左母指MP関節尺側側副靱帯損傷
後遺障害等級:12級
解決:令和7年12月18日和解
裁判所:大阪地方裁判所
【事案の概要】
道路を直進していた原動機付自転車(原付)と、左に車線変更してきた普通乗用自動車が衝突した事故です。被害者は原付とともに転倒し、左手を地面についた際、左母指MP関節尺側側副靱帯を損傷してしまいました。この結果、左母指に関節可動域制限や疼痛が生じました。
自賠責保険は同靱帯の損傷を認めずに14級と認定しました。この認定に不服があるため、被害者は、訴訟において、同靱帯の損傷を原因とする関節可動域制限と疼痛が残存していることを主張し、主位的に10級、予備的に12級の認定を求めました。
| 受任に至る経過 | 1 当初の法律事務所の対応 当初、被害者は、他の法律事務所に対応を依頼していました。 その法律事務所は、後遺障害等級の認定のため、事前認定を選択し、任意保険会社に手続を委ねていました。結果として、左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷は認められず、14級が認定されていました。異議申立も行ったようですが、後遺障害等級の認定は変更されませんでした。 被害者は、自賠責保険による後遺障害等級の認定結果を不服として、さらなる異議申立などの対応を求めていたようですが、長期にわたって放置されたようです。 しばらく代理人が対応を放置した状況が続いたため、保険会社(加害者)は、被害者に対し、債務不存在確認請求訴訟を提起してきました。 2 だいち法律事務所への相談 被害者は、それまで依頼していた法律事務所の対応に不満を持つようになっており、債務不存在確認請求訴訟を提起されたことをきっかけに、以降の対応を依頼し続けることを断念しました。そして、次に依頼する弁護士を見つけるため、「だいち法律事務所」に相談を申し込んでこられました。 だいち法律事務所は、被害者から、「事故後の症状」や「前任者の対応」などを詳細に聴取した結果、これからとるべき対応を説明しました。 具体的には、以下のような内容を説明しました。 ①債務不存在確認請求訴訟を提起されている状況であっても、被害者請求によって異議申立を行うべきこと ②異議申立を行う前提として、主治医に意見書を作成してもらう必要があること ③主治医だけでなく、第三者の医師にも意見書を作成してもらうべきであること ④自賠責保険が認定を変更しない可能性があるが、反訴を提起した上で、裁判所に後遺障害の認定を見直してもらえる可能性を追求すべきこと この説明を行い、今後の対応を理解して頂いた結果、被害者は、だいち法律事務所への依頼を決断してくれました。 |
|---|---|
| 異議申立 | 1 異議申立の準備 依頼を頂いた後、だいち法律事務所は、被害者請求によって異議申立を行う準備を開始しました。 準備の内容は、主に次の通りです。 ①後遺障害診断書を作成した医師とは異なる「現在の主治医」に、左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷の有無などについて、意見書を作成してもらいました。 ②「第三者の医師」にも左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷が認められる旨の意見書を作成してもらいました。 ③入手した意見書の内容に基づいて、左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷を認めるべきという主張を記載した異議申立書を作成しました。 2 結果 これらの準備をした上で、被害者請求(17条請求)によって異議申立の手続を行いました。 しかし、自賠責保険は認定を変更せず、14級の認定のままでした。 すでに、前任者の時点で、14級という結論が2回も出されていたため、異議申立によって結論が変更されない可能性があることは想定内でした。債務不存在確認請求訴訟が提起されており、訴訟外の対応に費やせる期間が限られていたため、これ以降は訴訟手続での主張立証に専念していくことにしました。 |
| 訴訟における対応 | 1 後遺障害等級 自賠責保険に対する異議申立では結論が変わらなかったため、次の段階として、速やかに訴訟手続における対応を行うことになりました。 訴訟での主たる争点は、後遺障害の内容と認定すべき後遺障害等級でした。 だいち法律事務所は、左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷を原因として、関節可動域制限と疼痛が認められると主張した上で、 ①主位的に、左母指の関節可動域制限(10級7号) ②予備的に、局部に頑固な神経症状をのこすもの(12級13号) の認定を求めました。 左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷が認められるか否かによって後遺障害等級の認定が変更されるかが左右されるため、だいち法律事務所では、この点の主張立証に力を尽くしました。 具体的には、 ①後遺障害診断書を作成した医師に対して、同診断書に記載されていた可動域を測定したタイミングなどを照会し、回答を得ました。 ②再度、現在の主治医に対し、意見書の作成を依頼し、同靱帯の損傷が認められると診断するに至った根拠などを明らかにしてもらいました。 ③第三者の医師にも、再度、全ての画像データをチェックしてもらい、同靱帯の損傷が認められる旨の意見書を作成してもらいました。 これらの資料に基づいて詳細な主張立証を行った結果、裁判所は、左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷の存在を認めてくれました。この靱帯損傷が原因となって、左母指に疼痛が発生していることから、後遺障害等級について「局部に頑固な神経症状をのこすもの」(12級13号)と認定してくれました。 なお、保険会社が取り寄せた診療録の中に、後遺障害診断書とは異なる関節可動域の記載があったことから、関節可動域制限(10級7号)までは認めてもらうことができませんでした。この点は残念でした。 2 過失割合 保険会社は、本件事故の過失割合について、被害者にも20%の過失があると主張していました。 しかし、実況見分調書には、自動車が左へ車線変更する際に合図を出したとの記載がありませんでした。こちらは、この事実を指摘した上で、被害者の過失はないと判断すべきなどと反論しました。 この結果、裁判所は、被害者にも過失があることを否定できないと指摘しつつも、被害者の過失割合を10%と認定してくれました。 |
| 弁護士のコメント | 1 弁護士交代について 被害者から、前任者の対応を聴取しましたが、 ①後遺障害等級の認定を求める際、事前認定を選択したこと ②医師の意見書などの証拠を準備できなかったこと ③速やかに適切な対応をとらなかったため、保険会社による債務不存在確認訴訟の提起を招いてしまったこと など、対応が不十分だったことは否定しがたいと思います。 特に、債務不存在確認訴訟を提起されてしまったため、その後の対応が困難になってしまったと思います。だいち法律事務所は、依頼を頂いた後、訴訟対応をしつつ、異議申立を行わざるを得なくなり、手間をかけることになりました。また、医師の意見書などの立証資料を準備するにあたって、時間的な制約が生じてしまったのです。このため、だいち法律事務所による異議申立は一度しか行えず、訴訟にて後遺障害等級についての主張立証を行うしかありませんでした。 結果的に挽回できたのでよかったのですが、対応がとても難しくなったことは確かです。 2 意見書 だいち法律事務所は、交通事故によって高次脳機能障害・遷延性意識障害・脊髄損傷などの重傷を負った被害者、死亡事故の遺族などに対するサポートなどを重点分野としており、専門的な対応を心がけています。 この分野では、 ・後遺障害等級 ・必要な介護の内容 ・自宅改修の必要性 などの争点において、医師などの専門家の意見書を入手したり、保険会社が提出してきた意見書を検討して効果的に反論する場面に数多く直面しています。 意見書の取り扱いを数多く経験しているため、 ・どのような意見書を準備するのが効果的か ・どの医師に意見書の作成を依頼すればよいか などについて豊富なノウハウを有しています。 本件でも、 ・後遺障害診断書を作成した医師 ・訴訟の時点での主治医 ・第三者の医師 に意見書を作成して頂き、万全の主張立証を行いました。 このあたりの適切な対応は、他の法律事務所ではなかなか真似できない水準に達していると自負しています。 3 被害者の理解と協力 本件では、被害者と協議した上で方針を決め、協力しつつ対応を進めました。 ご自身の主張を自賠責保険に認めてもらえず、依頼した弁護士が十分に対応してくれないという状況は、被害者にとって辛かったと思います。 その中で、だいち法律事務所の説明をしっかりと理解し、対応を委ねると決断することは、なかなかできないことと思います。 円滑な協力関係のもとで、よい結果を得られてよかったと思います。 4 まとめ 債務不存在確認訴訟を提起された後に依頼を受けたため、時間的な制約がある中で、全ての資料を検討して方針を立て、医師と面談するなどして協力を頂戴しました。 かなり大変な対応・作業が続きましたが、左母指MP関節尺側側副靱帯の損傷が認めてもらうことができましたし、これを前提として適切な額の賠償を受け取ることができました。 被害者に満足して頂ける結果を得ることができ、とても嬉しく思っています。 |





