1.画像(CT・MRI)による障害の確認 ⑴CTスキャンでは、脳挫傷部位では6時間程度のうちに出血が進行して脳内血腫が形成され、その後、周辺に脳浮腫の進展する様子などを明確に示してくれる。 MRIでは、出血や梗塞の状況のみならず、これらの新旧の別、脳萎縮の程度、神経繊維の走行や脱落の具合、代謝状況に至るまでを明らかにできる。 ⑵びまん性軸索損傷の場合、T2強調画像やFLAIRに加えて、拡散強調画像で軸索損傷による細胞性浮腫を検出する。 また、磁化率強調画像(SWI)は、現時点で最も微少な出血(デオキシヘモグロビン、ヘモジデリン)検出に鋭敏な高空間分解能画像であり、今後DAIの診断には必須の撮像法である。 2.画像(CT・MRI)で確認できない場合もあること ⑴脳損傷には通常出血を伴うので画像診断の手助けとなるが、軸索損傷に限れば本来出血はなく、その際は診断が難しい。 ⑵びまん性軸索損傷の場合、脳梁や白質に点在する微細な脳出血などの所見は、受傷後2~3週間いないに行うMRIのDWI、FLAIR、T2*強調画像などの撮像方でしかわからないことがある。慢性気になってリハ病院で行うMRIでは、T2*強調画像で検出されるヘモジデリン沈着から急性期に微細出血があったことを推測できる場合もあるが、全ての事例でT2*強調画像の異常所見がえられるわけではなく、急性期に存在したびまん性軸索損傷の特徴的な所見が消えていて診断が難しい場合がある。 ⑶画像検査でほとんど所見がない場合でも、重度の記憶や遂行機能の障害、あるいは行動障害を示す場合が多いことを知っておくべきである。 ⑷MTBIの多くは、脳画像上異常が認められない。この場合に、医学的な症状発現の説明としては、動物実験での結果から、おそらくは顕微鏡レベルでの軸索損傷が生じているのではないかとの推測がある ⑸高次脳機能障害など病態解明や診断基準、治療法が確立していない病態においては、画像診断が施行されていても、その施行時期、撮像機器の選択、撮像プロトコールの選択が適切でないため、画像診断データそのものが確定診断に有用でないことがしばしば経験される。 画像診断は客観的診断法とはいえ、適切な時期に目的に合致した撮像機器と撮像方法が施行されていなければ、後にディスカッションの対象にもならない。 さらに、検査法および得られた画像の特性をきちんと理解し、客観的な読影が下されなければならない。 ⑹T2*は、常磁性体である鉄イオンを含むヘモジデリンが僅かでも存在した場合に生じる磁場の不均一性を鋭敏に関知するため、脳内の陳旧性微小出血の描出が可能である。
3.CT・MRI以外の画像について ⑴SPECT ヒトの大脳皮質における一部の皮質神経細胞死は、通常のMRI検査では捉えられず、皮質神経細胞の密度を表す神経受容体SPECT検査などの機能的画像診断によって初めて判定することができる。 ⑵拡散テンソル画像法(diffusion tensor imaging:DTI) DTIとは、生体内水分子の拡散の大きさや異方性を画像化したものであり、従来の撮像法と比較して脳白質の構造変化を鋭敏に捉えることができる。 FTは、隣接するボクセル間の拡散異方性の方向と大きさを解析することにより、脳白質神経線維の走行を連続的かつ3次元的に描出する方法である。 4.画像がない場合の判断 びまん性の脳疾患では、経過や症状から明らかに海馬などの器質的な損傷が推定されるにもかかわらず、通常の脳MRI(含むFLAIR)では描出できない例をしばしば経験する。明らかに損傷を示唆する臨床情報がそろっている場合には、微細な器質的損傷があると推定することを「整合性がない」と退けることはできない。
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