1.争点 【因果関係】 事故と脊髄損傷との因果関係 【素因減額】 20%~50%の素因減額を肯定する裁判例も少なくない。 2.脊柱管狭窄の原因 骨格の発育過程による先天的なもの 後縦靭帯骨化症 → 疾患 黄色靭帯骨化症 → 疾患 椎間板変性・膨隆 → 加齢によるものor 疾患or事故の衝撃によるもの? 黄色靭帯の変性・肥厚 → 加齢によるものor疾患? *後縦靭帯骨化症(南山堂医学大事典CD-ROM プロメディカ) 本症は1960年にわが国の月本により初めて報告され,その後多数の報告をみる.脊柱後縦靱帯が部分的または全体的に骨化変性を起こす疾患である.骨化の型は分節型,連続型,混合型に分けられている.発生年齢は50歳以上の高齢者の男性に多い. 〔特徴〕1) 疫学的にわが国を中心とした東南アジアに多い.2) 頚椎部の発生は男子に,胸椎部の発生は女子に多い.3) 脊椎のhyperostotic changesと相関している.4) 靱帯にストレスがあると骨化が誘導される. 〔原因〕1) 脊椎の骨増殖性疾患の一つ,2) 糖代謝異常,3) 成長ホルモンその他の内分泌系障害,4) HLA抗原,5) 局所的因子,などがあげられている.頚椎の単純X線像で椎体後縁から1~2mm離れた後方に棒状または帯状の石灰化像が認められる.後縦靱帯は脊柱管腔内に存在するので,骨化・肥厚は脊椎管腔を狭小化し,脊髄圧迫となる.骨化が脊柱管腔の40%に至ると脊髄症myelopathyとなる. 〔症状〕頚髄症cervical myelopathyまたは神経根症radiculopathyを呈する. 〔治療〕脊髄の圧迫に対して除圧手術が有効である。 *頚椎症性脊髄症(南山堂医学大事典CD-ROM プロメディカ) 頚椎椎間板が退行変性をきたすと,その周囲の脊椎や靱帯にも二次的に退行変性を伴うようになる.その結果,頚髄や脊髄が障害され,脊髄症状が出現する(頚椎椎間板症cervical disc lesion).これらの退行性変化は加齢現象として高齢者に多くみられ,必ずしも臨床症状を認めるとは限らない.症状の発現には,椎間後方突出,骨棘による圧迫,歯状靱帯牽引,肥厚黄色靱帯の脊柱管内膨隆などの機械的障害,先天的な脊柱管狭窄の存在,神経根周囲のfibrosis,硬膜間内の癒着性変化,脊髄内の血行障害などが関与するとされている(頚椎骨軟骨症cervical osteochondrosis).発症は40~50歳代の中年以降の男性に多く,四肢のしびれ感や運動障害で始まることが多い.経過は一般に緩慢で徐々に増悪するが,進行すると痙性歩行,手指の巧緻運動障害,筋力低下,筋萎縮,知覚障害,膀胱障害が出現し,脊髄横断麻痺の症状を呈するようになる.予後は不良である. 〔治療〕保存的には頚椎牽引が効果的であるが,効果が認められず麻痺の進行するものには除圧的手術が行われ,1, 2椎間の病変には前方固定が,それ以上のものには椎弓切除が適応される。 *黄色靭帯肥厚症(南山堂医学大事典CD-ROM プロメディカ) 椎体周辺の骨性変化(椎間板変性,椎弓間距離の短縮,椎間関節の内方偏位,球状膨隆など)および加齢的変化などの結果,二次的に黄色靱帯yellow ligamentsの形態に変化が生じ変性・肥厚などが生ずる.正常では黄色靱帯はその部位によっても異なるが,一般的に4~10mmの厚さがある.外傷や病的な原因で黄色靱帯の弾性線維の量が減少し,コラーゲン線維で置換され,増生し,走行の乱れが強くなると黄色靱帯は肥厚状態となる.黄色靱帯肥厚では脊椎管腔を後方および側方から狭小化するため,臨床的には脊柱管狭窄〔症〕の症状を呈する.とくに黄色靱帯のcapsular portionの肥厚は神経根圧迫となり,側方脊柱管狭窄症の原因となる。 3.問題点 ・素因減額の対象となる素因とは何か。 ・減額割合はどのように決定されるか。 ・事故の衝撃の程度はどのように考慮されるか。 |