円
②特別支援学校を卒業後
1日1万5000円
3 逸失利益
被害者は、就学中だったことから、基礎収入として賃金センサスが採用されました。
後遺障害等級について「別表第一第2級1号」と認定されたため、労働能力喪失率は100%となりました。
また、労働能力喪失期間は、18歳から67歳までの49年間と認定されました。
適切な認定が得られたと考えています。
4 慰謝料の金額
本件では、以下の金額の慰謝料が認められました。
「別表第一第2級1号」を前提とする適切な金額が認定されたと考えています。
入通院慰謝料      360万円
後遺障害慰謝料    2370万円
近親者固有の慰謝料   400万円
合計         3130万円
5 過失割合
被害者は、自転車を運転して歩道上を走行していましたが、歩道から道路に出て、反対側に横断しようとしました。
加害者は、被害者が自動車の直前で前方に出てきたと主張し、被害者の行為に主要な原因があることから、被害者の過失は75%であると主張しました。
裁判所は、被害者が、道路を横断するに当たって、後方の安全確認を怠ったため自動車の存在に気が付かず、進路変更の合図を出すこともせずに自動車の直前において車道に進入したことに過失が認められるとしました。
これに対し、加害者について、事故現場の30m以上も手前で、自転車の存在のみならず、その運転者が小学生であることまで認識しており、事故の発生を予測することも、その予測に基づいて事故発生を防止するための措置を取ることも十分に可能だったと指摘し、にもかかわらず、自転車の側方を通過するに際して減速などの措置を講じることなく漫然と自動車を走行させている点に過失があるとしました。
その上で裁判所は、事故発生に係る過失割合は、被害者45%、加害者55%と認定しました。
人身傷害保険 裁判は、和解によって終了しました。
被害者にも過失が認められましたが、ご両親が加入していた自動車保険に本件事故に適用できる人身傷害保険がありました。この人身傷害保険には「倍額条項」があり、「別表第一第2級1号」に該当する場合には、支払限度額が2倍になることになっていました。
このため、本件では、支払限度額が2倍になり、人身傷害保険の支払によって、過失割合によって減額された金額の大部分を(6000万円)を補填してもらうことができました。
弁護士のコメント 1 後遺障害等級
自賠責保険は、被害者の後遺障害等級を「別表第一第2級1号」と認定していました。
これに対し、被告(保険会社)は、自賠責保険の認定に疑義を唱え、7級と評価するのが相当であると主張してきました。
こちらは、自賠責保険が認定した後遺障害等級が妥当であることを立証するため、以下の対応を行いました。
①主治医の協力をえて、意見書を作成してもらう。
②複数の学校関係者の協力を得て、学校での生活状況を明らかにするための陳述書を作成してもらう。
③ご両親にも後遺障害の状態について説明してもらう。
④被害者の日常や学校での生活状況をビデオで撮影する。
これらの対応によって、裁判所は、自賠責保険の認定と同様、別表第一第2級1号と認定してもらうことができました。
被告(保険会社)の主張を十分に検討し、効果的に反論できるポイントを見出しました。その上で、必要な証拠を集め、適切に主張を行うことができたと考えています。
2 過失割合
過失割合も主要な争点でしたが、人身傷害保険があったため、ある程度は穴埋めできることは分かっていました。
このため、和解協議においては、過失割合よりも後遺障害等級を重視することにしました。
結果として、人身傷害保険によって、過失割合によって減額された金額の大部分を補填してもらうことができました。
3 ご両親の思い
事故後、ご両親は、付添看護や介護(介助・見守り・声かけ)を行うなど、被害者に対して献身的に対応してきました。長い期間にわたって重篤な高次脳機能障害を負った被害者への対応を続けることは、とても大変なことだったと思います。
だからこそ、ご両親は、被害者の高次脳機能障害について詳しく把握していました。また、被害者の将来の生活に備えて、できる限り多くの賠償金を得ておくことの重要性を認識していました。
ご依頼を頂いた後、被害者の症状などを詳細にまとめるような作業をお願いしました。これらも大変な作業だったと思いますが、ご両親は、しっかり対応してくれました。
その上で、自賠責保険の請求手続(後遺障害等級認定)、訴訟の提起などの手続を進めていきました。
ご両親の思い、ご両親から得た情報などを上手く汲み取って対応できたと思います。
4 まとめ
交通事故において損害賠償請求の問題を有利に解決するためには、適切な後遺障害等級を認定してもらうことが重要です。だいち法律事務所では、この点は妥協することなく、徹底して対応しています。
また、訴訟を選択すれば、解決までに時間がかかりますし、手間も増えます。後遺障害等級が争点になるというリスクも伴います。しかし、被害者やご両親が、将来にわたって経済的な不安を持たずに生活できるようにするためには、安易に妥協して示談で終わらせず、裁判によって解決を図ることを選択することも必要だと思います。
本件では、自賠責保険が認定した後遺障害等級が維持された上、「別表第一第2級1号」という後遺障害等級としては比較的高額な将来介護費を認定してもらうことができました。人身傷害保険によって過失相殺による減額分が穴埋めできたことも含め、十分な解決を勝ち取ることができました。
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