第1.腕神経叢損傷 | 1.定義・概念 2.原因・症状 【症状】 (麻痺のパターン) 3.診断 4.治療 |
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第2.交通事故損害賠償における争点 | 上肢の用廃ないし機能障害を伴う腕神経叢損傷(腕神経叢麻痺麻痺)については腕神経叢損傷の存在自体が争いとならないことが多いが,疼痛,しびれ頭の神経症状については,腕神経叢損傷の存在自体が争われ,他覚的所見が欠如を理由にその存在が認定されず14級どまりの認定となっている判例が散見される 【参考判例】
【①名古屋地裁 平成14年9月13日判決】 <判旨> 「次に、原告が頸部神経系障害として主張する左上下肢等の神経障害については、上記1ないし5に判示したところによれば、本件鑑定結果も指摘するとおり、原告の場合、受傷は頭部顔面挫傷・両上腕挫創(上腕筋挫傷)・右肩関節挫傷・下顎骨骨折であり、後頭部打撲等はないこと、受傷後神田病院入院時の症状及び退院後平成8年2月ころまでの症状は、頭痛、上腕痛、上腕の脱力感、筋力低下やしびれ感程度であったこと、神経支配に一致した知覚障害や筋力低下は認められていないこと、自覚症状のみで、他覚的に神経学的検査で納得できる所見がないこと、MRI検査・レントゲン検査の結果では、頸椎症性変化はC6−7椎間に見られるのみで、これに比して左上肢C3~C7領域にあるとされる痺れの範囲は広すぎること、MRI検査・レントゲン検査の結果では、大きな椎間板ヘルニア突出はないし、脊髄損傷、神経根損傷を来すほどの経年性変化も見られないこと、受傷時及び入院後も腕神経叢損傷を思わせる神経所見はないことが認められるのであって、これらの諸点に照らすと、本件鑑定結果の述べるとおり、原告には脊髄・神経性障害ないし頸部神経系障害として肯認し得るものはなく、肯認できる身体障害は、左上腕筋挫傷に伴う異常感覚(痺れ感)と軽度の筋力低下の限度であるものと認めるのが相当である。」
【②京都地裁 平成16年3月31日判決】 <概要> 原告は、「右上半身の筋萎縮、腫脹、不全麻痺、筋力低下、右肩関節の変位(廃用性筋萎縮)等の症状が生じ、原告が丸太町病院を受診したところ、筋電図検査 の結果で神経損傷が判明し、上記の各症状は、本件事故の際に右腕が引っ張られたことにより神経が脊髄から引き抜かれ、右腕神経叢が損傷したことによるものであると診断された。」として、「右腕神経叢損傷に起因する神経障害、筋萎縮、肩関節変位等により、肉体的労働のみならず、書記的事務能力も相当減退した状態にあり、特に軽易な労務以外の労務に服することができない状態にある。この後遺障害は、後遺障害等級3級3号に該当する(仮にそうでないとしても、同5級2号に該当する。)。」と主張したが、否定された <判旨> 「上記認定によると、本件事故発生当日(平成7年8月31日)における原告の訴えは、頭痛及び背部痛等というものであり、また、頸部レントゲン検査の結果で異常所見がなかった上、神経学的な異常所見も全く認められなかったというのであり、しかも、事故発生から約1週間後に行われた血液検査の結果で、炎症所見を示すデータがなく、その時点で頸部の炎症症状が既に消退したものと考えられたことから、早くもリハビリテーション(頸部介達牽引)が開始されたというのであるから、本件事故による原告の受傷は軽微な頸椎捻挫ないし外傷性頸部症候群にすぎなかったものと認められる。」 |
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