解決事例

遷延性意識障害 Cases1

2014.11.06

遷延性意識障害
後遺障害等級:1級1号
解決:平成26年11月6日判決
裁判所:岡山地方裁判所倉敷支部 

【事案の概要】
被害者は、原動機付自転車に乗って、信号機の設置されていない交差点(被害者の側に一時停止規制あり)を直進しようとしました。このとき、交差道路の右側から進行してきた自動車と衝突しました。
この事故によって、被害者は、重症頭部外傷、遷延性意識障害、右大腿骨骨折などの重大な傷害を負いました。そして、遷延性意識障害などの重篤な後遺障害が残ったため、常に介護が必要な状態になってしまいました。

後遺障害等級 この事案では、被害者が『遷延性意識障害』という重篤な後遺障害を負ったたため、
別表第一第1級1号
と認定されました。
裁判の争点 別表第一第1級1号という重篤な後遺障害等級が認定されたこと、過失割合に大きな争いがあったことなどを考慮し、訴訟を提起しました。
訴訟における争点は、多岐にわたりましたが、主な争点は、
・ 付添看護費
・ 将来介護費
・ 逸失利益における生活費控除の要否
でした。
裁判所の認定 1 付添看護費の額

事故によって重篤な怪我を負ったため、被害者は、2年近くもの間、入院治療を受けました。この間、藤田医科大学病院で脊髄後索電気刺激治療(Dorsal column
stimulation:DCS)を受けたり、大久野病院にて紙屋式看護を受けたりして、意識状態の回復を図るとともに、ご家族が看護技術を習得しました。
入院期間中、被害者は、遷延性意識障害の状態で、自分でできることは何もなかったため、常に介護が必要でした。また、意識状態の改善を図るため、積極的に刺激を与えることが重要でした。
一般的な基準では、付添看護費の額は、日額6000円前後と認定されるのが通常であり、高くても日額8000円にとどまる例が多いです。
これに対し、本件において、裁判所は、付添看護費を日額1万円と認定してくれました。
長期にわたって付添看護を続けていたご家族の負担は大きかったことから、一般的な裁判例よりも高額の付添看護費が認められた点は、高く評価してよいと思います。

2 将来介護費

被害者は、遷延性意識障害などの重篤な後遺障害を負ったため、日常生活において自分でできることはなく、日常生活のあらゆることに、24時間態勢の介護が必要な状態になりました。
近親者だけで全ての介護を担うことは不可能であり、日中は、介護施設に通ったり、訪問介護サービスを利用するなど、近親者の介護の負担を軽減するための介護スケジュールを組みました。介護サービスの利用は、被害者が多様な刺激を受ける機会を確保し、意識状態の改善を図るというリハビリ面での効果も期待できます。
裁判においては、介護サービスを利用し、介護費を負担し続けているので、十分な金額の将来介護費を認定すべきであると主張しました。
この結果、裁判所は、
近親者の介護費     日額  8000円
職業介護人の介護費   日額1万6000円
という介護費を認めてくれました。

3 逸失利益における生活費控除の要否

被告は、被害者の状態が重篤であり、健常人と比較すれば、生活費などの支出額は少なくて済むなどと主張し、逸失利益の計算において50%の生活費を控除すべきと主張しました。
しかし、遷延性意識障害という重篤な障害を負っていても、障害回復のための刺激を与える必要があり、多種多様な触れ合いが必要であるから、生活費が少なくて済むとはいえない。また、遷延性意識障害からは脱却しつつあるため、生活費の支出は増加していくはずであるなどと主張しました。
裁判所は、被害者が生活費の支出を免れたとは認められないと判断してくれました。

弁護士のコメント 本判決は、かなり高額な付添看護費・将来介護費が認められている点が特徴です。
高額な付添看護費・将来介護費を認定をしてもらうため、
ご家族から、事故後の経過、被害者の現状などを詳細に聴き取る
カルテの内容の精査
などの準備をして、
日常生活の全般について介護が必要であること
24時間態勢の介護が必要であること
介護の負担がとても重いこと
介護サービスを利用する必要があること
などについて、詳細な主張立証を行いました。
介護に関する医学文献、将来的な介護費の変動に関する論文や資料などを数多く提出し、介護内容や態勢が、この被害者に特別なのではなく、重篤な後遺障害であれば一般的に必要とされていること立証しました。
これらの対応の結果、裁判所は、高い水準の判決を出してくれました。
解決に至るまでに長い期間がかかりましたが、十分に納得できる解決が得られました。
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