高次脳機能障害
後遺障害等級:2級1号
解決:平成21年12月15日判決
裁判所:名古屋地方裁判所
【事案の概要】
事故時12歳の男子小学生が、信号機の設置されていない交差点において、自転車に乗って横断歩道上を横断していたところ、左方から進行してきた普通乗用自動車に衝突されてしまいました。
この事故によって、被害者は、脳挫傷・急性硬膜下血腫・びまん性軸索損傷などの傷害を負い、高次脳機能障害・左片麻痺・歩行障害などの後遺障害を残しました。この後遺障害は、別表第一第2級1号と認定されました。
訴訟を提起した結果、既払金を除き、約2億円もの賠償金を受け取ることができました。
過失割合 | この裁判では、高次脳機能障害の症状が重篤であったため、後遺障害等級に争いはありませんでした。 争点となったのは、 必要な介護の程度 将来介護費の額 過失割合 などです。 特に、ご家族がこだわったのは過失割合でした。事故当時、被害者は小学生でしたので、我が子に大きな過失があることは受け入れ難かったのだと思います。このため、被害者に大きな過失がないと認定してもらうことが非常に重要でした。 しかも、重篤な後遺障害を残した事案では、過失割合が10%違うだけで、賠償額が1000万円単位で変わってしまうことがあります。賠償金は、被害者の将来の生活・介護の資金となるため、受け取る金額が大きく減ってしまうと、将来の生活・介護に影響してしまいます。 そのため、弁護士には、事故状況を正確に把握した上で、適確に主張をする力量が求められます。 この事案では、現場に行って状況を確認しました。また、刑事記録を入手した上で、工学鑑定の専門家に検討を依頼し、最終的には過失割合に関する意見書を提出しました。また、同種の事故態様に関する裁判例を数多く分析しました。 この様な対応をした結果、裁判所は被害者の過失割合を20%と判断してくれました。 |
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将来介護費 | 高次脳機能障害が主たる後遺障害の場合、将来介護費の認定額を高額にするためには、 ①高次脳機能障害の症状 ②対応の仕方 ③介護の大変さ ④具体的な介護の計画 などを詳しく主張・立証し、裁判所にしっかり把握してもらうことが重要です。 このため、この事案では、 ・近親者に、被害者の症状、介護の手順や介護の大変さを詳細にまとめた陳述書を作成してもらう。 ・高次脳機能障害に関する医学文献などを用いて、一般的な症状、対応の仕方、介護の大変さを明らかにする。 ・介護に当たっている母親が再就労する予定である旨を強く主張し、母親が再就労した後は職業介護人による介護を実施する計画であることを主張する。 ・近親者の尋問を実施し、直接、裁判所に介護の実態を訴える。 などの対応をとりました。 これらの努力が実った結果、裁判所は、 症状固定時~被害者が22歳(大学卒業年齢)まで 近親者介護 日額 8000円 被害者が23歳~平均余命まで 職業介護人+近親者 日額1万7000円 と認定してくれました。 近親者が介護を担うことを前提にした場合、一般的には、近親者が67歳になるまでの期間は近親者介護を前提に、それ以降は職業介護人による介護を実施することを前提に介護費が認定されることになります。 本件では、近親者から職業介護人に切り替わる時期をできる限り早くすべきことを主張しました。職業介護人による介護費用の方が高額なことから、賠償額をより高額にするためには、切り替えの時期を早める必要があるためです。 裁判所は、当方の主張を認め、被害者が22歳になる時点での切替を認めてくれました。 また、高次脳機能障害が2級と認定された事案の中では、かなり高額な将来介護費を認定してもらうことができました。 |
弁護士のコメント | 1.過失割合 過失割合について詳細な主張・立証を行いました。 また、証拠を収集したり、主張内容を検討する過程をご家族にも逐一報告し、ご家族に納得して頂いた上で、書面を提出するように心がけました。 結果として、過失割合について20%と認定してもらうことができましたし、十分な努力をした上で得られた結果と理解して頂いたので、納得して頂くことができました。 2.将来介護費 近親者が主に介護を担う事案であれば、近親者が67歳になるまでの期間は近親者介護、それ以降の期間は職業介護人による介護を前提として将来介護費を認定することが一般的です。 しかし、近親者の介護費よりも職業介護人の介護費の方が高額な将来介護費を認定してもらえるため、より高額な将来介護費を認定してもらうためには、より早い時期に職業介護人に切り替えると認めてもらう必要があります。 この点について主張するためには、被害者と家族の状況について詳細に主張し、早い時期に職業介護人に切り替える必要がある合理的な理由を主張する必要があります。 本件にて、裁判所は、被害者が22歳になる時点での切替を認めてくれました。この点も、成果の一つだと考えています。 |