解決事例

遷延性意識障害 Cases4

2026.09.16

後遺障害等級:1級
解決:令和8年5月13日和解
裁判所:和歌山地方裁判所

【事案の概要】
被害者は、自転車に乗って、信号機の設置されていない丁字交差点を右折しようとしました。そして、交差点内で、右方から進行してきた普通乗用自動車と衝突しました。
この事故によって、被害者は、外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷、気脳症などの重大な怪我を負い、遷延性意識障害の状態となってしまいました。
その後、遷延性意識障害から脱却しましたが、重度の高次脳機能障害、重度の四肢・体幹の運動機能障害などが残ったため、常に介護が必要な状態になってしまいました。

刑事手続での対応 1 起訴(公判請求)までの対応
本件のご依頼を頂いたのは、事故からあまり時間が経過していない時期で、警察の捜査が始まったばかりの段階でした。このため、だいち法律事務所は、刑事手続の段階から積極的に関与していくことにしました。
幼いお子さんが重度の障害を負われたため、ご家族は、憔悴していました。この状況を見て、ご家族の負担を軽減することが必要と判断し、弁護士が対応できる事項については、可能な限り対応を引き受けることを心がけました。
また、ご家族は、加害者に対しての処罰感情を持っていました。このため、検察官と繰り返し連絡を取るようにして、捜査状況と処理方針を確認しました。また、ご家族の処罰に関する関心が強いことを伝え、公判請求された場合は被害者参加制度の利用を希望する方針を伝えました。
捜査の結果、検察官は、加害者の過失が大きいこと、「被害者が重度の障害を負っている」という結果が重大であること、ご家族の処罰感情が強いことなどを考慮して、加害者を起訴(公判請求)してくれました。
2 刑事公判での対応
刑事公判では、被害者参加制度を利用しました。だいち法律事務所は、ご家族からの委託を受け、参加人代理人として、手続に関与しました。
被告人質問を行って、加害者に対し、事故に至った原因、事故状況に関する認識、被害者やご家族に対する気持ちなどを確認しました。また、被害者論告を行って、裁判所に対し、被害者参加人の量刑に関する主張を伝えました。
ご家族には、「心情に関する意見陳述」を行って頂きました。これを行うことによって、ご家族は、ご自身の心情を整理することができます。また、直接、裁判官・被告人に対して心情を伝えることができます。
これらの手続によって、加害者の落ち度(注意義務違反)が極めて大きいこと、事故後の加害者の対応が不誠実であること、ご家族が大きな悲しみを抱いていること、ご家族が強い処罰感情を持っていて当然であることなどを裁判所に伝えることができました。
後遺障害等級 この事案では、被害者は、当初は遷延性意識障害の状態でしたが、後に脱却することができました。
しかし、重度の高次脳機能障害、重度の四肢・体幹の運動機能障害という重篤な後遺障害が残ったため、自賠責保険から、別表第一第1級1号と認定されました。
裁判の争点 別表第一第1級1号という重篤な後遺障害等級が認定されたこと、損害項目が多岐にわたっていたこと、人身傷害保険金の支払額を「訴訟基準差額」によって計算されるようにする必要があることなどの事情から、示談交渉による解決は選択せず、訴訟によって解決を図ることになりました。
訴訟における争点は、多岐にわたりましたが、主な争点は、
・ 過失割合(事故態様)
・ 将来治療費と将来介護費の額
・ 後遺障害慰謝料の額
でした。
裁判所の認定 1 過失割合
被告(保険会社)は、丁字型交差点における事故であること、被害者がヘルメットを着用していなかったことなどを根拠として、被害者に半分に近い過失があると主張してきました。
これに対し、原告は、
①丁字形交差点であることを理由にして過失割合を修正するべきでないこと
②自動車が見通しの悪い交差点に入る際の徐行義務を果たしていなかったこと
③自動車側に著しい前方不注視があったこと
④住宅街における事故だったこと
⑤被害者が事故時8歳だったこと
などを主張し、被害者の過失はわずかであると主張しました。
裁判所は、原告の主張を考慮して、被害者の過失を少なく認定してくれました。
2 将来治療費・将来介護費の額
被害者は、遷延性意識障害を脱却することができましたが、重度の高次脳機能障害、重度の四肢・体幹の運動機能障害という重篤な後遺障害を残していました。
このため、
①将来治療費
経過観察などによる体調の管理、体調悪化による通院・入院などの必要があり、将来的にも治療費の支出が必要であること見込まれました。
②将来介護費
被害者には日常生活において独力で可能なことはほぼなく、日常生活のあらゆる場面で24時間態勢の介護が必要な状態になっていました。
家族だけで全ての介護を継続的に実施していくことは困難であり、訪問看護、訪問介護、訪問入浴などのサービスを継続的に利用しなければならないことは明らかでした。
これらのことを考慮し、こちらからは、
『治療費』  健康保険の適用前の治療費の総額
『介護費』  障害者総合支援法などの適用前の介護費の総額
+家族による介護の金銭評価額
を請求しました。
裁判所は、このような被害者の主張を最大限に考慮し、将来治療費・将来介護費を認定してくれました。
3 後遺障害慰謝料の額
本件は、若年の被害者が、遷延性意識障害を脱却したものの、重度の高次脳機能障害、重度の四肢・体幹の運動機能障害という重篤な後遺障害を残し、別表第一第1級1号に認定された事案でした。
とても痛ましい被害状況であること、加害者が事故後も交通違反を繰り返したことなどの事情を主張しました。
また、被害者の母親の尋問を実施し、裁判所に対し、
①被害者の後遺障害がきわめて重篤であること
②付添看護・介護などの対応がとても大変であること
③今後も介護などで大変な状況が続くことが確実であること
④被害者の将来に対する強い不安があること
などを訴えてもらいました。
これらの対応を評価してもらい、裁判所は、十分な額の後遺障害慰謝料を認めてくれました。
4 和解案を受け入れたこと
交通事故が発生してから長い期間が経過していたこと、認定される損害額が高額になると見込まれたことから、和解による解決ではなく、判決の言渡を希望することを考えていました。
ですが、家族と協議した結果、まずは和解案を確認して裁判所の考えを確認してみることになりました。そして、和解案を検討したところ、将来治療費・将来介護費・後遺障害慰謝料が相当な高水準で認められていました。また、過失割合についても人身傷害保険によってほぼ全額の補填が可能となる水準で認定されていました。
このため、最終的に、裁判所の和解案を受け入れることになりました。
人身傷害保険 本件では、過失割合が大きな争点になりました。
しかし、「被害者には過失がない」と認定されることを希望できる状況ではありませんでした。このため、人身傷害保険を請求することによって、過失相殺によって減額された金額をできる限り補填することが重要でした。
補填される金額をできる限り多くするためには、損害賠償請求訴訟を提起し、「訴訟基準差額」の基準が適用されるようにする必要があります。
また、両親が加入していた人身傷害保険には「倍額条項」があり、「別表第一第1級1号」に該当する場合には、支払限度額が2倍になることになっていました。
このため、本件では、支払限度額が2倍になり、人身傷害保険の支払によって、過失割合によって減額された金額のほぼ全額を補填してもらうことができました。
弁護士のコメント 1 高い水準の将来治療費・将来介護費
この事案の特徴は、高額な将来治療費・将来介護費が認められている点です。
高額な将来治療費・将来介護費を認定をしてもらうため、だいち法律事務所は、
・ ご家族から、事故後の経過、被害者の現状などを詳細に聴き取る
・ 現実に要している費用に関する資料の収集
・ 治療費・介護費の総額を前提として認定している裁判例の調査
などの準備をして、
・ 日常生活の全般について介護が必要であること
・ 24時間態勢の介護が必要であること
・ 介護の負担がとても重いこと
・ 介護サービスを利用する必要があること
などについて、詳細な主張立証を行いました。
これらの対応の結果、裁判所は、高い水準の将来治療費・将来介護費を認めてくれました。
ご家族は、大変な思いで介護を続けながら、裁判のために資料の収集や状況の説明に協力していただくなど、大きな努力を続けてこられました。被害者に対する愛情を持ち続け、努力を続けた結果、よい解決を勝ち取ることができたのだと思います。
2 ご家族の思い
事故後、ご家族は、付添看護や介護(介助・見守り・声かけ)を積極的に行うなど、被害者に対して献身的に対応してきました。長い期間にわたって重度の高次脳機能障害、四肢・体幹の運動機能障害を負った被害者への対応を続けることは、とても大変なことだったと思います。
だからこそ、ご家族は、被害者の将来の生活に備えて、できる限り多くの賠償金を得ておくことの重要性を認識していました。
ご依頼を頂いた後、ご家族には、
・ 被害者が被った損害額を算定するための根拠資料の収集
・ 被害者の症状などを詳細にまとめる作業
などをお願いしました。これらも大変な作業だったと思いますが、ご家族は、しっかり対応してくれました。
その上で、自賠責保険の請求手続(後遺障害等級認定)、訴訟の提起などの手続を進めていきました。
ご家族の思い、ご家族から得られた情報などを上手く汲み取って対応できたと思います。
3 損害賠償請求手続の選択
交通事故において損害賠償請求の問題を有利に解決するためには、適切な損害賠償請求手続を選択することが重要です。だいち法律事務所では、この点は妥協することなく、徹底して対応しています。
訴訟を選択すれば、解決までに時間がかかりますし、かかる手間も増えます。
しかし、被害者やご家族が、将来にわたって経済的な不安を持たずに生活できるようにするためには、安易に妥協して示談で終わらせず、裁判によって解決を図ることを選択することも必要だと思います。
本件では、高額な将来治療費・将来介護費を認定してもらうことができました。また、訴訟を選択した結果、人身傷害保険金の算定において訴訟基準差額を適用できるようになり、過失相殺による減額分がほぼ穴埋めできました。
4 最後に
だいち法律事務所は、ご依頼を頂いた当初から、ご家族のお気持ちに寄り添った対応を心がけ、最善を尽くして対応に当たりました。
ご家族に納得して頂ける結果を得ることができ、喜んで頂くことができました。こちらも十分な成果を得られたことを嬉しく思っています。
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