解決事例

死亡事故 Cases12

2024.03.04

解決:令和6年1月31日和解
裁判所:大阪地方裁判所

【事案の概要】
被害者は、自動車に乗って交差点に設置された横断歩道上を横断していました。そこに、交差道路を進行して交差点に進入しようとした貨物自動車が衝突しました。
この事故によって、被害者は、頭部と全身に強い衝撃を受け、外傷性くも膜下出血、胸部・腰部・下肢の多発骨折などの怪我を負った結果、事故から約1年後に死亡しました。

保険会社との交渉 刑事記録を入手たところ、事故現場付近に設置されていた防犯カメラの映像が証拠化されていることが分かりました。
この防犯カメラに関する証拠を検討したところ、被害者の対面信号が映っており、被害者が赤信号で交差点を横断しようとしていたことが分かりました。これに対し、相手の貨物自動車の対面信号は映っていませんでした。貨物自動車の対面信号の表示は、信号周期、周囲の自動車の進行状況などを検討して推測するしかありませんでした。
この事故の信号の組合せは、以下のようなパーターンが考えられました。

保険会社は、当初から、相手の貨物自動車の対面信号は「青」だったと主張しており、ご遺族が受け取った自賠責保険金のほかには「支払いすべき金額はない」という対応でした。
この保険会社の対応を受け入れることができなかったため、主に過失割合を争点として、提訴することになりました。
提訴前に自賠責保険金を請求した事情 1 自賠責保険金の請求について
死亡事故では、死亡という事実が明確であるため、早い段階で自賠責保険金の請求が可能になります。
多くの法律事務所では、死亡事故であれば、まず自賠責保険金を請求するという対応をしていると思います。
これに対し、だいち法律事務所では、死亡事故における自賠責保険金の請求について、安易に請求手続を行わないようにしています。自賠責保険金の請求が可能であることと、すぐに自賠責保険金を請求すべきか否かは、全く別の問題であり、案件ごとの事情を考慮すべきだからです。この点について、コラム「死亡事故①(自賠責保険の請求)」で詳しく説明していますので、ご覧ください。

2 本件での対応
本件では、まず、自賠責保険金の請求手続を行い、自賠責保険金を受け取ってから提訴しました。
通常とは異なる対応を選択したのは、以下の事情があったためです。最悪の場合、訴訟における認定額が自賠責保険金の支払額を下回る可能性があったため、事前に自賠責保険金を確保しておく必要があったのです。
① 過失割合が大きくなるおそれがあった
この事故では、防犯カメラの映像によって、被害者の対面信号の色は確定していました。しかし、相手の貨物自動車の対面信号の色は確定しておらず、場合によっては被害者の過失割合が大きくなる可能性がありました。
被害者の過失割合が大きいと認定された場合、十分な賠償金を確保できなくなる可能性がありました。
② 被害者が高齢だった
被害者は、死亡時に90歳近い年齢でした。
この年齢のため、認定される逸失利益の額が少なくなると見込まれました。

損害賠償請求の手続 1 裁判の争点
この裁判における主な争点は、以下のとおりでした。
① 生活費控除率
被害者は年金の受給者でした。
この年金についての生活費控除率が争いになりました。
② 慰謝料
死亡慰謝料と遺族固有の慰謝料の金額が争点になりました。
③ 事故態様(過失割合)
既に述べたように、事故現場付近に設置されていた防犯カメラの映像に関する証拠を検討したところ、被害者の対面信号が映っており、被害者が赤信号で交差点を横断しようとしていたことが分かりました。これに対し、相手の貨物自動車の対面信号は映っていませんでした。貨物自動車の対面信号の表示は、信号周期、周囲の自動車の進行状況などを検討して推測するしかありませんでした。
この事故の信号の組合せは、以下のようなパーターンが考えられました。

保険会社は、当初から、相手の貨物自動車の対面信号は「青」だったと主張していました。これに対し、こちらは、相手の貨物自動車の対面信号は「赤」だったと主張しました。
このように相手の貨物自動車の「対面信号の色」が主要な争点となりました。
2 裁判所の和解案
① 生活費控除率
裁判所は、年金の生活費控除率について、50%とする和解案を提示しました。
② 慰謝料
裁判所は、遺族固有の慰謝料を含め2800万円の慰謝料を提示してくれました。
③ 過失割合
保険会社は、貨物自動車の対面信号の色についての主張の根拠とするため、専門家の意見書を提出してきました。
こちらが意見書を詳細に検討した結果、内容に齟齬があることが分かりました。その齟齬を指摘し、保険会社の主張に不合理な点があることを主張するなどしました。
その結果、裁判所は、和解案において、相手の貨物自動車の対面信号の色が「黄」であったことを前提として、被害者の過失が30%との評価をしてくれました。
3 和解案に対する対応
当事者双方が裁判所の和解案を受け入れたため、和解が成立しました。
弁護士のコメント 1 解決の内容
提訴前の保険会社は、相手の貨物自動車の対面信号は「青」と主張しており、ご遺族が受け取った自賠責保険金のほかには「支払いすべき金額はない」という対応でした。
こちらは、この保険会社の対応を承服できなかったため、損害賠償請求訴訟を提起しました。
過失割合(事故態様)が主要な争点になりましたが、結果として、裁判所は、和解案において、相手の貨物自動車の対面信号の色が「黄」であったことを前提として、被害者の過失が30%との評価をしてくれました。
この結果、約1000万円もの追加支払いを得ることができました。
2 ご遺族の思い
被害者に大きな過失割合が認められることは、「被害者が悪かった」と評価されることに繋がります。このため、ご遺族には承服しがたい結論になってしまいます。
本件において、保険会社は、被害者の過失割合の方が大きいと主張していました。
これに対し、本件事故の発生状況や保険会社の主張を検討し、徹底的に反論しました。この結果、裁判所に、被害者の過失割合は30%であることを前提とした和解案を出してもらうことができました。
ご遺族には、この結果を得られたことを喜んでいただくことができました。
3 最後に
だいち法律事務所は、ご依頼を頂いた当初から、ご遺族のお気持ちに寄り添った対応を心がけ、最善を尽くして対応に当たりました。
ご遺族に納得して頂ける結果を得ることができ、喜んで頂くことができました。こちらも十分な成果を得られたことを嬉しく思っています。
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