1.頸椎と胸腰椎との関係 脊柱のうち、頸椎と胸腰椎とは、主たる機能の違いから、障害等級の認定にあたっては、原則として異なる部位として取り扱い、それぞれの部位ごとに等級認定される。 頸椎 … 頭部の支持機能 胸腰椎… 体幹の支持機能 2.運動障害の等級 脊柱運動障害として認められる等級は、次の2つである。 ア.「せき柱に著しい運動障害を残すもの」(6級4号) 頚部及び胸腰部が硬直したもの イ.「せき柱に運動障害を残すもの」(8級2号) 頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域の1/2以下 脊柱の運動障害に該当するためには、 a.圧迫骨折等がエックス線写真等により確認できること b.脊椎固定術が行われたこと c.項腰背部軟部組織に明らかな器質的変化が認められること のいずれかが必要である(aまたはbを原因としてアに該当するためには、「頸椎及び胸腰椎のそれぞれ」に必要である)。 なお、画像所見によりせき椎圧迫骨折等またはせき椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的変化も認められず、単に、疼痛のために運動障害を残すものは、局部の神経症状として等級を認定することとされている。
3.せき柱変形障害との関係 せき柱の運動障害が認められる場合の多くは、脊椎圧迫骨折等ないし脊椎固定術を原因とするため、「せき柱に変形を残すもの」(11級5号)にも該当する。 この場合は、上位等級、すなわち、せき柱運動障害の等級(6級または8級)として扱われる。
4.平成16年改正前の認定基準 「せき柱の著しい運動障害」 広範なせき椎圧迫骨折又はせき椎固定術等にもとづくせき柱の硬直もしくは背部軟部組織の明らかな器質的変化のいずれかのため、運動可能領域が参考可動域角度の1/2以上に制限されたもの又は常時コルセットの装着を必要とする等著しい荷重障害のあるもの 「せき柱の運動障害」 a.エックス線写真上明らかなせき椎圧迫骨折または脱臼が認められる場合、又は、せき椎固定術等にもとづきせき柱の強直がある場合、もしくは、背部軟部組織の明らかな器質的変化のある場合のいずれかのために、運動可能領域が参考可動域角度のほぼ1/2程度にまで制限されたもの b.頭蓋・上位頸椎間の著しい異常可動が生じたもの 平成16年改正は、頸椎と腰椎との区別の導入、可動領域要件などの点において、認定基準が厳しくなったといえる。 もっとも、せき椎固定術による運動可能領域については、改正後基準では、8級障害の場合には「強直」という要件が外されており、この点では要件が緩和されたと見る余地もあるのではないだろうか。
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