1.偶然の事故 多くの種類の保険約款で保険事故を「偶然の事故」としつつ、「故意」の事故は免責となると規定しています。 「偶然の事故」の定義づけによっては故意と変わらなくなるという問題(判例で「偶然性」は商法629条の定義同様「契約時の保険事故の不確定性」のみを意味し「保険事故の偶発性(非故意)」まで含まないとして解決済み)のほかに、「偶然の事故」についてどのような間接事実を主張立証するべきか問題となります。 なお、最近は、外来性が問題となることが多いようです(既病の発症により死亡したから外来の要件を充足しないという争い方)。
2.各保険の故意の立証責任の所在 ①災害割増特約 請求者に偶発事故の立証責任(最二H13.4.20) ②普通傷害保険 請求者に偶発事故の立証責任(最二H13.4.20) 保険法施行で抗弁説へ変更かそうでないか(判タ1266号105頁)議論あり。 ③店舗総合保険の火災 保険者に故意の立証責任(最二H16.12.13) ④テナント保険の火災 保険者に故意の立証責任(最一H18.9.14) ⑤自動車保険の水没、いたずらキズ 保険者に故意の立証責任(最一H18.6.1、最三H18.6.6) ⑥自動車保険の盗難 請求者は「被保険者以外のものが被保険者の占有にかかる被保険自動車を所在場所から持ち去ったこと」(盗難の外形的事実)について主張立証責任を追うとした上で、保険者に故意の立証責任(最三H19.4.17)があるとする。 そして、最一H19.4.17は、上記事実を分解してⅠ:被保険者の占有にかかる被保険自動車を請求者の主張する所在場所に置いたこと、Ⅱ:被保険者以外のものをその場所から持ち去ったことについて請求者が立証責任を負う事実(主要事実か)となるとした上で、上記立証がされていないと判示した。 なお、①は死亡保険金のうちの割増特約による増額分の保険金に関する問題であることから請求者側に立証責任を負わせたものです。②は傷害保険があえて保険事故に「偶然」という語句を付加していることを重視したものと思われますが、判例変更の可能性が高いようです。 |