口に関する後遺障害には、咀嚼(そしゃく)機能障害、言語機能障害、歯牙障害、味覚障害があります。口に関する2回目のコラムでは、これらの障害のうち、歯牙障害について解説します。
第1.口の障害
口に関する後遺障害には、以下のとおりの種類があります。
・咀嚼(そしゃく)機能障害
・言語機能障害
・歯牙障害
・味覚障害
前回のコラムでは、咀嚼(そしゃく)機能障害と言語機能障害について解説しました。今回のコラムでは、歯牙障害について解説します。
第2.歯牙障害
1.歯牙障害とは
外傷によって歯牙に異常が生じたため、歯科補綴を加える場合があります。ここでいう歯科補綴とは、「喪失した歯牙」、または、「著しく欠損した歯牙」に対する補綴のことをいいます。この歯科補綴を加えた歯がある場合が歯牙障害として扱われます。
2.歯牙障害から除外される処置
歯科補綴は、「喪失」、または、「著しく欠損」した歯牙に対する補綴が対象になります。「著しく欠損」とは、歯冠部体積の3/4以上を欠損・切除していることをいいます。
有床義歯(入れ歯)、架橋義歯(ブリッジ)を補てつした場合における支台冠(被せものの土台)または鈎の装着歯、ポスト・インレーを行うに留まった歯牙は、補綴歯数に算入されません。
3.喪失した歯数と義歯の歯数が異なる場合
喪失した歯牙が大きいか、もともと歯間に隙間があった場合、喪失した歯数と義歯の歯数が異なる場合があります。この場合、喪失した歯数により等級を認定することとされています。
例えば、3歯の喪失に対して、4本の義歯を補綴した場合は、3歯の補綴として取り扱います。
4.インプラント
⑴定義
金属・セラミックスなどの人工物を顎骨内などに埋入させ、粘膜上に突出させた部分に義歯を取り付ける治療方法のことです。
⑵システム
インプラントのシステムには、いくつかの種類がありますが、現在では、骨内インプラントが採用されています。
⑶手術(2回法)
①一次手術:土台となるインプラント体を埋入する手術。
②二次手術:インプラント体にアバットメント(土台)を取り付ける手術。
③最終補綴:上部構造を装着する。
⑷手術(1回法)
一度の手術でアバットメントの取付までする方法。
⑸メインテナンス
インプラント治療の永続性はメインテナンスにかかっている。
⑹インプラント治療の予後
①10年ほど経過すると、10名中約1名、20本中約1本の割合で、予後不良となる。
②以下のトラブルが発生する可能性がある。
・スクリューの緩み・破折
・インプラント体の破折
・ポーセレンの破折(上部構造物の異常)
・インプラント周囲炎
⑴定義
金属・セラミックスなどの人工物を顎骨内などに埋入させ、粘膜上に突出させた部分に義歯を取り付ける治療方法のことです。
⑵システム
インプラントのシステムには、いくつかの種類がありますが、現在では、骨内インプラントが採用されています。
⑶手術(2回法)
①一次手術:土台となるインプラント体を埋入する手術。
②二次手術:インプラント体にアバットメント(土台)を取り付ける手術。
③最終補綴:上部構造を装着する。
⑷手術(1回法)
一度の手術でアバットメントの取付までする方法。
⑸メインテナンス
インプラント治療の永続性はメインテナンスにかかっている。
⑹インプラント治療の予後
①10年ほど経過すると、10名中約1名、20本中約1本の割合で、予後不良となる。
②以下のトラブルが発生する可能性がある。
・スクリューの緩み・破折
・インプラント体の破折
・ポーセレンの破折(上部構造物の異常)
・インプラント周囲炎
5.後遺障害等級
6.咀嚼障害・言語障害との併存
①咀嚼障害・言語障害が歯牙障害以外の原因(たとえば、顎骨骨折や下顎関節の開閉運動制限などによる不正咬合)にもとづく場合は、併合して等級を認定します。
②歯科補綴を行っても、なお、歯牙損傷に基づく咀嚼障害・言語障害が残っている場合は、各障害に係る等級のうち、上位の等級をもって認定します。
①咀嚼障害・言語障害が歯牙障害以外の原因(たとえば、顎骨骨折や下顎関節の開閉運動制限などによる不正咬合)にもとづく場合は、併合して等級を認定します。
②歯科補綴を行っても、なお、歯牙損傷に基づく咀嚼障害・言語障害が残っている場合は、各障害に係る等級のうち、上位の等級をもって認定します。
7.加重
⑴加重とは
既に障害のあった者が、同一の部位について、新たに障害が加わった結果、後遺障害等級表上、現存する障害が既存の障害より重くなった場合のことです。
この加重に該当する場合、加重後の障害が該当する後遺障害等級から、既に存していた障害の該当する後遺障害等級を差し引いた部分が賠償の対象になります。
⑵歯牙障害の取扱
何歯かについて歯科補綴を行っていた者が、さらに歯科補綴を加えた結果、上位等級に該当するに至ったときは、加重として取り扱うこととされています。
例えば、交通事故の被害に遭った前に、既に4歯に歯科補綴を加えていた人が、交通事故によって新たに3歯に歯科補綴を加えた結果、補綴歯数が7歯となった場合、新たに12級が認定されますが、既存の障害が14級に認定されるため、12級の保険金額と14級の保険金額との差額が保険金額となります。
⑴加重とは
既に障害のあった者が、同一の部位について、新たに障害が加わった結果、後遺障害等級表上、現存する障害が既存の障害より重くなった場合のことです。
この加重に該当する場合、加重後の障害が該当する後遺障害等級から、既に存していた障害の該当する後遺障害等級を差し引いた部分が賠償の対象になります。
⑵歯牙障害の取扱
何歯かについて歯科補綴を行っていた者が、さらに歯科補綴を加えた結果、上位等級に該当するに至ったときは、加重として取り扱うこととされています。
例えば、交通事故の被害に遭った前に、既に4歯に歯科補綴を加えていた人が、交通事故によって新たに3歯に歯科補綴を加えた結果、補綴歯数が7歯となった場合、新たに12級が認定されますが、既存の障害が14級に認定されるため、12級の保険金額と14級の保険金額との差額が保険金額となります。
8.損害賠償請求における問題
歯牙障害における損害賠償請求において問題となることが多い論点をまとめました。
⑴将来治療費
小児などの若年者の場合、乳歯から永久歯への生え替わり、顎の発達による不正咬合の発生などによって、将来的に、再手術が必要になる可能性があります。
また、成人でも、インプラント治療を行った場合、定期的なメインテナンスが必要であったり、予後不良(インプラント周囲炎など)によって再手術が必要になる可能性があります。
これらを考慮して損害賠償請求を行うことが必要でしょう。
⑵労働能力
歯牙障害が労働能力に影響するか否かは、争いになることが多い論点です。
裁判例においても、労働能力の喪失について、肯定・否定するどちらのケースも存在しています。また、労働能力の喪失が認められた場合でも、後遺障害等級どおりの喪失率が認定されるケースは少ないです。
⑶後遺障害慰謝料
労働能力の喪失が認められない場合、後遺障害慰謝料を基準額よりも増額する例が見られます。
この点の主張を忘れないようにしておく必要があります。
歯牙障害における損害賠償請求において問題となることが多い論点をまとめました。
⑴将来治療費
小児などの若年者の場合、乳歯から永久歯への生え替わり、顎の発達による不正咬合の発生などによって、将来的に、再手術が必要になる可能性があります。
また、成人でも、インプラント治療を行った場合、定期的なメインテナンスが必要であったり、予後不良(インプラント周囲炎など)によって再手術が必要になる可能性があります。
これらを考慮して損害賠償請求を行うことが必要でしょう。
⑵労働能力
歯牙障害が労働能力に影響するか否かは、争いになることが多い論点です。
裁判例においても、労働能力の喪失について、肯定・否定するどちらのケースも存在しています。また、労働能力の喪失が認められた場合でも、後遺障害等級どおりの喪失率が認定されるケースは少ないです。
⑶後遺障害慰謝料
労働能力の喪失が認められない場合、後遺障害慰謝料を基準額よりも増額する例が見られます。
この点の主張を忘れないようにしておく必要があります。
第3.まとめ
歯牙障害が後遺障害に認定されるには、3歯以上に歯科補綴が行われている必要があり、1~2本だけでは後遺障害に認定されないことに注意が必要です。
また、多数の歯牙に障害がある場合、重大な衝撃を頭部に受けているので、「脳外傷による高次脳機能障害」など他の後遺障害と併存していることが多いです。他の後遺障害があれば、併合の処理が受けられるため、見落とさないように注意する必要があります。
歯牙障害が後遺障害に認定されるには、3歯以上に歯科補綴が行われている必要があり、1~2本だけでは後遺障害に認定されないことに注意が必要です。
また、多数の歯牙に障害がある場合、重大な衝撃を頭部に受けているので、「脳外傷による高次脳機能障害」など他の後遺障害と併存していることが多いです。他の後遺障害があれば、併合の処理が受けられるため、見落とさないように注意する必要があります。