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遷延性意識障害⑤(看護・介護の内容)

2021.03.17
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遷延性意識障害の患者は、重度の意識障害があるだけでなく、身体面にも障害があるため、長期にわたって寝たきりの生活を続けることになります。そして、自分で動くことができないため、日常生活のほぼ全ての場面で、看護・介護を受けることが必要です。
今回は、遷延性意識障害の患者が「生活する上で必要な」看護・介護について説明していきます。

<spanstyle=”color: #0c343d;”>第1.肺合併症の予防
1.気管切開部位の管理
遷延性意識障害の患者は、長期臥床のため、抵抗力が弱くなっているだけでなく、身体の諸機能が低下しているため、舌根沈下や分泌物による気道閉塞を起こしやすくなっています。気道閉塞による呼吸困難という事態を回避するため、気管切開を行っている患者が少なくありません。
気管切開した場所にはカニューレを留置します。長期間にわたって同じカニューレを留置しておくと、細菌が繁殖し、肺炎などを発症する危険があるため、定期的に交換する必要があります。
また、気管切開部の清潔保持、カニューレの内筒の洗浄と消毒などの対応が必要になります。
1.気管切開部位の管理

2.肺理学療法と吸引
気管切開をしている患者は、呼気が鼻腔や口腔を通らず、十分に加湿されないため、喀痰の粘性が強くなります。これに加え、肺の機能が低下していて、喀痰を喀出する力が欠けていたり不十分であることも特徴です。
このため、ネブライザーによる「吸入」を行って喀痰を柔らかくし、体位ドレナージ・タッピングなどの肺理学療法を行って喀痰の喀出を促したり、吸引器による「吸引」によって喀痰を取り除くなどの対応が必要になります。
そして、呼吸状態が安定し、喀痰が生成される量が減少してきたら、カニューレを抜去するとともに、経口摂取の訓練を開始します。その後も、引き続いて、積極的に肺理学療法を実施し続け、肺の機能の回復を図ります。

2.肺理学療法と吸引

3.口腔ケア
口腔内は、温度・湿度・栄養という細菌が繁殖しやすい条件がそろっています。また、歯周ポケットや歯間など、細菌が繁殖しやすい場所もあります。そして、細菌が繁殖すると、唾液を誤嚥した際に気管内に入り、肺炎などを発症する原因となる危険があります。
口腔ケアの実施は、基本的な生活習慣の実践によって生活の質を維持するという観点から必要なのですが、さらに、口腔内の細菌を除去して疾病を予防するという観点からも必要不可欠とされています。
3.口腔ケア

第2.褥瘡(床ずれ)の予防
1.体位交換
遷延性意識障害の患者は、自力では姿勢を変えることができません。同じ姿勢のままでいると、身体の同一部位に圧力がかかり続けてしまうため、この状態が続くと細胞が壊死して褥瘡が発生してしまう危険があります。
褥瘡が発生してしまうと、その治療には長い時間と多大な労力が必要になります。重度の褥瘡が生じれば外科的な処置が必要となることもあります。このため、褥瘡の予防は、遷延性意識障害の患者の生活において非常に重要です。
褥瘡を予防するには、最低2時間ごとの体位変換を実施することが基本とされています。
1.体位交換

2.体圧分散
患者の姿勢に応じて体圧を分散させることも重要です。
まず、体圧分散用のマットレスを使用することが基本となります。
また、体位交換によって姿勢を変えた後、その姿勢に応じて、ベッドの角度を変えたり、体圧分散用のクッションを脇・肘・膝・踵などに挟み込んで、体圧が広い部分に分散されるようにします。

2.体圧分散

3.栄養管理
褥瘡は、栄養状態が悪い場合に発生しやすくなるといわれています。
遷延性意識障害の患者は、食事を経口摂取できないことが多いです。そして、経口摂取できなければ、経鼻栄養や胃瘻などで栄養を摂取することになります。
十分な栄養を摂取できるように食事量を調整することが重要になります。

3.栄養管理

第3.関節拘縮などの予防
遷延性意識障害の患者は、四肢の自動運動ができません。また、関節の拘縮や変形が生じることが多く、しかも時間の経過とともに増強する傾向にあります。このため、早期から関節の拘縮を予防することが重要です。
まず、意識障害の程度、可能な自動運動の内容、麻痺や拘縮の有無と程度などを慎重にアセスメントします。その上で、良肢位の保持に努めるとともに、積極的にベッドサイドにおいて他動運動による関節運動などを実施して、筋の萎縮、関節の拘縮・変形を予防することになります。

第3.関節拘縮などの予防

第4.排泄の管理
1.尿路感染の予防
遷延性意識障害の患者の中には、自力での排尿ができない方もおられます。こ
の場合、バルーンカテーテルの挿入・留置が行われていることがあります。このバルーンカテーテルを長期にわたって留置すると、尿路感染の誘因となりやすいとされています。また、患者は、長期臥床によって、結石が形成されやすい状態にあります。
このため、毎日の陰部洗浄、定期的な膀胱洗浄・バルーンカテーテルの交換を行うことが必要になります。そして、何よりも、早期にバルーンカテーテルを抜去して、自然排尿を促すことが望ましいです。2.オムツ交換
遷延性意識障害の患者は、尿意や便意を伝えられないことが多いです。このため、オムツを使用していることがほとんどでしょう。
この場合、2時間ごとを目途にオムツのチェックが必要になります。そして、排泄していれば、すぐに交換を行います。
自力での排便が困難な場合には、便を軟らかくする薬を服用させるなどの対応も必要になります。

2.オムツ交換

3.陰部の洗浄
陰部を清潔に保つことは、尿路感染などを防止する意義があるだけでなく、皮膚トラブルを防ぐことで褥瘡を予防することにも繋がります。
このため、排便があった場合には、ぬるま湯で陰部を洗浄し、清潔な状態を維持することが重要です。
 
第5.その他の介護内容
1.着替え
遷延性意識障害の患者は、自力で着替えることができません。このため、介助によって着替えをするしかありません。
着替えを行う際は、患者の身体を冷やさないように、室温を調整しておいた上、短時間で済ませることが必要です。

1.着替え

2.整容
洗顔、ひげ剃り、整髪、つめ切り、耳掃除なども、介助によって行う必要があります。

2.整容

3.移乗
遷延性意識障害の患者は、座る・立つ・歩くという基本動作ができません。ベッドと車いす・車いすと便器・車いすと自動車などの間を自力で移乗することは不可能であり、介助によって行う必要があります。

3.移乗

4.入浴
入浴は、清潔の維持、全身の刺激、皮膚の状態の観察などのために重要です。
当然、衣服の脱着、髪や身体の洗浄などの対応を介助して行う必要があります。

4.入浴

5.外出
遷延性意識障害の患者は、自力での移動は不可能です。このため、移動する時は、車いすを使用するとともに、介助者に車いすを操作してもらう必要があります。
また、遠方に外出する時は、介護車両に乗せて移動することになります。

5.外出

6.室温・湿度の管理
遷延性意識障害の患者は、体温調節機能にも障害があることが多いです。
このため、エアコン・加湿器・空気清浄機を使って、室内の温度・湿度を一定に保ち、空気をキレイに保っておく必要があります。また、衣類や掛け物などで温度を調節することも重要です。

6.室温・湿度の管理
第6.まとめ
遷延性意識障害の患者が「生活する上で必要な」看護・介護について説明しました。
個々の患者の症状によって、実施すべき看護・介護の内容、実施する頻度などに違いがありますので、このコラムでは、最低限の対応について説明しただけとお考えください。
また、多くの介護が必要であるため、介護者にかかる負担が大きいことも特徴と言えます。この点も十分に考慮しておくべきでしょう。

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