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遷延性意識障害④(看護による意識障害の改善)

2021.02.16
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遷延性意識障害の患者の意識障害を改善させるためには、いろいろな刺激を与えることが重要といわれています。これまでに説明した電気刺激治療や音楽療法だけでなく、日常的に実施するナーシング(看護)も、意識的に五感を刺激することを心がけることで、意識障害の改善に効果を発揮するようです。
今回は、「五感の刺激を中心としたナーシング(看護)」について説明します。

第1.看護の理念
遷延性意識障害の患者に対する看護を実施するにあたっての理念は、『患者を独立した一個の人格として認め、いかにその人らしく生きてもらうかを考えた上で、援助を行うことにある』とされています。
この理念を実現するために必要なのは、患者に関する情報を収集しておくことです。主にご家族から、受傷前の性格、生活パターン、嗜好(食べ物・音楽など)などの情報を収集しておくことで、理念に沿った看護を実施できます。
 
第2.看護のポイント
1.早期のリハビリ開始
脳神経系の再生ないし再建のためには、バイタル(呼吸・脈拍・血圧・体温・意識レベルの5つの指標のこと)が安定次第、できるだけ早期にリハビリを開始することが重要とされています。
2.家族による対応
家族や身近な人が声かけをしたり、姿を見せることは、医療者とは異なった反応を引き出すことがあるようです。また、家族が、患者の好みや習慣を考慮した上で刺激を与えることが効果的であるとの指摘もあります。つまり、意識状態の改善を図るためには、家族や身近な人による働きかけの機会を多く確保することが重要です。
家族が、希望を失うことなく、昼夜を問わず、積極的に看護に参加することが、患者の改善にとても重要であることが広く認知されています。
3.観察の重要性
看護を行うときは、
・患者の僅かな変化
・患者が送ってくる僅かなサイン
を見逃すことがないよう、看護に当たっている間、患者の様子をしっかり観察しておくことが重要とされています。
4.基本方針
看護を行うに当たって、以下の方針を心がけるべきとされています。
①睡眠覚醒のリズムを確立させる
②朝から夜までの1日の変化を感じさせる

③四季の変化を感じさせる

③四季の変化を感じさせる

④経口摂取を試みる

④経口摂取を試みる

④経口摂取を試みる

⑤自排尿・排便を促す

⑤自排尿・排便を促す

⑥患者の反応・変化を見逃さない

⑥患者の反応・変化を見逃さない

第3.看護の内容
1.睡眠覚醒のリズムの確立
睡眠~覚醒のリズムを確立させ、覚醒時に、患者が、より多くの刺激を受容できる状態を作ります。これによって、意識レベルの向上を促します。
このため、日中は、病室を明るくし、ヘッドアップさせた上で、音楽を聴く、車イスに乗せるなどの援助を積極的に行います。これに対し、夜間は、最小限の刺激に限るように努めます。こうすることによって、できる限り、活動と休息の時間を分け、生活のリズムをつくるようにします。
また、家族や身近な人などの声かけ、スキンシップは、患者にとって重要な五感刺激となります。このため、家族などに対しても、対応の方法を身につける努力が必要になります。
2.移動・体位
遷延性意識障害の患者は、自動運動がほぼ不可能です。このような患者であっても、他動的に移動させたり、体位の調整を行ったりすれば、無意識にでも平衡を保とうとしたり、体勢を立て直そうとする行動を導き出すことにつながります。
このため、患者の状態(意識レベル・麻痺など)に応じて、順次、看護者が全てを介助する状態から、患者自身の反応・動作の出現、時間・回数の延長・増加、自力動作の拡大へ発展するように援助していくことが重要です。
3.栄養
口腔から得られる食感・味覚・嗅覚などの刺激は、意識状態の覚醒によい効果を及ぼすとされています。
当初、遷延性意識障害の患者は、経口摂取が不可能なことが多いため、点滴による栄養補給に頼ることがほとんどです。そして、全身状態や呼吸状態の安定とともに、経管栄養へ移行します。
さらに、喀痰量が少なくなり、咀嚼運動や嚥下反射が認められるようになれば、積極的に経口摂取の訓練を開始するようにします。訓練は、咀嚼・嚥下の状況を見ながら、半固形食から開始します。咀嚼・嚥下が不安定なことが多いため、摂取時の「むせ」や誤飲、気管カニューレからの喀出などがあれば、すぐに訓練を中止し、吸引を行って嚥下物を除去し、誤嚥性肺炎の防止に努めることが大切です。
4.排泄
排泄による快・不快の感覚は、脳への刺激となり、患者の意識レベルの改善に影響します。
意識レベルが改善するのに伴って、最初は、バルーンカテーテルのクランプによって膀胱括約筋の緊張を高め、尿意の有無を定期的に確認します。その後、尿意を何らかの方法で訴えることができると判断できれば、カテーテルを抜去することになります。抜去後は、早期に患者の排尿パターンを把握し、排尿の誘導を試みます。できれば、日中はトイレに座らせるようにし、自然排尿を促すことが望ましいです。
5.清潔
患者の状態に応じて、全身清拭・部分浴・シャワー浴(入浴)を選択して実施します。清拭や入浴の機会を持つことは、以下の意味を持っています。
①感染予防を図れる
②全身に対する外的刺激となる
③患者の全身の皮膚の状態を観察できる機会となる
④患者に可能な動作を促すことがADL(日常生活動作)の拡大につながる
 
第4.家族へのサポート
遷延性意識障害の患者の五感を刺激するためには、家族による日々の声かけ、働きかけが大切です。
ですが、患者の長期療養は不可避であるため、家族は、計り知れないほどの心身の疲労を負うことになります。家族による働きかけを継続できるようにするためには、家族が負っている心身の疲労に対する配慮も必要になります。
家族が継続して患者に関われるように、周囲にいる医療・看護・介護の従事者が、家族に対して積極的に声かけや励ましなどを行って、精神的にサポートすることが重要になっています。
 
第5.まとめ
今回は、看護によって遷延性意識障害の患者に刺激を与えることの重要性や方法について説明しました。
看護を実施するのは、当初は医療従事者であることが多いでしょうが、徐々に家族などの身近な方が担うことになると思います。そして、家族による看護は、愛情を持って患者に接することもあって、意識障害の改善に効果を発揮するようです。
家族に対するサポートの重要性は、もっと強調されてよいと思います。

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