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少年手続②(家庭裁判所での手続)

2024.09.18
  • 少年手続②(家庭裁判所での手続)

20歳未満の「少年」が家庭裁判所に送致された場合、どのような手続がなされるのでしょうか。また、少年事件において、交通事故の被害者は、どのような対応が可能なのでしょうか。

第1.家庭裁判所への送致
14歳以上の少年が交通事故の加害者になった場合、危険運転致死傷罪もしくは過失運転致死傷罪に問われることになります。
この場合、まず、警察・検察による捜査が行われます。そして、捜査が終了した後、検察官は、「少年をどのような処分にするのがよいか」についての意見を付けて、全ての事件を家庭裁判所に送致します。
捜査については、コラム【刑事手続②(捜査段階の対応)】にて詳しく説明していますので、ご参照ください。

第2.家庭裁判所での手続
1.調査官による調査
家庭裁判所では、まず、調査官による調査が行われます。
調査官は、少年をどのように処分すべきかを検討するため、以下のような事項を調査します。
・ 事件に至った経緯
・ 少年の生活環境
・ 少年と保護者との関係
・ 少年の交友関係
全ての調査が終了すれば、調査官は、調査結果をまとめ、裁判官に提出します。

2.審判不開始
裁判官は、調査官から受け取った調査結果を検討し、まず、「審判を開始するか否か」を判断します。
裁判官が「審判を開始しない」という決定をした場合(審判不開始)、それによって家庭裁判所での手続は終了します。
3.審判開始
裁判官が「審判を開始する」という決定をした場合、審判が開始されます。この審判は、少年に科す処分を決めるための手続のことです。
この手続の中で、裁判官は、少年やその保護者から、事件が発生した原因、反省の状況、改善の有無などを確認した後、少年に科す処分を決定します。
審判において、裁判官が選択する処分は、以下のとおりです。
① 不処分
少年が改善・更生するために保護処分を科す必要はないと判断された場合、保護処分に付さない旨の決定(不処分)がなされます。
② 保護観察
保護司などによる監督がなされれば少年が改善・更生できると認められれば、保護観察処分が選択されます。
保護観察官や保護司による補導援護が実施され、少年の社会復帰を支援することになります。

③ 児童自立支援施設・児童養護施設送致
少年が改善・更生するために施設における生活指導が必要と認められる場合は、児童自立支援施設(非行を犯した児童等の支援施設)、児童養護施設(保護者のない児童、虐待されている児童等の保護施設)に入所させ、社会復帰を促します。

④ 少年院送致
少年を専門施設に収容し、矯正教育を与えることによって社会生活に適応させる必要があると認められた場合は、少年院に送致します。
少年院には、第1種から第3種までの種別があり、犯罪傾向が進んでいるか、心身に著しい障害があるかなどを考慮して、収容する種別が異なります。
少年院に収容される標準的な期間は、2年以内となっています。

⑤ 検察官送致(逆送)
保護処分ではなく、懲役・禁錮・罰金などの刑事罰を科すべきと判断した場合、裁判官は、事件を検察官に送致します。この決定のことを「逆送」とよんでいます。
検察官に逆送された事件は、検察官によって起訴するか不起訴とするかの判断がなされます。起訴された場合には、少年であっても、成人と同様の手続で審理されます。その結果、刑事裁判で有罪と判断されれば、刑事罰が科されることになります。

第3.被害者が利用できる制度
少年犯罪によって被害を受けた方は、家庭裁判所に申し出ることによって、以下の制度を利用できます。勿論、少年が加害者となった交通事故の被害者やご遺族は、これらの制度を利用できます。
1.少年事件記録の閲覧・謄写
審判開始の決定がなされた事件では、被害者やご遺族などの申出があれば、閲覧・謄写を求める理由が正当でない場合などを除いて、事件記録を閲覧したり、謄写を求めることができます。
なお、「謄写」とは、記録のコピーを入手することです。

2.心情や意見の陳述
被害者やご遺族などが申出れば、心情や意見を述べる機会を設けてもらえます。
心情や意見を述べる方法には、
・ 審判において裁判官に対して述べる方法
・ 審判以外の場において裁判官や調査官に対して述べる方法
があります。
どの方法がよいのかは、事案の内容、被害者やご遺族の置かれている状況などを考慮して判断することになります。

3.審判の傍聴
少年の故意の犯罪行為(殺人、傷害致死、傷害など)や交通事件(過失運転致死傷)などによって被害を受けた方は、事前に申し出れば、審判を傍聴することができます。
また、被害者が亡くなったり、生命に重大な危険のある怪我を負った場合には、配偶者や親族、遺族などが、事前に申出れば、審判を傍聴することができます。
なお、審判の傍聴が認められるためには、「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当」と認められることが必要です。また、少年が事件当時12歳に満たなかった場合には、傍聴が認められません。

4.審判状況の説明
被害者やご遺族などの方々が申出れば、審判期日の日時・場所、審判経過、少年や保護者による陳述の要旨、処分結果など、審判期日で行われた手続などについて説明を受けることができます。
この申入れについても、「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当」と認められることが必要です。
5.審判結果等の通知
被害者やご遺族などの方々が申出れば、
・ 決定の年月日
・ 決定の主文
・ 決定の理由の要旨
などの通知を受けることができます。

第4.刑事裁判手続との比較
刑事裁判手続において被害者が利用可能な制度として、
・ 被害者参加手続
・ 傍聴
・ 心情等に関する意見陳述
・ 公判中の記録の閲覧・コピーの入手
などがあります。
詳しくは、コラム【刑事手続⑤(被害者参加制度)】【刑事手続⑥(その他の制度)】にて詳しく説明していますので、ご参照ください。
家庭裁判所の審判手続においても、ほぼ同じ対応が可能であるとご理解ください。
なお、家庭裁判所の審判の結果、検察官送致(逆送)の決定がなされ、検察官が少年を正式起訴(公判請求)した場合には、刑事裁判手続にて被害者参加制度を利用することも可能です。

第5.まとめ
少事事件においても、家庭裁判所での手続において、被害者やご遺族などが利用できる制度があります。どの手続を利用すべきか、どう利用したら効果的なのかは、実績と経験が豊富な弁護士にご相談ください。

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