交通事故では、輸血によるウイルス感染で罹患した肝炎が問題となる。 日本で輸血による感染が問題となるのは、B型とC型である。 C型肝炎については、1997年以降、輸血により感染する可能性がかなり小さくなっている。 1.岡山地裁平成10年3月26日判決 内容:胆嚢摘出、C型肝炎(自賠責の認定不明) 喪失率など:公務員であり多少疲れやすい程度で、昇給昇格に不利益な取扱がなされる可能性がないではない程度。定年退職後は、職種や労働能力が制限される。→定年までは10%(13級程度)、定年後は35%(9級相当) 2.大阪地裁平成7年12月4日判決 内容:C型肝炎(事前認定なし。∵GOTとGPTが正常域内のため) 喪失率など:治療の継続、過労の回避、食事制限が不可欠で、症状が将来に残存する可能性(肝硬変や肝ガンへの進行)があるから、後遺障害として評価。時間外労働の制限、毎日の通院より、12級に相当(14%)すると認定。 3.東京地裁平成5年4月22日判決 内容:慢性肝炎、胆石症 喪失率など:肝外傷を原因とする胆のう炎、胆石症,術後肝障害に罹患し、全身倦怠感が残存。肝炎については将来肝硬変になる可能性が高い。インターフェロン療法も副作用として発熱、全身倦怠感、血小板・白血球の減少があるなどと認定して、30%の労働能力喪失を認定。 4.大阪地裁平成2年10月22日判決 内容:右膝関節機能障害(10級) 下肢三センチメートル短縮(10級) 非A非B肝炎による肝機能障害(事前認定なし) 喪失率など:増悪と緩解を繰り返しており、GOTの数値が上がると倦怠感が強まり就労が困難となるが、平均的には事務等の軽易な労務であれば可能。自動車の運転もしていることから、9級相当(35%)と認定。保険会社は、ウイルス感染と事故との因果関係を争ったが、昭和63年当時で感染防止法が確立していなかったこと、輸血の一定割合で感染すること、輸血後の非A非B肝炎の慢性化率が30~50%と高いことより、相当因果関係を肯定。 判例からは、労働能力喪失率は、実際の症状(特に、肝硬変や肝ガンなど症状が悪化する可能性)や仕事への支障を具体的に立証する必要がある。また、新基準によると、肝硬変や慢性肝炎を発症しているか否かで等級が変わってくる。
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